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確率の交差点  作者: 旗旗
第一章 はじまり
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第一話 

始めまして。

普段はTRPG動画などを作っています、旗旗です。


この様な形で物語を作ったことは無いので、色々とおかしな所があるかもしれませんが、読んでくれる方の暇つぶし程度にでもなれれば幸いです。


いつまでかかるか分かりませんが、一応完結させるつもりなので、応援してくださるとうれしいです。

 それは、まさに"世界の終わり"と言える景色だった。


 日が沈みだした赤い空には、無数のひび割れのような黒い線が。その夕日に照らされた、彼等が笑いながら歩いていた通学路には、鉄の匂いのする赤い液体が。通学路の先の住宅街からは、何かが爆発するような音や人の悲鳴、ディストーションの掛かった獣の叫び声のような何か。


 そして、道としての機能を殆ど失った道の隅に、かつてその道を笑顔とともに駆け抜けた少年が、その隣に立っていた少女を片手で抱えて、蹲っていた

 もう片方の手に握っていた、少年の相棒だった長剣は折れ、少年自身も全身に深い傷を負っていた。


 その少年は泣いていた。痛みではなく、己の弱さを呪って泣いていた。


「ごめん、風香……守るって、俺が守るって言ったのに……約束したのに……!」


 血を流し、虚ろな目で自身を見ている少女に、少年はずっと謝り続けていた。何度も何度も、無駄だと知りつつも少女の傷を癒そうと、必死に光を集めていた。

 しかし、集められた光も、少年が願うほどの力は発せず、注意して見れば流れる血の量が少なくなったと思える程度の効果しかもたらさなかった。


「クソッ!なんで……なんでこんな……止まれよ!止まれって!」


「……もういいよ、ユウ。もう、私は助からないから……」


 靄がかかったようなハッキリとしない視界で、最愛の人を見つめながら、少女は諦めの言葉を発した。


「ホント……どうしてこうなっちゃったんだろうね。 私達、普通に学生してただけなのに……さ」


 少女はとても物悲しそうに、今までの楽しかった記憶を思い出しながら、そう小さくつぶやいて事切れた。


「…………ふう……か……」


 少年は最後にもう一度だけ、恋人"だった"少女の亡骸を抱きしめると、その亡骸の手から零れ落ちた、やはり半ばで折れている短剣を拾い上げて、静かに立ち上がった。


「…………………」


 最後に小さく何かをつぶやいて、二本の折れた剣を手に、一番大切な物を失った少年はいまだに戦闘の音が続いている住宅街へと駆け出して行った。








◆ 第一話 守れなかった約束と始まりの朝








 今日、4月2日。この日本では、ずっと昔から大抵の学校で入学式が行われる日だ。 つまり、今年から高校生になる僕にとっては、新たな日々の始まりにもなる。


「それでも僕は寝てたいんだけどなぁ……」


 携帯端末のアラームを止めて、ボヤキながら布団から這い出す。 カーテンを開けると空には薄く雲が掛かっていて、青空こそ見えないものの、それなりに過ごしやすそうな空模様だった。

 寝巻きから普段着に着替える。 昔は大抵の学校で制服の着用が校則で決まっていたらしいけど、今では何処の学校も基本的には私服での登校が常識になっている。

 何でかは僕もよくわからないけど、きっと時代の流れか何かなんだろう。 まあ、それ以上に普通の生地を使った制服なんかじゃすぐに使い物にならなくなるって理由もあるんだろうけど。


「おはよう、裕也(ゆうや)


 そんなどうでもいい事を考えながら着替えを済ませて居間におりると、いつも通り爺ちゃんが新聞を読んでいて、婆ちゃんが三人分の朝食と僕の弁当を作ってくれていた。


「うん、おはよう」


 挨拶を返し、爺ちゃんの向かい側に座る。 なんて事は無い、今までの毎日と同じ行為。 でも、それも今日でしばらく終わりになることを考えると、ちょっと寂しくもある。 どうも爺ちゃんと婆ちゃんも同じようなことを考えているらしく、いつもよりちょっとソワソワしている感じだ。


「二人とも、僕がいなくても大丈夫?」


 暫くの間、爺ちゃんと婆ちゃんがこの家で二人で過ごすんだと言うことを少し意識したら、なんだか急に心配になってくる。 この質問は、自惚れでも何でも無く、実際に僕がいないとこの二人が危ないのだ。 今の日本には、強盗や殺人犯なんかよりもよっぽど凶悪で、話が通じない"奴ら"が大勢いるせいで。


「ああ、自警団の人たちもお前が今日から寮暮らしだってわかってるから、お前は気にしないで学校生活を楽しんできなさい」


「それなら大丈夫かな……でも、気をつけてね」


「ええ、ありがとう。 裕ちゃんも、あまり怪我とかしない様にね」


 婆ちゃんが、食卓にご飯と味噌汁を並べながら、そんなことを言う。 その顔は、本当の思いやりに満ちていて、僕はそれが嬉しくて、いつもよりちょっといい気分でしばらく食べれなくなるいつもの朝食をいただいて、自分の部屋に戻るのであった。









 部屋に戻って、入学式の準備をする。


「と言っても、荷物は殆ど無いんだけどね」


 そう、部屋にあった物の大半は既に学校の寮に送ってあるので、いまこの部屋にあるのは今日の分の着替えと鞄、後は一昨年から使っている短剣と長剣が一本ずつベルトに吊るしてあるだけなのだ。


 ……昔ならこれだけで異常者として見られていたんだろうけど、今では家に一つも武器として使えるような物が無い方がおかしいと言われるんだろう。

 現在から大体60年ほど前……今では『塔』と呼ばれている謎の建造物と、『魔物』というカテゴリーに分類されることになった、これまた正体不明の黒い生物のような何かの出現により、人類は何度目かの滅亡の危機に立たされたらしい。

 何でも、当時は今ほど武器を扱える人間がいなかったようで、圧倒的な生命力を持つ魔物を相手にするには戦力が足りなかった……という話らしい。


「裕ちゃん、お友達が来たわよ」


「っと、今おりるよ」


 居間の方から婆ちゃんの声が聞こえてきて、それと一緒に聞きなれた友達の声も聞こえてきた。


「おーい、学校行こうぜ裕也」


「今行くからちょっと待って」


 玄関から聞こえてくる、いつも通り騒がしい声に答えてからベルトを腰に巻いて、今まで寝泊りしていた自室を一度眺めてから、玄関におりた。

まだあらすじの内容すら終わっていませんが、これは仕様です。

魔法や魔物、塔などについては、もう少し後の方で詳しい説明会を挟むので、それまでは『そんな物があるのか』程度の認識で読むのがいいと思います。

そんなに大した物でもないですしね。

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