不必要な感情
【R15】
性描写、過激な殺害シーン、流血シーンはありませんが、殺人に伴う描写はございますので苦手な方は注意してください。
※20歳以下の女の子が殺し屋をするという、完全なるフィクションです。
現実離れしております。
この世界に、なんでとかどうしてだとか、そんなものはない。
好きだとか嫌いだとか、非合理的なものも存在しない。ただただ私は、人を殺すのだ。
なんて人は簡単に死ぬのだろう。
目の前でもがき苦しんでいる男を眺めながら、人の命のはかなさを実感した。
ほら、方法はいくらだってある。撃つも刺すも絞めるも殴るも、好きにすればいい。その中でも私は絞めるを好む。クイッとワイヤーを引っ張ってやれば嗚咽を漏らして男は死に至った。
―――そう、私は殺し屋なのだ。
この時代にそんなものがあるのか? そう思う人は少なくないだろう、しかし実際存在するのだ。だから私は人を殺しているのだ。
人を殺して生活をする。
理解などいらない、だって理解されなくても、私は殺人を犯さなければならないのだから。わかってもらえなくたって病めることはできないのだから。
私はすぐさま電話をかける。
「こちらユジュリア、標的八番完了いたしました。」
電話を切ると、右ポケットからカッターナイフを取り出し、左手首に当てた。
銀色の刃で線を入れると、赤く染まる。
―…嗚呼、また人を殺した。
この手首の傷は一体何本目だろう。
いいや、感傷に浸っても意味はない。そんな感情、必要ない。そう一瞥し、捲った袖を元に戻す。
仕事でも何でもない。朝起きて歯磨きをする、それくらいのもんなのだ。
なのになぜ、手首の傷からあふれる血は止まってくれないのだろう。
ボスから渡された書類に目を通す。すると驚いたことに、次の標的は私と同い年…つまり、現在高校三年生くらいだろう、男性だった。
「高校…生」
思わず口から洩れるその言葉。
狙われる理由など知らない。だけど私はその男…達川怜がひどく憎らしく思えた。
ともかく長居は禁物だ。帰宅してからじっくり目を通そう、そう思い私は標的番号八番…もう名前も覚えていない男の殺害現場を後にした。