死す 世界一のキモオタ
キモオタ。
そう呼ばれた回数は、十回目ぐらいで数えることをやめた。よく勘違いされやすいのだが、俺に対しては蔑称ではなく、むしろ親しみを込めて呼ばれていたと思う。だから俺も別に不快なわけではなかった。
そして俺はそのニックネームに恥じないよう、キモオタで在り続けた。中学、高校、大学、その先永遠に、ずっと。それこそ死ぬまでキモいオタクであり続けた。
同時に、俺はオタクだけではないことにも拘った。もちろんアニメも見た、漫画も読んだ、即売会にも行った。しかし勉強も頑張ったし、ゲームもそこそこやったし、部活だって万年ベンチだったが退部することはなかった。おそらく俺ほど活動的で社交的なオタクはなかなかいない。俺がただのキモオタではなかったことは、おそらくここに所以している。
そんな俺の死に際は、生き様とは真逆だった。手に持っていたアニメグッズの袋を投げ出して線路へ飛び出し、落ちてしまった小学生を引き上げた。上で受け取ったその子の母親は大層な感謝を俺にしていた。だがその数秒後、当然といえば当然なのだが、俺は電車に轢かれて死んだ。
電車に轢かれたのだからもちろん痛かった。だが少しだけいい気分だったのも隠せない。死ぬ前に人を助ける。まるでアニメの中のヒーロー役だ。華々しい死に様ではないか。
そんなかっこいい役回りが自分に回ってくるなんて、オタクは人の為ならず、という諺は馬鹿にできない。
・・・・少し違うか。
何はともあれ、俺は走馬灯と呼ぶにはどうでも良すぎることを考えながら、俺は死んだのだ。
ーーーーいや、死んだはずだった。
どうもふぉーしぃです。
ロビー(Lobi)というスマホアプリのあるグループで宣言したとおり、書いてみました。バリバリのなろう王道作品……みたいなものをイメージして筆をとりました。
そんなに重くするつもりも、軽くするつもりもありません。皆様がすんなり読めて楽しめる作品を目指しています。