ナサニエール・サラスと三人の娘と銀の皿
まったくの渋々ではあったが、ナサニエール・サラスは大審院たる『地獄法廷』で聖杖をかざし、兜率ゴランを召喚した。
地下にある法廷の中央に最初はポツリと火が灯り、徐々にその炎は大きくなる。
次第に地獄の業火の如く巨大な火球となり、法廷全体を目映く照らした。
サラスの背後にいる三人の娘が後ずさる。
「ナサニエール・サラスの求めに応じて我は来り。サラスよ、訴状を述べよ」
法廷の天蓋から響いた声は低音ながら滑舌よく響き、法廷は戦慄した。
漆黒の天蓋から巨大な兜率が降り立つ。頭は凶悪な羊の様相、その角は禍々しいばかりに黒く輝く。
身体は隆々たる人の身と大蛇の尾、毛深い下半身の脚に蹄を備えている。
右手に兜率の武器は三つ叉の鋲眼槍を持ち、左手には裁判官の象徴たる金属製の天秤が鈍く光っている。
巨大な彫刻のような、あるいは悪夢を形にして膨張させた空想上の怪物のようでもあった。
サラスの長女であるマガンワは恐れを浮かべつつも舌打ちをする。「ちっ」
次女シランはソッポを向いている。「知らんもん」
そして三女のブルーリは青白い顔で卒倒した。「あはん」
ここはとある砂漠と魔法の国。
その国でもっとも大きな街の地下法廷には中央の魔神ゴランを挟んで群青象の方角にナサニエール・サラスとその一家、百々目犀の方角には一人の若者が立っていた。
それを取り囲む群衆は見物人であり傍聴人である街の住人、すなわち野次馬達である。
「ナサニエール・サラスも悪どい商売をするからこんな目にあうのだ」
「見ろ、あの長女。美しくはあるが我が儘を煮詰めたスープのような顔だ」
「いや、次女も酷い。顔のキャンパスに無遠慮無愛想の絵の具を塗りたくったら、ああなるに違いない」
「三女は気を失ったままだな。頭が弱いという噂であったが、気も随分弱い」
散々な評判である。
ここ地下法廷は古の呪文を刻んだ石版が壁をびっしりと覆い、幾つかのランプが灯っている。
正邪善悪確かならぬ事犯がこの場で裁かれる。
裁くのは神々の国から派遣される大兜率たる魔神ゴラン。
街の住人達は一種の娯楽としてここで行われる魔神の裁判を見物に集まっていた。
(何でこんなことに。あんな皿くれてやればよかったわい)
ナサニエール・サラスは目の前の若者に眼をやり、後悔の蚊取線香にポツリ点火した。
この裁判には大きな代償が伴う。些末な罪状で魂…すなわち命を取られることさえあり、よほどのことがない限り自らこの地下大審院で裁きを得ようとは誰も思わぬ。
ここで裁判が行われるのはおおよそ月に一度、複数の死人を生みだすほどの事件事故があったときと5万ドナール以上の盗みが犯されたという疑いがあったときだ。
誰も望まなくとも裁判は行われる。行われる事情がある。
死人の数と損害額、それを満たした事案が起こって、なおも黙していた住民には疎漏無く天罰が下されるのだった。この10年で29人の住人が沈黙の罪である雷を受けて落命した。
理由はわからぬが、神々は人々にその存在を誇示せず過ごすことが出来ぬ。
豪商ナサニエール・サラスは必死であった。(彼にとっては端金の)ギリギリ5万ドナールとなる3枚の皿程度で魔神の裁きを受けるなど災難以外のなにものでもない。
皿の行方などどうでも良い。すべての罪はそこな若者サボィーリにあると証明せねばならない。
豪商サラスは目の前にいるふてぶてしい若者サボィーリを睨む。
「ゴランよ。魔神ゴラン、正しき裁きを。我が家の財産である銀の皿を盗んだ恥知らずの悪党サボィーリに報いを与えたまえ」
大兜率ゴランが天井に向かってゴオッと炎を吐く。
見物人であり傍聴人である街の住人、すなわち野次馬達から悲鳴とも歓声ともつかぬ嬌声が響いた。
