どっちを選ぶの?
書けば書くほど自分にはね返って苦しい作業でした。
まるで、人を刺し殺そうと出刃包丁を突きつけたらいきなり出刃包丁をもぎとられ逆にメッタ突きにされたような気分です。
歪んだ自己批判文と思っていただけたら。
「お兄ちゃん、景国っていう国があるよね、お兄ちゃんの大嫌いな国」
「うん」
「景国には昔、貴族たちがいたよね、ぜんぜん働かないひとたち」
「うむ」
「生活のために働くのは卑しいことだことだ、働かないことは貴族の特権だといって、いちにちじゅう寝てたんだってね」
「・・・うん」
「で、生活に困ると、庶民たちから食べ物や財産を奪い取ってたって」
「そーだ!」
「でもさ、貴族のなかにも、悪いことはしたくない、どろぼうはしないって言うひともいたそうよ」
「?・・・」
「どろぼうはしない、でも働きたくない、俺は貴族だ。悪事も強盗もしないって言って、家で寝たまま餓死したひともいたんだって」
「・・・」
「そんなひとは近隣のひとたちから言われたそうよ。これはこれで見事なことだ貴族としての自尊心を守り抜いたのだからって」
「!!!」
「お兄ちゃんの生活はそこそこ喰ってる貧乏貴族だよね。餓死はしない。でも働かない。親がかりっていうんだってね。お兄ちゃん、ちゃんと聞いてよ。もう景国に貴族はいないのよ」
「・・・・・・」
「もう背中向けて寝ないでよ。ふて腐れないでよ」
「う・・・む」
「大嫌いな景国の貴族とおなじじゃない。いつまでこんなことしてるの。学校はやめ、ちょっと働いてはすぐに辞め。部屋に引きこもり。なにかやってると思ったら、パソコンでしょーもないことばっかり。景国の悪口ばっかり書いて何になるの?」
「いや・・・これも社会のためなんだ。連中のせいでわれわれは・・・」
「そんなもの普通のひとたちから、悪質なジョークとして消費されるだけです!ただの冗談のタネになるだけ。もう。半年ぐらいは外で働きなよ」
「どこで働いてもみじめになるだけだ・・・」
「そんなの当り前よ。どんな仕事だって始めたばっかりの頃はみじめなことになるわよ。始めてやることだらけだから失敗もするし叱られる。だれだってみんなそうよ。でも一人前になればそんなことって無いって」
「嘘だ。そんなこと嘘だ!」
「あのね、私の言う一人前って、ひととうりの仕事ができるってだけじゃないの。社会人として一人前になること!人間として一人前になること!っていうことなの。本当に真剣に仕事をしていれば、社会性も人間性も必要だってことに気づくと思うんだけどなあ」
「・・・・・・」
「お兄ちゃんは、いつもいつも、仕事は半人前、社会性も半人前、人間性も半人前のままで辞めてるじゃないの!」
「うぐぐぐぐぐぐ・・・」
「いつまでも今の生活が続くわけがない!永遠に貧乏貴族でいられるわけがない!」
「 」
「みじめに働いて生きることを選ぶか。名誉ある餓死を選ぶか。どっちを選ぶの?」
「 」
「お父さんもお母さんも永遠に生きるわけがない。私だってお嫁に行きたいから、お兄ちゃんの面倒なんて見ないから。私は今日かぎりでこの家を出るわ」
「 」
なんとか言ってよ!この馬鹿!この馬鹿!
どうして人間って自分で嫌いだって思う人の真似ができるんでしょうか。
謎の生き物ですね。