14話:悲愴の帰路
どこまで白が似合うのだろう。そんな風に思える保健室のドアを少女は開けた。
「浅井先生。チャオチャオ」
少女が開けて中に入る。独特な匂いとポカポカな空気が少女を包み込むように部屋へと迎えた。ドアから正面に見える窓が少しばかり曇っている。保健室の暖房がついている証拠だ。広い校舎の中で一番暖かいのはこの保健室だった。そのためか、冬の寒さが厳しくなるとその暖かさを求めて授業を休んだりするものがいるのはこの保健室の長、浅井だけの秘密だった。だが、その秘密をどうやって知ったのか、いや、本人も休む一人であるから知っている少女が浅井にとびきりの笑顔を向けた。
浅井は十年以上も保健体育の教師をしている女性だった。抜け出してくる少年少女が来ようとも動じない。
「んー? 坂上あんた何してるの?」
浅井は璃菜に注意はするが厳しくは言わない。保健室に来る常連の一人だからだ。
常連の少女が保健室に置かれているソファ型のイスに座る。
「和井君と帰るんでーすよ」
そう言いつつ璃菜はゆったりと腰かけた。ここでくつろいでいくと言っているかのような少女を長居させない様に浅井が言う。
「よかった。今日はここで休むんじゃないのね」
「休憩がてら未来に会いに行くの。立派な仕事仕事」
「南部はどうしてるんだかな」
「さぁ。あんたは来ないとダメだって言いにいくんです。今日こそはっ」
璃菜が立ち上がった。そして、保健室の四分の一を占めている二つあるベッドのカーテンを開けた。
「お昼前だよ。和井君行こう」
璃菜に呼ばれて正吾はベッドから起きた。寝ぼけている頭で上履きを履く。立ち上がった正吾に璃菜が元気よく言った。
「よーし、いこいこ」
「二人ともお疲れー」
「浅井先生じゃあねぇ」
璃菜と正吾が保健室から寒い廊下へと出た。今いた部屋の温かさがさらに冷たさを誘う。
正吾が出て璃菜の肩を見た。少女の肩には鞄が二つあった。一つはキーホルダーに人形など色々な物がついた女の子っぽい学生鞄。もう一つは星形のキーホルダーがついた鞄だ。それらを見て正吾は言いながら手を出した。
「バッグありがとな」
璃菜が何のことかポカンとして思い出した。星形のキーホルダーが着いた鞄を手に取り正吾に渡す。
「そうだそうだ。どういたまして……ん?」
首を傾げた少女に正吾は言った。
「いたしましてじゃないか?」
「どういたしましてして……あれ?」
「いたしまして」
「いたします」
「して」
「してます」
「いたしまして」
「どういたしまして」
「あっ言えた」
呟いた正吾に璃菜が笑った。
「私また一歩成長したぁ」
どういたしましてと言えて喜んだ少女に正吾は苦笑した。どういたしましてと言えただけで楽しそうに笑っている事が正吾には不思議だった。なぜこんなにも少女が笑っているのかが、不思議だった。
「さっ、行こう」
元気よく歩き出した璃菜に続いて正吾も学校を出た。学区、棚宮にある店をいくつも通り過ぎ、住宅が所狭しと並ぶ橋西口に入った。橋西口は一目で住宅街だとわかるほどに家々が軒を連ねている場所だ。そのため棚橋市の中で一番の住宅密集地でもある場所だった。
二人が車の少ない横断歩道を渡り、平らな道から緩やかな上り坂に入った。坂にある歩道を少しばかり歩くとまた平坦な道になる。ここから後ろに振り返ると住宅街の屋根屋根が少しばかり見渡せる。住宅街の中で一段高くなった場所を二人が進んでいく。その途中、正吾が少女と話しながら、斜め左と右の二つに分かれた路地を曲がろうとした。
「和井君、こっちこっち。そっちじゃないよ?」