「サボィーリよ。訴えに誤謬ありや否や。事実ならお前は銀の皿三枚分の窃盗への対価としてお前の目の玉二つと指4本、さらに魂の罪深さに応じあるいは命のすべてをもって報いねばならない」
(死んじゃうんなら眼とか指とか関係ないじゃん)
野次馬達はだいたい同じ感想を持ったが、恐ろしい兜率の前には沈黙が賢いことも知っていた。
「聞くが良い。偉大なる大兜率ゴランよ」
だが驚くべきかな、この若者、蛮勇の持ち主でもあるサボィーリは怯まない。
「まったくの事実無根…とは言わぬ。言わぬが、俺にすべての咎があるや否やは地獄の蠅群の如き詳細なる経緯を聞き、その後判断せよ」
「何かカッコいいじゃん」
その豪胆さに街の野次馬たちからホオッと感嘆のため息が漏れる。
ナサニエール・サラスは聴衆の空気が敵に傾きかけたことを敏感に悟り、大声でサボィーリを非難する。
「何と!この盗人が!図々しいにも、いわんや太太しいにもほどがある!」
続けて長女のマガンワも唇を歪めた。
「ろくでなし!馬鹿盗賊!○○お○○チンピラ!×××の△△△クソ!」
あまりの品の無さに傍聴席からうめき声が聞こえ、女達は顔を顰めて耳を塞いだ。
こういうのを逆効果と呼ぶことをマガンワはまだ知らぬ。
「黙るのだ、下品なマガンワ」
魔神ゴランが長女を睨み、彼の持つ天秤は若者にわずか傾きを替えた。
彼の天秤は理のある言い分を持つ側にその肩を落とす。
「サラスよ。お前の真実を話せ」
魔神の言葉に頷いてナサニエール・サラスが語り始める。
「そもそこな盗人、サボィーリが我が家に一夜の宿を求めたるは亀煙草の曜日、極楽鳥の時刻でございました。玄関先にて窮状を訴えるサボィーリを憐れんで馬小屋を貸したるは一生の痛恨事。膳と酒と芸で娘達がもてなすこと数刻。翌朝、金糸雀の時刻にこの男がひっそりと小屋より出でるところを馬丁が見つけ捕縛した次第でございます。その懐に我が家の財産である銀の皿が3枚。怒りに目がくらみ、牛の臓物が煮え滾るほどでする」
「お前の真実は聞いた。サラス」
わかりやすき罪状に天秤は大きく豪商の側に傾き、サラスの眼には少しばかりの安堵と安堵が浮かぶ。
ゴッと再度大きな炎を吐いたゴランが娘達を見回す。
「付け加えることはあるか。サラスの娘達よ」
すぐに長女マガンワが喚く。
「あの恥知らずはこともあろうに馬小屋で高貴で美しい私に言い寄りました。身分知らずにも程があります。盗み以外にも恥猿小耳崩しの罪をお与えください」
傍聴人達は(あの娘に言い寄るなど何と奇特な)と俯いて失笑したが、口には出さない。
間隙無く次女シランは海抜仏頂面から吐き出すように言い放った。
「フン。そんな汚い皿のことなど知らんもんだけど、深夜紫高原鳥の刻に酒を運んだら、嫌な目で私を見たわ。キモい。鬱陶しいこの盗賊に死を」
傍聴人達はこの顔で酒を持ってこられたら、そりゃ嫌な眼にもなるだろうさと若者に同情する。
最後に気絶していた末娘ブルーリが身体を起こすが、恐ろしさに魔神と眼を合わせられない。
「地下法廷がこんな恐ろしいところだとは。まだ動悸が収まりません。駝鳥崩れのあの男に死罪を」
それは事件とは関係ないだろと全員が思った。
それでも魔神の手にある天秤は商人一家の方に大きく傾く。
大兜率ゴランはサボィーリを睨んだ。
「お前の罪は明白だ。目玉をくりぬき、指を切り落とす。サボィーリ、裁きを受け入れよ」
「待て。俺の言い分は聞いてくれないのか。魔神よ。蓮花の谷の如く公正だと聞く大兜率ゴランよ」
サボィーリは落ち着いている。
同時に天秤が少しだけ持ち上がり、ゴランは頷く。
「サボィーリ、お前の側の真実を話すがいい。お前は銀の皿を盗んだのか」
ゴランの許しを受け、サボィーリは淡々と話し始める。
「まず、長女が膳を持って馬小屋にやって来た。固いパンと少しの肉が浮いた野菜のスープだ。銀の皿にのせられていた。『ほら、恵んでやるわ』とその皿が乱暴に俺の前に置かれた」
