体育祭と青春ポイント
「邪魔だ、失せろ」
「あーくんがペア組んでくれるって言うまで消えな~い♡」
「・・・・・・・」
目の前でしゃがみこみ耳のようなサイドのツインテールをぴょこぴょこさせた彼女、十和、通称トーワは俺、寺崎Rのことをじーっと期待の眼差しで見つめていた。
あーーウザイ。
まじウザイ。
ウザイんですけど?
ウザすぎますって。
一人で声に出すこともない会話を心のなかで進め、結局結論は出ないまま今に至る。
元はといえば、くだらない行事なんかが悪いのだ。
黒板に書かれた忌々しい文字。
”体育祭”
この高校の体育祭は6月にある。そう、今月。2週間後。
最も俺はさらさら参加するつもりなどなかったのだが、何を思ったのかしつこく俺にかまってくる彼女、トーワがクラス対抗の競技、二人三脚のペアを自分と組めと言い出し。
俺はしつこくも断り続けたがそんなことで折れるような彼女でもなく。
おやつをねだる子犬のように俺をじーっと見つめていた。
「お前さ、うぜぇってよく言われるだろ。」
「にゃににゃにー?強いて言うなら愉快って言われるんだよーーー♫にゃはっ(*´∀`*)(*´∀`*)」
「・・・・・・・はあ・・・・。お願いだから消えてくれ。俺は体育祭なんて愚かで忌々しい人間どもが一気に集まる物に出る気はないし、お前とペアを組む気もない。わかったら消えろ。消えろ、消えろ、消えろ。」
「や・だ・にゃ♫にゃはははーヽ(・∀・)ノ」
ああ、ダメだ。死ぬ。
このテンションに犯され早2ヶ月半。
もう無理だ、殺す気か。こいつといることで俺のHPバーは大幅に減少していく。
っていうかこいつに殺されるのだけはこんな俺でもやだ。
こいつの雰囲気で死ぬとかマジ不リア充すぎるだろ。そうさ、リア充なんて爆死しろ。
「あーくんは周りを遠ざけてるけど、普通に接しればみーんな仲良くできるよーー♫みんないい子だもーん」
「うるさい、この全てにおいてリア充女め。俺は人間が嫌いで忌々しくて皆死ねばいいと思っている。それだけだ。他になにがある。はっ!笑わせるなよ小童」
「あーくんったら照れ屋?」
「ああああああああ!なんでお前はそう全てプラス思考なんだよ!!全てにおいてマイナスにしか考えられない俺がゴミ以下の存在みたいじゃねーか!!!」
「だいじょーぶー♫あーくんはゴミ以下なんかじゃないよ!ゴミをあさる野良猫だから!!」
「よくねぇよ!!」
疲れた。
やっぱりこいつと接しるのには普段の倍の体力ゲージが必要だ。
マジ関わりたくない。
ってか俺から関わった覚えはない。
消えてくれ。
目の前に現れないでくれ、頼む。
目がお前の眩しさで火傷してしまう。
そして自分を哀れむ。
「と・に・か・く!あーくん!このトーワとペア組んでもらうからね!報告しにいくんだよーーー♫にゃっほーーい!!」
「あ!っちょいおい待てっつーの!!・・・・俺はでねーからなっ!!!」
言うのも遅く、彼女は鼻歌を歌いながら教師の元へとスキップしていった。
この状況で体育祭休んだら俺はトイレのすみのホコリ以下になる。
彼女が泣き、クラスからもっと孤立し、将来永遠にリア充なるものを恨むことになる。
自分でいうのもなんだがそれなりに頭のいい俺でも就職しても友達ゼロ。宴会毎回喋る人いないんで行きません。同窓会なんていけるとおもって?
なんてことになるのは絶対にいやだ!嫌すぎる!
・・・・・・・・・・。
結論は、行くしかない。
「・・・先生、調子悪いので早退します・・・」
「え?あ、はい、さようなら」
先生にお先真っ暗な顔で早退すると告げ、教室をでる。
ああ、なんて真っ暗なんだ。
真っ暗すぎる。
青春ゲージはもうすぐゼロになると思う・・・・。