璃菜に言われて正吾は咄嗟に自分が行こうとした道をよく見た。まっすぐな道、その先を右に曲がっていく。自分の家への道だ。今はもう原型のない自宅への道だった。
行こうとした道の前で正吾が足を止めて、間違えたと笑って璃菜の指差した方へと歩き出した。
「和井君のおっちょこちょい。施設はこっちだよー」
璃菜が苦笑しながら左の道を歩いて行く。そんな璃菜に正吾は俯くように答えた。
「だよな。施設はこっちだよな」
自分で確認するかのように正吾は璃菜に言った。璃菜は縦に首を振って正吾の肩を叩いた。別の方へと歩こうとした自分に、正吾は溜息を吐いた。
帰る場所はひばり施設だと分かっていたのだ。だが、いつもの習慣で体は自宅へと帰ろうとしたのだ。その行動に正吾は自己嫌悪に陥った。昨日、一昨日も同じ行動を取ったのだ。家のあった場所まで行きかけて、ふともうない事に気付き途中で引き返す。それを昨日も一昨日もしたのだった。燃えてしまってもうない事は分かっているのに、その家へと帰ろうとする自分が正吾は嫌になった。今朝、目の前にいる少女にも今の状況を確かめさせられたばかりなのに、家に帰ろうとしたのだ。
ふと正吾は横を見て足を止めた。璃菜が足を止めた正吾を振り向いた。
「和井君?」
事件とは何の関係もない少女と一緒に、一時的に移された施設へと帰っている。未来に用がある少女と共に施設へと帰っている。事件のことを知っているだろう少女は何も聞かず、他の話ばかりして。そのことが正吾には耐えられなかった。少女は本当は事件の事を聞きたいのではないかと正吾は疑っていた。学校でも噂話があったように、少女も聞きたいのではと思ったのだ。
そんな疑心が口に出た。
「坂上は聞きたいと思わないのか。事件の事とか……」
「和井君は聞いてほしいの?」
そう聞いてきた少女に正吾は目を見開き俯いた。話したいわけではないのだ。それどころか話す気にも到底ならない。だが、誰もが聞きたいというような雰囲気でこそこそと話す姿が正吾には耐えられなかったのだ。そして少女の言葉に正吾はさらに傷ついた。聞いてほしいのと言った少女が、本当は聞きたいのだろうと思った。今この町では連続放火事件の事後、少年が死んだ理由や放火された家々の噂話でもちきりなのだ。常識的に聞かない人が多数いて、気持ちを抑えるために憶測や噂話をしているのだ。聞けるのなら真相を知りたいに決まっている。自分と同じで。
「和井君が話したいなら話して。そうじゃないなら私は聞かないし、勝手な憶測もしようとは思わないから」
正吾は俯いたまま少女に聞いた。
「坂上は事件に興味ないのか?」
「事件には少しくらい興味あるけど、和井君が話そうと思わない真実とか、警察が言わない真実以外を私は聞きたくない。他人の勝手な想像だけの事件っていうのを知りたくないの。それに、本人しか知らなくていい真実ってあるでしょ? 例えば、十年前の一家猟奇殺害事件とか、さ……」
その言葉に正吾は少女の方を見た。少女は地面に視線を落とし、今までと違う哀愁に満ちた顔色で日差しの当たる地面を見つめていた。
時間が流れている事を忘れているかのように、何かを思い返しているかのように璃菜が佇む。その浮かない顔にぽっとした笑みが浮かんだ。突然笑った少女を不気味に思いながら、どこか悲しみを帯びた目をしている気配に正吾は声を掛けようとした。すると、璃菜はぱっと顔を上げた。一瞬時間が止まっていたのではないかと正吾が思う程に、少女が続きを話すような口調で言った。
「事件の事は気になるけど、和井君が話そうと思うまでは聞かない。無理矢理誰かの心に、入ってほしくない部分に入ろうとはもう思わない。だから、和井君が話しても良いって思ったら話して。それ以外で私は聞かないから」
