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美食の魔王と満ち足りた日々  作者: 次元美食家
性欲の覚醒と剣士の誇り
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愛の真髄と剣聖の覚醒

レオンの言葉が、闇の結界の中で倒れ伏すエリスの意識の深淵に、雷鳴のように響き渡った。

「エリス。お前の剣は、まだ『愛』を知らぬのか?」

その問いは、エリスの剣士としてのプライドと、女性としての奥底に眠る「さが」に、同時に突き刺さった。彼女の脳裏に、レオンとの甘美な夜の記憶が鮮明に蘇る。彼に抱き締められ、魂の奥底まで満たされたあの瞬間。しかし、今、目の前の『闇の融合体』が放つ悍ましい穢れの魔力は、その記憶を汚し、彼女の心の奥底に潜む「愛」への疑念を呼び起こそうとしていた。

闇の融合体は、エリスが苦悩する隙を狙い、そのおぞましい巨体をさらに彼女に近づけた。複数の血走った目がエリスを見下ろし、粘液を滴らせる歪んだ口が、嘲笑うかのように開かれる。

「ククク……無駄だ。剣聖の末裔よ。お前の愛など、所詮は幻想に過ぎん。我らの闇は、全てを冒涜し、絶望に染め上げる!」

秘術師たちの声が、闇の結界に反響する。彼らは、エリスの精神を完全に打ち砕こうと、さらに強力な闇の魔力を送り込んできた。その魔力は、エリスの五感を麻痺させ、心臓を直接握り潰すかのような圧力をかけた。

リリアは、恐怖で小さく震えながらも、エリスの身を案じて叫んだ。

「エリスさん! 負けないで! レオン様が、エリスさんを待ってるよ!」

ティアもまた、普段の静かな面持ちからは想像もできないほど、瞳を大きく見開いてエリスを見つめていた。彼女の「睡眠欲」は、本質的に安らぎを求める欲求だが、今、エリスが直面している絶望的な状況は、彼女の心の奥底に眠る「安らぎの喪失」という根源的な恐怖を揺さぶっていた。彼女は、レオンの隣に身を寄せ、その魔力に必死にすがっていた。

レオンは、エリスの苦悩を冷静に見つめていた。彼の「美食の極致」は、エリスの心の中に渦巻く葛藤、そして闇の魔力と「さが」の光がせめぎ合う、複雑で奥深い「味」を感知していた。

「エリス。お前の剣は、単なる武器ではない。お前の魂の現れだ。そして、お前の魂は、俺の愛によって、最高の輝きを放っているはずだ」

レオンの声は、まるで慈愛に満ちた囁きのように、エリスの精神に深く染み渡った。彼の言葉は、彼女が長年抱えてきた「剣聖」としての重圧や、完璧であろうとするがゆえに抑圧してきた感情の全てを、優しく包み込むようだった。そして、彼との夜の営みで得た、本能的な「さが」の解放。それが、彼女の真の力であることを、レオンは教えてくれた。

(そうだ……わたくしは……レオン様の愛によって、この『さが』を覚醒させた……!)

エリスの脳裏に、レオンとの夜の情事が、鮮烈な光となって蘇った。肌と肌が触れ合う熱情、彼に全身を委ね、理性の壁を打ち破られ、本能のままに彼を求めたあの瞬間……。あの時、彼女は初めて、真の自分を肯定できたのだ。それは、過去の「型」や、一族の重圧とは無縁の、純粋で、根源的な「愛」の感情だった。

エリスの瞳に、強い光が宿った。彼女の身体から、覚醒した「さが」の魔力が、聖なる炎のように激しく燃え盛った。それは、もはや闇の魔力に怯むことはない。闇を打ち破るのではなく、闇を自らの内に取り込み、そして**「愛」の力で浄化し、昇華させる**かのような輝きを放っていた。

「わたくしの剣は……愛を知っています……!」

エリスは叫び、倒れていた聖剣に手を伸ばした。その手は、以前よりもさらに強く、そして確固たる意志に満ちていた。聖剣は、エリスの魔力に呼応するように、清らかな銀色の光を放ち、闇の結界を貫いて輝いた。