ゴランが首を傾げる。魔神にしては可愛げのあるその仕草に傍聴人に間に笑みが見える。
「『恵んでやるわ』か」
「そうだ。俺は聞き返した。『これはすべて俺がもらってもいいのか』と」
「ふむ」とゴランが続きを促す。
「娘は答えた。『父があの乞食に恵んでやれ、と言ったから持ってきたのよ。岩砕坊主の分際で私を口説こうとしているの?穢らわしいから話しかけないで、この海綿猿』と」
サボィーリが声色までなぞったため、傍聴人から笑い声が零れた。
魔神ゴランはそれを手で制する。
「静粛に。サラスの娘よ、被告であるサボィーリの言葉は真実であるか」
長女マガンワが声を震わせて叫ぶ。
「な、何よ。この甜麺醤!穢らわしい!××はめ××の○○○棒!」
その口汚さにまたしても傍聴席からはうめき声が聞こえる。
魔神は再びサボィーリに発言を促す。
「サボィーリ、他には」
「紫高原鳥の刻に次女が酒を持ってきた。やはりこの銀の皿にのせられてだ」
サボィーリがニヤリと笑って続ける。
「俺はまた訊いた。『これをもらっていいのか』と」
「ふむ。次女シラン、何と答えた」
ゴランの問いにシランは相も変わらぬ海抜仏頂面で言う。
「覚えてないわよ。知らんモン。牛鶏糞じゃないの。フン」
「俺は覚えている。その女は『ウエッ。キモッ。こっち見んな』と言った。それは俺の解釈では『どうぞお好きなように』だ」
サボィーリは次女シランの声色をもなぞり、再び法廷に失笑が溢れる。
次女シランが初めて顔色を変える。
「何それ。ウエッ。やめろっ!キモッ。こっち見んな」
まったく同じじゃん、と傍聴人の誰もが感じた。
魔神の手にある天秤は若者側にグングン傾いていく。
明らかに劣勢のナサニエール・サラス陣営。
最後に三女のブルーリが指名を受ける。
「三女ブルーリよ。供述をせよ」
「ひっ」
ゴランのひと睨みで娘は額に脂汗、口腔にアミラーゼが噴き出る。
「わ、私は…何も」
サボーリィは憐れむように娘を見る。
「魔神よ。この娘は少々頭が弱い。その晩最後に俺の前に来て、銀の皿を回し始めた」
「皿を回した?」
ゴランは一瞬停止し、それから三女ブルーリに説明を求める。
「何故?どうやって?いや、何だ?その皿を回すというのは」
ブルーリがぶるーりぶるーりと震えつつ、説明する。
「あ、あの大陸の東にあるという…そ、その小さな国の『サラマワシ』という…で、で、伝統芸能で、貴族にしか許されない、ホントはし、知らんけど。そ、それで、じゃじゃじゃ、邪を払い福を呼び、い、いつもより多めに回ってますなどと…ですから、あ、あの」
面倒になったゴランがそれを制止する。
「もうよい。黙れ」
「ひっ」
娘は青い顔で腰を抜かし、その場にへたりこんだ。
頭を抱えるはナサニエール・サラス。
聴衆がその様子に失笑する中、魔神は娘を睨みつけ命じる。
「いいから総括よ。サボィーリとは悪か善か、答えよ」
「ぜ、全然…」
(わからない)という続きを述べることなく、極度の緊張からブルーリが再度失神する。
「三女ブルーリは彼の若者が善であると」
兜率の持つ天秤は大きくサボィーリ側に傾いた。
傍聴人からやんやの喝采が上がるが、これは単に面白がっているだけだ。
ナサニエール・サラスは顔色を変えて抗議する。
「魔神よ。偉大なる兜率よ。あなたは盗まれた側より盗んだ側を正しいと裁かれる気か」
サボィーリは平然とサラスを睥睨した。
「だから誤解だと。俺は貰ったのだという証明をしただろう。聞いていなかったのか」
「裁きを下す」
魔神にして大兜率ゴランは地下法廷の中央でゴッと大きな炎を吐き出した。
「ナサニエール・サラス、お前は旅人に罪を着せ名誉を傷つけた」
「な、なんと」
蒼白たるサラス。