そう言って璃菜は行こうと進行方向を指差して再び歩き始めた。寒空の下を颯爽と歩く少女に対して、正吾はノロノロと遅れて歩き出す。快活な足取りで歩く璃菜の後ろを歩きながら、正吾は今少女が言った言葉を思い返していた。
話そうと思うまでは聞くつもりはない。入ってほしくない心の部分に無理矢理入ろうとも思わない。正吾はその言葉に少しだけ心が救われたような気がした。
家族が死んだ翌日に現れた警察に一通り事件の事を聞かれ、病院の看護師や医師が密かに事件の事を話しているのを聞き、学校や商店で絶えず流れている事件の話をずっと聞いていた。いや、町を歩くだけで耳に勝手に入ってくるのだ。
本当の犯人はまだ他にいる。犯人はグループだったんじゃないか。自殺した犯人なんて最低だ。犯人も何も語りたくなくて死んだんだろう。犯人が死んでせいせいする。でも、死んだ家族も生き残った家族も可哀想だ。浮かばれない。そう言えばどこどこの誰が病院から出た。警察の事情聴取になんて言ったのだろう。取材したいのに家族が家から出てこない。犯人とは顔見知りなのかな。生き残った人の中に犯人がいるんじゃない。
それらあらゆる事件の憶測や話が町中に広がっていることを知って、入ってくる話や話を聞いてくる人々に正吾は心から疲れていた。報道や警察、興味や真実を知りたい人間が嫌だと言っても寄ってくる。払っても払っても寄ってくる蚊のように、振ってくる雪や雨のように聞きたくない言葉を浴びせてくるのだ。自分でも心の中で整理できていないのが分かっているのに、それを無視して平気で寄ってくるのだ。それをどうにか相手するだけでも疲れるのに、周りでは噂話。事件の話に神経質に自分がなっているのかもしれないと正吾も思った。
だが、自分自身も事件の詳細は詳しくは分からない。犯人が面白がって放火していたことしか知らないのだ。家に帰ったら家が燃えていた。犯人が自殺した。持っている情報は周りと大して変わらなかった。だからこそ、知りたいと少年を施設にいる少女と負ったのにも関わらず、それを知る術も知りたいと思う気持ちもなくなっていた。少年が死んだ事で事件の真相が消えてしまったのだ。
真相を知って正吾はどうするわけでもなかったが、本当にどうすることもできなくなってしまった。しかし、自分が事件を追うのを止めても、周りは着いてきたり噂話を続けたりしている。事件が終わっても自分は休めない事を正吾は改めて知らされた。少年が苦しむこともなくなぜ自分が。そう思った時に現れた少女に不満をぶつけ、正吾は少しだけ気持ちが楽になった気がしたのだ。しかし、何とも言えない満ち足りない物を覚えたのも確かだった。少年への不満が抜けて行っただけで、手で汲み取った水が抜けていくような、そんなわびしさを感じたのも確かだった。
だからこそ、正吾は少女の言葉が本心なのかどうか気になった。本当に聞く気がないのかどうか。表面だけならいくらでも言えるのだから。
正吾がふと顔を上げて驚いて身を引いた。ぼうっと歩いていたせいか、気付くと少女が立ち止って目の前に立っていたのだ。璃菜は正吾に対してくしゃっとした笑みを向けた。
「和井君、あんまり思いつめると未来みたいに無愛想になっちゃうよ」
「え?」
少女の言葉に正吾は顔を前に突き出す様に声を出した。なぜ、施設にいる少女の名前が出るのか解らなかった。
「ほら、笑って泣いて怒って悲しんで。喜怒哀楽大事にしなきゃ。ね?」
笑顔で言うと璃菜が再び歩き始めた。正吾は言葉が詰まり唸るような声を出して答え歩き始めた。
