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月の少女   作者: 高見 リョウ
デートDV
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高井駿太郎の孤独

 部屋を出るとまた一人で歩きだす。いつも一人…いつも一人。高井駿太郎は、自分のことをいつも一人だと思っていた。大学も二年が終了し、成績は周りの人たちより飛び抜けてよかった。ただ授業に毎回出ていれば、自ずと成績は良くなる。大学の授業は、中学や高校で受けてきた授業よりも簡単で、楽勝で、気づけば駿太郎は周りの人たちを見下していた。

 周りの人たちは駿太郎を頼った。単位が取れそうにない時や何かしら悩みがある時など、駿太郎は皆の頼られ役で、リーダーで。しかし駿太郎は、「100人に頼られても、俺の心は一人だ」と会ったことのない人たちが集まる掲示板に書き込んでいた。「自分が傷ついたときに手を差し伸べてる人はいない」駿太郎は、自分が一人だという理由をそう説明していた。

 駿太郎は、自分に特別な友達がいない理由を薄々分かっていた。駿太郎は、たまに衆議院選挙の時などになると、Facebookに「今日は投票に行こう」と政治的なことを書き込んで投稿する。しかし「いいね」が一件たりともこないのだ。いつもたわいのないことを書き込んで投稿するとたくさんの「いいね」が来るのにもかかわらず。駿太郎は、「今日は遊園地に行きました」などの投稿は、どうでもいいものだと考えていた。日本にとって大事なことではないからだ。それでも駿太郎は、Facebookにどうでもいいことを書き込むのは、”つながり”を感じたかったからだ。しかし、日本の政治や問題点について書き込んだ途端に「いいね」が来なくなる。「いいね」が来ないのは、みんながそのことについて知らない、又は無関心ということあるが、駿太郎は自分たちに関わる問題にみんなが無関心という現状に腹を立てていた。そして、それに付け加えて授業に出ず、自分より成績が悪い周りの人たちを見下した。

 周りの人たちを見下した駿太郎は、自分から周りの人たちに関わることをしなくなった。するのは、頼られた時だけだった。頼られた時は、愛想よく笑顔を振りまき、みんなに接した。見下してはいても、みんなが離れるのは嫌だった。


 三月に咲いた桜は、四月の今はもう散っている。ここ数年の福岡市は、桜の開花が早くなったものだ。これも温暖化の影響なのであろうか。いや、地球は温暖化というより寒冷化しているという専門家もいる。むしろ寒冷化の方が嫌なんじゃないか。

 大学の門をくぐると、サークルの勧誘が新入生に対して行われている。ところで、サークルの飲み会は定番であるが、現代のサークルの飲み会は、大学側に通達しなければならないものもあるらしい。理由は、アルハラ(アルコールハラスメント)の防止らしい。一部の世間知らずな奴らのおかげで面倒なことになったな。そんな事を考えながら駿太郎は、授業が行われる教室に入った。

 授業は、心理学科の必修ということもあり、学科の同学年のほとんどが顔を揃えていた。さすがに今日は馴染みの席も空いてないので、空いてる席を探していると、

「高井くん!」

突然後ろから、女性の高い声で話しかけられた。

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