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美食の魔王と満ち足りた日々  作者: 次元美食家
性欲の覚醒と剣士の誇り
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闇の侵食と絶望の淵

エリスの放った聖剣の一閃は、闇の融合体の突進をわずかに止め、その巨体に浅い傷を刻んだ。しかし、傷口からは黒い粘液が噴き出し、まるで生きているかのように蠢きながら瞬く間に塞がっていく。その再生能力は、以前の血の触手とは比較にならないほど強力だった。

「ククク……無駄だ。我らの『闇の融合体』は、お前の聖なる力などでは、決して消滅させられん!」

秘術師のリーダー格が、闇の霧の中から不気味な声で嗤った。その声は、闇の結界全体に響き渡り、エリスの心に重くのしかかる。

闇の融合体は、そのおぞましい巨体を揺らし、再びエリスへと迫る。複数の腕からは鋭い爪が生え、獲物を引き裂かんとばかりに振り下ろされた。その攻撃は、これまでの魔物の攻撃とは異なり、エリスの精神を直接蝕むような、重い「穢れ」の魔力を伴っていた。

「くっ……!」

エリスは聖剣で攻撃を受け止めるが、その衝撃は想像を絶するものだった。闇の融合体の力が、彼女の聖なる力と拮抗し、剣を持つ腕が痺れる。そして、その身体から放たれる「穢れ」の魔力が、エリスの覚醒した「さが」の輝きを汚そうとするかのように、じわりと浸食してくる。

彼女の脳裏に、再び過去の幻影がフラッシュバックする。それは、一族の剣聖が闇に堕ちていく姿。彼らが、力への渇望から、己の精神を穢れに染めていく、おぞましい光景だ。そして、その幻影の奥には、エリス自身の心の奥底に潜む、かすかな「歪み」が呼び起こされようとしていた。

「エリスさん、危ない!」

リリアが悲鳴を上げた。彼女の純粋な感覚は、闇の融合体が放つ「穢れ」の不快さに、本能的な恐怖を覚えている。ティアもまた、顔を青ざめさせ、その瞳は不安に揺れていた。彼女の「睡眠欲」は、本質的に安らぎを求めるものであり、この悍ましい闇の魔力は、彼女にとって耐え難いものだった。

レオンは、その様子を腕組みして見守っていた。彼の「美食の極致」は、闇の融合体から放たれる「穢れ」の魔力と、エリスの「さが」の魔力が混じり合う、複雑な「味」を感知していた。この戦いは、エリスが真の剣聖として、その「さが」の力を極限まで高めるための、最後の試練となるだろう。そして、この「闇の融合体」が、どのような「美食」の可能性を秘めているのか、レオンの探求心は高まっていた。

「エリス。その穢れは、お前の剣聖としての血に刻まれた、根源的な歪みだ。それを乗り越えなければ、真の自由は得られんぞ」

レオンの声が、闇の結界の中に響き渡る。その言葉は、エリスの心の奥底に、鋭く突き刺さった。彼女が長年抑圧してきた、剣聖としての重圧、完璧であることへの執着。そして、過去に一族の剣聖が闇に堕ちたという伝承が、彼女の精神に深い影を落としていたのだ。

闇の融合体は、エリスの迷いを嗅ぎ取ったかのように、さらに猛攻を仕掛けた。複数の腕が同時にエリスに襲いかかり、その巨体が彼女の退路を断つ。エリスは聖剣を振るうが、その動きは鈍り、刃が闇の融合体の硬い表皮に届かない。

「くっ……!」

闇の融合体の一本の腕が、エリスの剣を弾き飛ばし、彼女の身体を地面に叩きつけた。エリスの口から、苦痛の呻きが漏れる。

「エリスさん!」

リリアが泣きそうな声で叫び、ティアも、エリスの身を案じて一歩踏み出した。

「ククク……終わりだ、剣聖の末裔よ。お前の血と力は、我らのものとなる!」

秘術師たちの嗤い声が、闇の結界に反響する。闇の融合体は、倒れたエリスの身体に、そのおぞましい巨体を覆い被さろうとした。その口からは、異臭を放つ粘液が滴り落ち、エリスの顔に今にも降りかかろうとしている。

エリスは、朦朧とする意識の中で、聖剣に手を伸ばした。しかし、身体は言うことを聞かない。長年の重圧と、目の前の闇の融合体が放つ「穢れ」の魔力が、彼女の精神と肉体を完全に支配しようとしていた。

(このままでは……レオン様も……リリアも、ティアも……!)

彼女の脳裏に、レオンの優しく、そして情熱的な瞳が浮かんだ。彼に抱き締められ、愛された夜の甘美な記憶。その快楽は、彼女の性欲を覚醒させ、剣士としての新たな力を与えてくれたはずだった。しかし、その力は、この強大な「穢れ」を前に、まるで無力であるかのように感じられた。

絶望が、エリスの心を支配しようとする。

その時、レオンがゆっくりと一歩踏み出した。彼の琥珀色の瞳は、闇の融合体と、その背後に潜む秘術師たちを、まるでゴミを見るかのような冷徹な視線で見つめていた。

「フム……。どうやら、お前たちの芸は、そこまでのようだな」

レオンの声が、闇の結界全体に響き渡る。その声は、闇の魔力を打ち消し、秘術師たちの嗤い声を一瞬で凍り付かせた。彼の身体から、これまでにないほど膨大な魔力が放出され、闇の結界が、その圧力によって歪み始めた。

「貴様……! 何者だ!?」

秘術師のリーダー格の男が、恐怖に顔を歪ませて叫んだ。彼らは、レオンの底知れない魔力に、本能的な恐怖を覚えたのだ。

レオンは、倒れたエリスの傍らに立つと、その手に、冷たい一瞥をくれた。彼の目は、エリスの心に深く刻まれた「穢れ」の痕跡と、それが彼女の「さが」の覚醒を阻んでいる原因を見抜いていた。

「エリス。お前の剣は、まだ『愛』を知らぬのか?」

レオンの言葉は、エリスの意識の深淵に、雷鳴のように響き渡った。

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