歩きながら正吾は少女の言葉や笑顔に疑った自分を卑しいと思った。事件以降自分が変わったことは間違いないことに気付いていた。色々と考えながら歩いているうちに、正吾はひばり施設へと辿り着いた。白い建物の周りを柵や塀や門で囲った場所だ。
璃菜が門を通って手慣れた様子で施設のドアを開けた。スタスタと入っていく璃菜に戸惑いつつ正吾も後に続く。
「おじゃましまーす」
中に入った途端璃菜が声を張り上げた。その声に押されて正吾は小さく言った。
「ただいま……」
「和井君それじゃ聞こえないじゃん」
無邪気に笑う璃菜の声を遮るように走る音が聞こえ、玄関に一人の少女がやってきた。良いスタイルをしていて可愛い顔をしている。モテると言われる容姿にも関わらず無愛想だ。
「璃菜、来たんだ?」
「うん。あっこれプリントね」
璃菜が鞄から数枚の紙を取り出して未来に渡した。未来がそれらを見てすぐに目を放した。未来は単にいらないと思ったのだ。それを察知したのか璃菜がプリントの中の一つ、ある物を思い出した。
「そうだ未来、終業式ぐらい来ないと。わかった?」
未来はバツが悪そうに口を尖らせた。
「行けたら行く」
「行きなさいって言ってるのに。まったく」
「あ、逸見さんこんにちはー」
未来の横に逸見が立つ。逸見はエプロンのポケット部分に手を突っ込んで、ドンとしている。逸見の癖の一つだ。
やってきた逸見に璃菜が靴を脱ぎながら急いて聞いた。
「あの、逸見さんトイレ借りて良いですか」
「いいよいいよ。ただ、未来の手伝いはしてもらうけど」
「オッケーです」
璃菜が逸見の頼みを承諾すると廊下を走っていった。走っていく璃菜に逸見と未来が人笑すると、逸見が玄関にポツリと残る正吾の方を向いた。
「和井君お帰り」
「あ、うん……」
素っ気無い正吾の返事に逸見が笑いながら眉を寄せた。
「うんじゃないでしょー。まぁ未来後はよろしくね」
「んー」
反転して去っていく逸見を未来が見送ると、正吾に顔を戻した。向けられた顔に正吾がどぎまぎしていると、未来がにっこりと笑顔を見せた。
「おかえり。寒いでしょ外」
「まぁ冬だから」
そう言った正吾に未来がふっと笑った。何が可笑しいのだろうかと思った正吾の前で、未来はすぐさま真顔に戻った。
「ねぇ、あんた勉強科目何が得意?」
聞かれた正吾はふと悩んだ。
「体育とか国語だけど」
「役不足ね。国語が得意ならそれでいいか。私が理社やればいいわけだし」
一人で呟いた未来に正吾は疑問に思って聞いた。
「テストか何かか?」
「違う。優奈たちの勉強を見てるのよ。だけどさすがに全員分は見れないから、あんたにも手伝ってほしいの。どこか行くとかならそれでもいいけど、手が空いてるなら手伝って」
質問の意味が解り正吾は頷いた。どこかに行くような元気はない。ここで大人しくしてようと思っていたためにちょうど空いていた。
承諾した正吾に未来は手で上がるように示した。
「じゃあ着いて来て。あんたは全員分の国語見てもらうわ。璃菜は数学と英語かな。教えるって言っても物覚えの悪い瀬利とふざけるイッちゃんはいないから楽よ。優奈も大体できるから、小学生の勉強ができるならそれで十分、大丈夫でしょ?」
「ああ、それぐらいだったら何とか」
答えながら正吾は廊下に上がった。そうして未来に着いていく。未来が歩きながら正吾に話す。
「教えてくれるのが一人増えて助かった。いくらなんでも見きれないのよね、アレ」
「そんなに大変なのか?」
「ほら、小学一年生のユウくんとマキちゃんに勉強して大人しくしてろって言うのが無理でしょ。七歳の子に勉強だけしてろなんて無理な話じゃない? もっと遊んできていいの、あっちは」
