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美食の魔王と満ち足りた日々  作者: 次元美食家
食欲の探求と純真なる胃袋
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飢餓の果て

レオンが差し出した、生命の輝きを凝縮したかのような黄金色の液体──『食欲の源泉エッセンス・オブ・アペタイト』。その香りは、飢餓に苦しんでいたリリアの理性を吹き飛ばし、彼女の純粋な「食欲」を猛烈に刺激した。彼女の瞳は、まるで宝石のように輝き、その小さな体は、目の前の液体へと吸い寄せられるかのように震えていた。

「これ……食べる!」

リリアは、本能のままに小瓶を奪い取るように掴むと、一気にその黄金色の液体を飲み干した。

ゴクリ、ゴクリ……。

液体が喉を通り過ぎるたび、リリアの体中で、微かな、しかし確かな光が瞬くのが見えた。彼女の顔色は、瞬く間に健康的なバラ色へと変わり、その小さな体から、とてつもない生命力が溢れ出す。

「う、うわああああああああっ!!!」

リリアが、天高く叫び声を上げた。それは、苦痛の叫びではなく、長年の飢餓から解放された、純粋な歓喜の咆哮だった。彼女の身体からは、まるで膨大な食欲が物理的な形を取ったかのように、半透明の黄金色のオーラが噴き出した。そのオーラは、キッチンを満たし、空気中の不快な飢餓感を一瞬で浄化していく。

「なっ……何だ、この力は!?」

飢えの魔術師は、リリアの突然の覚醒に、恐怖に顔を歪ませた。彼の『生命の歪み』によって奪った食欲が、レオンの『美食』によって、彼の想像をはるかに超える力となって返ってきたのだ。

「フフフ……。それが、俺の『美食』の真髄だ。お前たちの歪んだ食欲は、最高の形で昇華された」

レオンは、満足げに微笑んだ。彼の「美食の極致」は、リリアの「食欲」が、単なる摂食欲求を超え、生命を活性化させる純粋なエネルギーへと覚醒したことを感知していた。

「お腹……お腹が、すっごく空いた……! なんでも、食べられる!」

リリアは、その黄金色のオーラを纏ったまま、飢えの魔術師の背後に立つ機械へと、ギラギラとした視線を向けた。彼女の瞳には、以前のような無邪気さに加え、根源的な「捕食者」としての輝きが宿っていた。

「ひぃっ! ま、まさか……あの機械を……!?」

飢えの魔術師は、リリアの視線に戦慄した。彼の機械は、あらゆる生命の食欲を吸い上げる装置だ。それが、今、リリアの爆発的な食欲の対象になろうとしている。

「リリアちゃん、危ないよ!」

エリスが叫び、飢えの魔術師の前に立つが、リリアの動きは、彼女の想像をはるかに超えていた。

「邪魔ー!!」

リリアは、黄金色のオーラを纏ったまま、飢えの魔術師の脇をすり抜けるように、驚くべき俊敏さで機械へと飛びかかった。その小さな体からは、まるで暴食の魔獣が宿ったかのような、圧倒的な「食欲の波動」が放出されていた。

「やめろぉおおおお!!」

飢えの魔術師が悲鳴を上げたが、時すでに遅し。リリアは、その小さな口を大きく開くと、機械の核となる部分に噛み付いた。

ガリゴリッ!!バリバリバリバリッ!!

信じられない音がキッチンに響き渡る。リリアは、金属と骨でできた機械を、まるでクッキーでも食べるかのように、猛烈な勢いで噛み砕き始めたのだ。機械から放たれる『生命の歪み』の魔力は、リリアの口の中で、最高の「美食」へと変えられ、彼女の生命力に吸収されていく。

「な、なんてことだ……! 我らの秘宝が……!?」

飢えの魔術師は、自分の創造物が、目の前で貪り食われる光景に、完全に絶望した。彼の体から力が抜け、その場で膝をついた。

機械が完全にリリアの胃袋に収まる頃には、飢えの魔術師の体は、見る見るうちに痩せこけて、まるでミイラのようになっていた。彼の食欲の源泉である機械を失ったことで、彼自身が持つ「食欲」の魔力も完全に枯渇してしまったのだ。

「あー……ごちそうさま!」

リリアは、満足げに口の周りを拭うと、ニッコリと笑った。彼女の瞳は、以前よりもさらに輝きを増し、その体からは、瑞々しい生命力が溢れ出している。彼女の「食欲」は、単なる摂食欲求を超え、あらゆるものを「美食」へと昇華させ、己の力とする、まさに『暴食のキング・オブ・グラトニー』のような、新たな覚醒を遂げたのだ。

「リリアちゃん……すごい……!」

エリスは、リリアの覚醒した姿に、驚きと感動の入り混じった表情を浮かべていた。彼女は、リリアの成長を、まるで自分のことのように喜んでいた。

ティアもまた、リリアの覚醒した生命力から放たれる「充足」の魔力に包まれ、その瞳は穏やかな安らぎに満たされていた。彼女の「睡眠欲」は、リリアの満たされた食欲によって、間接的に満たされているかのようだった。

レオンは、満足げにリリアの頭を撫でた。

「よくやった、リリア。お前は、最高の『美食家』へと覚醒したな」

リリアは、レオンの言葉に嬉しそうに頷いた。彼女の「食欲」は、レオンによって、最高の形で満たされ、彼女自身も、レオンにとっての「食欲」を象徴する、唯一無二の存在となった。

その時、地下から、再びあの重く不吉な「声」が響き渡った。

「バ、馬鹿な……! 我らの『食欲の魔術師』が、なぜ……! 魔王め……! この借りは必ず……」

「声」は、憤怒に満ちた言葉を吐き出すが、その声には、以前のような自信と傲慢さはなく、明確な動揺と恐怖が滲んでいた。

「フム……。どうやら、お前たちの『食欲』も、俺の『美食』には及ばなかったようだな」

レオンは、冷徹な笑みを浮かべ、地下へと視線を向けた。秘術師たちが、彼の「三大欲求」に手を出したことで、彼らの運命はすでに決まったも同然だった。

これで、リリアは、レオンの三大欲求の一つである「食欲」を、最高の形で満たす、唯一無二のパートナーとなった。彼女の「食欲」は、もはや単なる食事ではなく、あらゆる生命を「美食」へと昇華させ、己の力とする、強大な能力へと変貌を遂げたのだ。

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