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月の少女   作者: 高見 リョウ
ミスコンのドラマ
23/34

ミスコンで勝つ方法

 確かに三嶋香織は、駿太郎に対して「あなたたちに私の夢をかけさせてください」と言った。その声には強い決意が込められていたことを、駿太郎は気づいていた。駿太郎はその時その思いを踏みにじるわけにはいかないと感じ、桃子と彰彦に協力をすぐに要請した。

 桃子も駿太郎のように、香織の夢を一緒にかなえる決心を強くしていた。誰かの夢を一緒にかけるという経験は、今後一切できないかもしれないとも感じていた。桃子はすぐにファッション雑誌などを読み、今、流行している服などを調べだした。


 駿太郎たちが通う大学のミスコンは、ただ可愛いから、きれいだからという理由だけで、勝てるものではないことを、毎年生で見ていた駿太郎は知っていた。むしろ見た目というものは、おまけとしてしか扱われていないことも駿太郎は知っていた。

 ミスコンで勝つために必要なもの、それはミスコンの配点に表れている。日本語でのスピーチ力、英語でのスピーチ力、それぞれ25点であり、この時点ですでに点満75点の3分の2の点が入ることになっている。見た目は、全体の3分の1程度なのである。香織に話す力があるかどうかは分からないが、とにかく英語などを鍛えなくてはならず、またスピーチの内容においては、時事力も鍛える必要があった。去年の優勝者には、メイクのアシスタントの他、スピーチ内容を考える人までついていたと、駿太郎はうわさで聴いている。


 ミスコンがあるのは、学園祭の前夜祭なので、11月1日の金曜日である。最初の作戦会議は、10月9日の水曜日に大学の自習室で行われた。もう本番まで一カ月を切っているので、ほかの出場者チームと遅れを取っているのは明白だ。会議には駿太郎と桃子、彰彦それから光も集まった。もちろん香織も参加している。

 また桃子の人脈で、同じ心理学科の後輩でメイクが得意な、秋原恵美がメイクアシスタントとして、チームに加わってくれることになった。彼女は親もメイクアップアーチストということもあり、メイクの腕前は天下一品らしい。

「ファッションとかはどうにかなりそうだが、問題はスピーチだよな…」

駿太郎たちはそこで悩んでいた。

「私…、何を話せばいいのか分からない」

「わからない…」

不安そうにつぶやく香織の言葉を、心配そうに光は反復する。


 駿太郎は光をこの場へは連れてきたくなかったが、朝一人で出かけたときに、光は後ろからついてきていた。

「かおり…」

と光はつぶやいたので、やりたいようにやらせることにした。しかし、光の精神の状態は駿太郎にとって、心配なものである。


 トークをどうするかの議論は滞っていたが、駿太郎が思い切った提案をしてみることにした。

「去年優勝した人は、アメリカなどが推し進める国際平和維持活動への疑問をぶつけた。ここ最近、国際社会に目を向けてスピーチをしている人が多いけど、いっそのこと小さくして、この大学をどのようにしたいか、とかでいいんじゃない。考えやすいし」

その提案を聴いた、桃子や彰彦はうなずいた。

「そうだよな…。みんなと違ったら新鮮でいいかもしれない」

彰彦は納得顔でそう言った。

「それだったらいけるかも…」

香織も少し笑顔になって答えていた。

 結局、次に集まるときまでに、大学をどうしたいか、一人一つずつ考えてくることで話はまとまった。

 みんなが帰ろうとしていると、自習室の入り口のドアが開き、一人の男性がやってきた。

「皆さん先日はありがとう。そして、娘の友達になってくれてありがとう」

「三嶋さん‼」

やってきたのは、三嶋香織に父、三嶋一行であった。踏切に飛び込んだ直後は、少し顔色が悪かった様子であったが、今はすっかり血色のいい顔になっていた。

「元気そうですね」

「げんきそう!」

「皆さんのおかげで…」

桃子と光の言葉に、三嶋さんは笑顔で答えた。

「職も見つかりました。娘も自分を変えようとしているみたいだし…、自分も頑張らないと」

「本当ですか‼おめでとうございます‼」

三嶋さんの喜ばしい言葉に、彰彦はテンションを最高潮にあげて答えた。


 駿太郎がみんなと別れ、光と帰ろうとしている時、戸賀由紀子准教授にばったり会ってしまった。戸賀は少し忙しそうだったが、駿太郎たちの姿を認めると、

「あらこんにちは!」

と笑顔で言うのであった。

「こんにちは!」

光は笑顔で戸賀に挨拶をしていた。

「光ちゃんも元気そうでよかったわ!」

戸賀はそういうと、今度は駿太郎に近づき、

「ちょっと来て」

と駿太郎のことを呼んだ。

駿太郎は「はい…」といい、戸賀の方へ向かうと、戸賀は真剣な表情で駿太郎に話した。

「カウンセラーが一番重要なことは、自分の今の状態をしっかりと知っておくこと」

戸賀はそう言いながら、チラチラと光の方に視線を送っていた。

「自己一致ですか」

「さすがね」

戸賀は駿太郎の発言に笑顔で、反応するとその場から離れていった。


 駿太郎と光が帰るときは必ず、桃子のアパートの右横にある公園の左横を通ることになっている。駿太郎は、公園で遊ぶ子供を見ながら、そこを通るのが大好きであった。

「かわいいね」

「かわいい!」

駿太郎の声に、光は笑顔で反復した。

最近はこの辺で、お互い手をつなぐことが多くなっていた。

光の手は駿太郎にとって、とっても暖かいものであり、その反面小さな手だった。いつも守りたくなるような手であった。

 いつものように子どもを眺めていたが、今日はやけに小さな子どもに目が言っていた。

「そういえば、昼間も小さな子どもたちはいるな」

「ちいさなこたちはいるな!」

光の反復にうなずいた駿太郎は、大きなことをひらめいた。

「そうか‼待機児童だ‼」


 ミスコンで勝つのは才色兼備?

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