未来が不満を漏らす様にしゃべり続ける。正吾はそれに相槌を打ちながら聞く。
「それと三年生の絵里名がねぇ、二年生で止まってる部分があるから勉強できなくて困るのよ、これが。まぁ瀬利よりはマシだけど」
「いない二人はどうしたんだ?」
「瀬利は友達とゲーセンとかで遊んでるんじゃない。後は学校? イッちゃんは真面目だから学校だと思うけど。今いる四人は訳あって戻ってきたの」
未来の言葉に正吾は疑問を持った。訳があって戻ってきた四人の訳が気になった。
「訳?」
「あんたと同じ理由」
未来がまっすぐ前を見たまま言った。言葉を失う正吾を未来は盗み見るように覗いた。
「だからって、あんたが気にすることない。世間は騒がせとけばいいのよ。どうせ興味がなくなったら自分たちから去ってくし、最後には闇に葬られて忘れられるんだから……」
未来が言葉に陰りを見せたのを正吾は気になった。ここにいるのだから少女にも何かあったのだろう。そう思っただけで聞くのをやめた。
食堂の前に着いて未来は言った。
「まぁいきなり四人の勉強見るの大変だけど適当に頑張って」
正吾が食道の中に入ると、テーブルに居た四人が振り返った。
「お帰りー」
四人の声に正吾は胸がドクンと鳴るのを感じた。正吾の頬が緩み口角が上がる。一瞬ためらった口が返事をする。
「ただいま……」
呟くように言った正吾を未来がチラリと見てテーブルに座る四人に言った。
「さてと、勉強の続き!」
「はぁい」
四人が緩く返事をする。正吾が長いテーブルの前にある椅子に、四人と対面するように座った。未来も席に着くと、優奈が手を挙げた。
「未来先生、ユウ君が引き算できないって」
未来がユウ君へと体の向きを変える。
「ユウ君指使ってもいいからやってみよう」
その横で丸っぽい顔の頬に薄らと傷のある絵里名が顔を上げた。
「ねぇ、“ぎょう”ってどう書くの?」
未来が正吾を指差し、正吾は絵里名に聞いた。
「ぎょうってどのぎょう?」
「い“ぎょう”をなしとげるの“ぎょう”」
「業はこう」
正吾が絵里名から鉛筆を借りてプリントの端に書いた。それを見て絵里名が正吾に別の部分を指して聞く。
「じゃあ」
「絵里名それテストでしょ?」
注意した優奈に舌を出した絵里名が優奈に叱られた。そうしてしばらくすると璃菜がやってきた。その手にクッキーの箱を持って。
「皆おやつターイム」
「やった!」
入ってきた璃菜に未来が激を飛ばす。
「璃菜、今授業中だから邪魔しないで」
「はぁい……」
しょぼくれる璃菜に駆け寄るユウ君とマキちゃんを未来と璃菜が席に着かせる。その横で頭を抱える絵里名に正吾が教えようとして、優奈にテストだからと注意された。ユウ君とマキちゃんを座らせた璃菜が優奈の前に座る。
「さぁさぁ優奈ちゃん。英語のお勉強」
「私は大丈夫だから」
「本当?」
優奈に聞いた璃菜に正吾は首を傾げる。
「そこ英語じゃないのか?」
聞いてきた正吾に璃菜は顔を見つめて言った。
「和井君、私は英語ができない」
「え?」
「優奈ちゃん教えてくださいな」
「うん」
ポカンとする正吾に未来が答える。
「ああ、璃菜より優奈の方が頭いいから、璃菜は本当の授業なんだよね」
未来の言葉に璃菜がコクコクと頷いた。そうして優奈に笑みを向ける。
「私の先生は優奈ちゃんですよ」
「私の先生は未来お姉ちゃんだけだから」
優奈が璃菜からの笑みを二倍にして未来に言った。それを受けた未来がさらっと言う。
「お世辞よりもさっさと勉強終わらせる」
「はぁい」
勉強会のような時間は、日が落ちて璃菜がいるまで長引いた。