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(四章)

テーマ:小説(アメニチィー)







俺たちはドライブ帰りに寄ったファミレスで




夕食をしながら篠原と会話に夢中成っていると、




一台の車が轟音を発てて入って来た。




俺は何気なく窓の外に眼をやると、




S2000から降りて来る長門先生が眼に入った。




「うわっ」




想わず声を上げて了い、




それに反応して窓の方を見た篠原も喫驚(びっくり)したのか




「あぁ」




と声を上げ、こちらに気付いた先生が手を振った。








篠原の隣に席を陣取ると、先生は通り掛かったウエートレスを呼び止め、




何やら注文している。




俺はハンバーグを口に頬張りながら言った。




「今日は何処に行ったんですか?」




今日も見られていたら敵わないからな




「えっ、今日?そうね、赤城かな」




と言って煙草に火を点した。




それを聞いた篠原が蓮の天ぷらを一口噛って




「赤城って確かコーナーがきつくてタイトな場所ですよね?」




「あぁ、そうだが、よく知ってるな。




以前までは榛名や碓氷で走っていたんだが、




エリアを拡大しようと想ってる」




そう言い終る辺りで注文した品が運ばれて来た。




「そうですか…」




そう言うと篠原は味噌汁を啜った。




「そう言えばお前等はこんな時間に此処に居るんだ?




ひょっとしてドライブ帰りか?」




そう問い質すとハンバーグを口に頬張った。




俺は先生と篠原の会話の最中にディナーを平らげて、




今は食後の珈琲を口にしている。




「今日はいろは坂まで足を運んで先程戻って来たところで、




その帰り道に寄ったファミレスで晩飯にありつけたんです。」




そう言いながらまた珈琲を啜った。




「いろは坂って日光だよな、




あそこはわたしでも拒む場所なのによく行ったな?」




「いやぁ、篠原が




『今日はいろは坂に行かない?』




って言われたから…まあ良いかって感じで」




俺がそういうと篠原が俺に一瞥した。




「そうか。午にもちょっと話したけど、無茶な運転してないでしょうね?」




「それは…まあ想像にお任せします。」




「って事はやはりそうなのね?もう…」




俺たちは咄嗟に怒鳴られると思いビクビクしながら次の台詞を待ったが、




次の一声は想像とは掛け離れていたのだ。




「な~んてね、一応わたしも教師だけど、生活指導者じゃ無いし、




抑プライベートまで首突っ込むのもダルイし…




実はわたしもあんた達と同じ時期に




似たような事をしていたからよく解る。」




食事を終えた先生はそういうと煙草に火を点けた。




「そうですか…」




食後のパフェを口にしていた篠原も安堵したのか




微笑を浮かべて先生に問いた。




「明日も走りに行くんですか?」




「あぁ、多分…明日から三連休だし…でも、何でだ?」




顔を顰て問い返された




「いやこれと言った訳じゃ無いんですが…




もし行くなら同行したいんですけど…」




「別に構わないけど…そう言えば木村、午に言わなかったっけ?




走りに行く時は連絡くれと…」




そういえばその様に言われたが、結局連絡しないで居たな。




「すいません」




「まあ良いけど、




そうそう聞いたところだとお前たち同棲してるんだってな?




詳しい経緯を聴こうか。」




やはりそこに来たか。仕方ないので一部始終を告げたのだが、




何だかしっくり来ない様子で俯いたまま唸って考えている。




俺はテーブルに顔を乗り出し、




向に坐る篠原にだけ聞こえる様に微かな声で囁いた。




「萌」




俺の呼び掛けに反応して見据えている。




「なに」




「話しても大丈夫だったよな?」




「うん」




「なら良いんだけど…」




(いず)れは問われる運命だから…」




「そうか」




等と会話をしている何かを理解したのか先生は頷きながら




「なるほど、そう言うことか!




じゃあお前たちは両親との忽然(こつぜん)訣別(けつべつ)がトリガーに成ったのか」




突然何を言い出すのかと想いきや、




確かに率直に纏めて言えば正論かもしれない。




「まぁ…そんな処です。」




こう言うと俺は確認の上で篠原に一瞥すると




食後のパフェを食べ終え会話を聞くのも飽きたのか、




鞄から本を取出して読み始めた処だった。




「じゃ今は二人で暮らしているんだな!」




「いえ三人です」




「隠さなくても良いわよ!情報は入ってるから」




どうやら情報伝達に齟齬が生じた様だ。




一体誰の仕業だ、畜生。




「ほら、俺には姉貴が居るから今は三人です」




「照れ隠しも程ほどにしないと怒るわよ」




顔を顰て言われも事実と掛け離れている、そして続けて




「だってお姉さんは…」




突然笑い始めた先生を篠原は怪訝な面持ちで直視した。




「ごめん、ごめん今のは冗談…でも事実が解って良かったわ」




俺は一瞬躊躇したが一言呟いた




「どういう事ですか?」




「前話で話したのも事実、わたしも報告受けてから不思議に居たから…




以前担任だった安東先生からは




『木村と篠原の二人は同棲しているから




余り細かいことは聞いちゃ駄目ですよ。




それにしても良いですよね?




同じ屋根の下で異性が共有出来るなんて…




羨ましいのほか言いようが無いですね』




って言われたからやっぱり二人がなって想ったわけ。」




「それは安東先生の説明不足ですよ。




でも業とその方向に持ってたのは




面白半分に翻弄されたんじゃ無いですか?」




「確かに笑みを浮かべながら喋ってたからそうかもしれないわね。」




先生は眉を顰て悩みこんだ。




そんなこんなを話し込んでいたらもうすぐ零時を廻ってしまう。




俺は慌てて先生に帰宅の意の表し、そのおかげで奢りに在り付けたので




先生に一言お詫びして篠原を連れてファミレスを後にした。





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