「そしてお前の娘達はどいつもこいつも出来損ないだ」
大兜率の言葉に群衆が拍手し、サラスは唖然と口をあけ、娘達が憤る。一人はまだ気絶していたが。
「長女の傲慢傲岸、次女の怠惰無礼、三女の怯懦海老萎。救いがたい」
「だがサボィーリ、お前は明らかに銀の皿を持ち逃げしようと企んだにも関わらず、言い逃れをした」
魔神がニヤニヤと笑っている若者に突然その舌鋒の刃を向ける。
「『まったくの事実無根ではない』とお前自身も言ったではないか」
サボィーリは悄然とする。
「んぐぐぐ」
さらにゴランは両手を広げ、天を仰いだ。
「俺の罪は…そこな可憐な娘達を怖がらせたことだ」
傍聴人達が意外な言葉に何事かと顔を見合わせる。
「可憐?どの娘のことだ?」
「あの娘達にくらぶれば、ナイル河に棲む汗をかいた黒河馬の方がまだ可愛い」
「あんなものと比べるのは河馬に失礼だ」
この場にいるもので非礼でない者はなし。死して屍拾うものなし。
そうこうするうちに魔神ゴランは右手の槍を消し、宙空から銀の皿を一枚取り出す。
「サラスよ。この銀の皿を加えると皿は何枚となる」
混乱するサラスが挙動不審に目を泳がせつつ答える。
「大兜率様、4枚でございます」
「そうだ。2枚をサラス、お前に返還し、残り2枚をサボィーリに与うることとする」
魔神ゴランの裁きに法廷は騒然とする。
「サラス、お前は銀の皿3枚のうち、2枚しか戻らず1枚の損害。サボィーリは手に入れたはずの3枚から減ってやはり1枚の損。俺はお前達に与えた銀の皿1枚の損、これで三方が同様平等に罰を受けたことになろう」
ゴランの説明にサラスが感激する。
「何と。賢くもお慈悲深い大兜率様のお裁き」
サボィーリも感心頻り。
「ふむ。うまいこと考えたものだ。まさに裁くは砂漠の銀狐の如き」
得意満面のゴラン、天秤をもつ手を上下させる。
「サラスの末娘が言う東の国…で思い出した。これを『ALL OK裁きで叡智と善の神』という」
サラスは胸をなで下ろす。このくらいの話で済んだのなら安いものだ。バザールの老婆が売る偽瑪瑙の首飾りくらいに安いものだ。だが油田の街で油断は禁物だ。
「だが、この件には報奨もあるのだ。サラスよ。サボィーリよ」
魔神が両者を交互に見た。
傍聴席がさらにざわついた。壁のランプがユラユラと揺れている。
サラスの娘達は三様の表情で父や魔神を見る。
長女は憎々しげに魔神を、次女は無関心な瞳でボンヤリと父親を、そしてまた起き上がった三女は意味もわからず周囲をキョロキョロと。
「ゴランよ。どういうことだ。俺に2枚の銀の皿を与えておいて、さらに何かの褒美をくれるとでもいうのか」
若者の言葉に応えて、魔神ゴランの『もうひとつの裁き』が始まる。
「銀の皿についての裁きは終わった。これからはお前達の魂を裁く」
ゴオオッと今までで最も大きく、そして禍々しいばかりの爆煙がゴランの口から吐き出された。
改めてここにいるのは人ではない。あくまで異界から遣わされた大兜率ゴランなのだと見物人達が静まりかえる。
「ナサニエール・サラスよ、お前は善意より旅人サボィーリに宿と食事を施した。奴隷の売買や暴利の金貸し、悪徳交易商であるお前としては上出来だ」
ゴランが槍の先をサラスの顔に向ける。サラスは背筋を伸ばして震え上がった。
「サボィーリ。お前は本来商家の家族郎党全てを殺害して強盗を行う予定であった筈が、サラスの善行から変心し皿を盗むに留めた」
ゴランの暴露にサラスが腰を抜かしてへたり込んだ。
サボィーリは黙って舌打ちをする。
「…それから、あの三姉妹をそれぞれ一応口説いたのは善行のうちである」
静まっていた場内がザワザワし、笑いを堪えるものも多い。三姉妹はゴランの魔術で口を塞がれているのか声が出ない。声は出ないが真っ赤な顔で何かの抗議をしている。