闇の融合体は、エリスの突然の覚醒に、怯んだかのようにわずかに後ずさった。その身体から放たれる「穢れ」の魔力が、エリスの「愛」の光に触れるたびに、まるで蒸発するかのように薄れていく。

「馬鹿な……! そんな力が、剣聖の血に……!?」

秘術師たちのリーダー格の男が、信じられないというように叫んだ。彼らは、剣聖の血が持つ聖なる力を「力」としてしか見ていなかった。しかし、エリスは、レオンとの「愛」を通じて、その「さが」を昇華させ、慈愛に満ちた、より高次元の力を手に入れたのだ。

エリスは、聖剣を高く掲げた。彼女の背後には、闇の結界を突き破って、まばゆいばかりの聖なる光が差し込んでいるかのように見えた。その姿は、まさに『性愛を司る剣聖』と呼ぶにふさわしい、神々しいまでに美しいものだった。

「わたくしの剣は……レオン様への愛が宿っています……! そして、その愛は……全てを包み込み、清める力となるのです!」

エリスはそう宣言すると、聖剣を構えた。その構えは、これまで彼女が学んできた「型」とは、完全に異なるものだった。それは、彼女自身の本能と、レオンへの「愛」が導き出す、**『性愛の極致エロティック・エッセンス』**を体現する剣だった。

エリスは、闇の融合体めがけて一歩踏み出した。その動きは、以前よりもさらに滑らかで、そして、予測不能だった。彼女の剣は、闇の融合体の攻撃を軽々と受け流し、その巨体の急所へと次々と斬り込んでいく。

ドオォォォォン!

エリスの剣が、闇の融合体の核のような部分に深く突き刺さった。その瞬間、融合体の身体から、濁った黒い煙が噴き出し、苦悶の咆哮を上げた。そして、その身体は、まるで砂が崩れるように、ゆっくりと崩壊し始めた。

「なっ……ありえん……! 我らの闇の融合体が……!」

秘術師たちは、目の前の光景に絶句した。彼らが誇る秘術の結晶が、剣聖の末裔の一撃で、あっけなく消滅しようとしているのだ。

闇の融合体は、完全に消滅し、その場には、微量の黒い塵だけが残った。同時に、秘術師たちが展開していた闇の結界も、まるで泡が弾けるかのように消え去った。

エリスは、息を切らしながらも、聖剣を静かに下ろした。彼女の顔には、達成感と、そしてレオンへの深い愛情が浮かんでいた。その身体からは、以前よりもさらに強く、そして甘く官能的な魔力が溢れ出している。彼女は、剣士としての「覚醒」と共に、女性としての「さが」を、真の「愛」へと昇華させたのだ。

レオンは満足げに頷くと、エリスの傍らに歩み寄った。彼は、エリスの剣から放たれる魔力を感知し、その「味」が、これまでのどんな美食よりも、複雑で奥深いものになったことを感じていた。

「よくやった、エリス。お前の剣は、まさに真の『性愛の剣聖』となったな」

レオンの言葉に、エリスの頬が紅潮する。彼女は、レオンの腕の中に飛び込み、彼の温もりを全身で感じ取った。

「レオン様……あなた様のおかげです……。わたくしは、あなた様の愛によって、真の力に目覚めることができました……」

エリスの声は、感謝と、そしてレオンへの尽きることのない愛情に満ちていた。彼女の身体からは、もはや抑制されることのない、彼女自身の「さが」の輝きが、光となって溢れ出している。

秘術師たちは、エリスの圧倒的な力に恐れをなし、その場から逃げ去ろうとした。しかし、彼らの目の前に、レオンが立ち塞がった。

「フム……。楽しい時間は終わりだ。お前たちには、少しばかり、この隠れ家での『客』としての時間を延長してもらおうか」

レオンの琥珀色の瞳が、冷徹な光を放った。彼の「美食の極致」は、この秘術師たちが持つ「穢れ」の魔力が、新たな「食材」として、どのような「味」を出すのか、その可能性を探求しようとしていた。

リリアとティアは、エリスの覚醒に目を輝かせ、レオンの圧倒的な力に安堵の表情を浮かべていた。隠れ家の平和は守られ、エリスは真の剣聖へと覚醒した。しかし、秘術師たちの根源は未だ不明のままであり、レオンの「美食」の探求は、さらに深淵な領域へと進むこととなるだろう。

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