「そして…我はこのような愚かなもの達の裁きで時を使った。これも善行と言えよう」
最後にゴランが自らを『善行の者』といい、判決の刻を迎える。
「サラス、サボィーリ、そして我。それぞれの善行の報奨として…」
魔神ゴランが手にした鋲眼槍が大蛇のようにうねり、三つ叉が三姉妹をそれぞれ捕縛し持ち上げた。
まるで地中海の大鱧のようにピチピチと三匹の女が宙空で悶える。
「それぞれに娘を一人ずつ与える」
まず末娘のブルーリが父親サラスの元へ返された。
「お父様」
「何と。魔神ゴランよ。何故私から娘を取り上げる」
サラスの訴えにゴランが嗤う。
「こんな出来損ないはいない方がマシだ。法廷を侮辱したこの娘達は本来すべて魂を取り上げるべきだが、お前の善行に報いて一人返そう。一番まともだが一番商売に向いていない」
街の者達がコソコソと話す。
「これでサラスの商会も終わりだな」
「あれが跡継ぎではなあ」
サラスはガッ苦リと項垂れる。
「次女は俺が貰う」
言うやいなや、ゴランが次女シランを口にする。
「ギャッ!何すんのよ。や、やめなさい!やめてっ!い、嫌っ!ぎゃああ」
次女はあっという間にゴランの腹に呑み込まれる。
恐ろしさにまたも誰もが言葉を失った。
「ふふん。美味くはないが、不味くもない。怠惰というのは支那肉桂の味がするのだな」
ゴランはペロリと舌を出して、その青い唇を舐めた。
傍聴席から悲鳴と笑いの中間くらいの奇声が聞こえる。
「よ、よくあんなものを口に出来たものだ。さすが魔神だな」
「怠惰というのはシナモンだと」
「そういえば『シーナモン』と時折」
「最後にサボィーリ、お前には長女を与える」
「げっ、いらねえ」
サボィーリの拒否とは関係なく、槍の先端は若者の近くに向けられ長女マガンワが降ろされた。
「何よ、いらねえってどういうことよ。この鼻糞屏風岩。お××くされ○○○!」
場内はまたしても最上級の下品さに誰もが顔を顰めたが、サボィーリだけは別だ。
「ど、どういうことだ。そんなお前が可愛く見える。これは魔神の企みか」
「わけわかんないこと言ってんじゃないわよ。この馬鹿山猫!雪洞蒟蒻!ベラホーヤ××!」
「おおっ、いいぞ!もっと言ってくれ!何て可憐なんだ」
二人のやり取りに茫然とする傍聴席。
「何という」
「これはもしかして恐ろしい罰なのか」
「あの長女を嫁にせねばならぬとは」
「だがサボィーリその人は幸せそうだ」
「恋という監獄の無期懲役刑だ」
「うまいことを」
「フハハハ。これにて閉廷する!」
魔神ゴランが地下法廷の天蓋に向かって上昇していく。
「おおおっ。何か珍味ではあったぞ。オホホホホホホホ」
何だか結局美味かったらしい。
「お父様、私はどうすれば」
「お前は何もしないでくれ。お前が何かをして上手くいく気がしない」
「そんな。お父様、私は頑張りますわ」
「頼む。やる気を出さないでくれ」
涙で頬を濡らすナサニエール・サラス、あまりの落胆に意識が薄れ、妙な声を出して気を失う。
「オホホホホホホ」
「この○○○の亀×××!しっ○○で××崩し!」
「ああっ、もっと!もっと!」
「何喜んでんのよ!気持ち悪い!×××返しの○○○っし!」
「オホホホホホホホホホホホホ」
昇天するサボィーリは本来こういう性癖だったのか、それとも大兜率の魔法の影響か。
三者三様の昇天ぶり、傍聴人達は奇妙で不思議な一幕を見た満足感で帰路につく。
こうして砂漠と魔法の国の大法廷はゆっくりと閉じた。
その結末はあたかも滋味麒麟の蒙昧黄梅であったとかなかったとか。
はあ 田紳有楽 田紳有楽
ドンガラガッシャン シャンシャン ドン
読んでいただきありがとうございました。
オリエンタルな雰囲気を出したかったのですが、途中から意味不明になってしまいました。
いい加減に書き散らかしました。どうですか。