捕らわれた御使い様は
数多ある作品の中から選んでいただきありがとうございます。
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除けられなかったのだろう。赤と白の丸い何かを投げつけられたということはわかった。除けるつもりだったし、除けようとした。だがそれは思いの外速い速度だったのか、ゴンッという鈍い音と衝撃が頭に響いて……。
※※※※※
ここは、何処だ?薄暗い空間に大の字で寝ていた。『伸びていた』の方が正しいのか。あの発生したばかりの力の自我にこの僕がやられたというのか?忌々しい。
上半身を起こし周囲を見回す。薄暗い靄の中、微かにシーーーー、という耳鳴りがする程静かだ。…まぁ、あの投げつけられた赤と白の丸い何かの中に閉じ込められたといったところだろうが。
カチャッ。
何かが嵌まる音がした。何が始まるんだ?と立ち上がって身構えると、靄が俄に晴れていきそこには、
「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様!」」」」」
豪邸の玄関ロビーで見目麗しい青年達が、執事の装いで僕を出迎えた。……『お帰りなさいませ』だと?彼らは戸惑う僕に優しく労いの言葉を掛ける。
「お疲れ様でした」
「お仕事、大変でしたね」
「ゆっくりお過ごしくださいね」
「まずは湯浴みをなさってください」
「えっ?いや、これは一体」
戸惑いながらも導かれるままに浴室へと案内される。広めの脱衣所で案内人が白い短パン姿の三助へと変わる。この者達も見目麗しく、良い体つきをしている。
「失礼します」
と何をされるか認識する間も無く、僕はするすると服を脱がされて腰にタオルを巻いた状態になる。
「えっ?えっ?」
「さあ、こちらへどうぞ」
と洗い場へと通される。……大浴場だ。湯気で端の方は見えない。彼らは僕を小さな木の椅子に座らせて
「お背中、流します」
と爽やかな笑顔で告げると、三人がかりで泡の付いたタオルで僕の体の隅々を洗い始めた。あぁ~、強くもなく弱くもなく絶妙な力加減で、今までの垢のみならず、心の憂いまで綺麗さっぱりと洗い流されていくようで、なんとも気持ち良い……。
「では外で控えておりますので、何かありましたらしいお呼びくださいませ」
だだっ広い湯舟に一人残される。……一体何なのだろうこの扱いの良さは。いや、これが奴の策だと言うのであれば、ここで身も心も癒して万全の状態で復活するだけだ!
「おいっ!喉が渇いたぞ!」
湯舟に浸かったまま命令してみる。
「はい、ただいまお持ちいたします」
直ぐに冷たい水や果実水が用意される。
「酒は無いのか。まぁいい。お前達も入れ」
そして彼らと文字通り裸の付き合いをし、湯から上がった後も見目麗しい青年達を上半身裸で侍らせ、大きなベッドで何人もの手でマッサージをさせて……。
「そうそう……あぁ、なかなか良いぞ…はぁんっ」
今はベッドでお気に入りの一人にマッサージをさせている。少しくせっ毛のある茶色の長髪で焦げ茶色の瞳、この世界で最初に出会った力の自我を若返らせたらこんな感じか。まああれもかなりの美形ではあったからな。綺麗な顔が羞恥で歪むのは、そそるモノがある。
「…ぅんっ、……んぁっ…」
上気した頬に長い髪がはらりと落ちるのを払ってこちらに顔を向かせる。上目遣いの潤んだ瞳から今にも涙が溢れそうで、あぁ~~堪らんっ!
「では、そろそろ…」
体勢を変えて脚を開かせる。羞恥の所為か白い肌が赤く染まってなんとも艶っぽい。
「さぁ力を抜いて」
いざ!
※※※※※
薄暗い靄の中、四つん這いになっていた。
「…………ぇ……?」
何故僕は服を着ている?お気に入りは?ベッドは?……ここは何処だ?!
「見るに耐えなかったので、強制終了です」
男性とも女性とも受け取れるような耳辺りの良い落ち着いた声が、この状況を説明する。辺りは執事達が出迎える以前の薄暗い靄の中で、誰もいない。
「はあぁぁ~~?!強制終了だと?!ふざけるな!見るに耐えないだと?!見なきゃ良いだろうが!!さっさと戻せ!!」
「喚かないでくださいみっともない。貴方はご自身の立場を理解されていないのですか?」
僕は拳を握り締めたまま、固まる。…自身の立場、だと?
「この世界での管理を本体から一任されていたようですが、100年ほどほぼ放置状態で、私がどうにも出来なければ廃棄も已む無しといった状況ですが」
……姿は見えない。が、この声は。
「因みに本体は今までの所業が全て明るみに出て降格処分を受けてます。……連絡は取られていないのですか?」
なん…だと…?
「積極的に取っていたわけでは無いが、降格?嘘だろう?じゃあ、僕はどうなるんだ?」
「本来であれば次の担当者、つまり私に引き継ぎを行い、その後処分となるのでしょうが」
「処分?!冗談だろう?僕はこの世界を幸せで満たすという使命のために頑張ってきたのに」
「彼らが赴く迄はこの世界で幸せを感じていたのは貴方お一人だけでしたが」
「あ、当たり前だろう、僕が幸せで無くては他のモノがどうだろうと意味が無いだろう?」
……沈黙が場を支配する。どうだ!論破出来ないだろう!と僕は胸を張る。
「……貴方から引き継ぐモノは何もありませんのでこのままにしておこうかとも思いましたが、やはり本体と共に正式に裁かれた方が良いと判断しました」
「は?なんだ僕は何も悪いことなどしていないし、ここからも出ないぞ!」
僕は虚空に向かって主張する。
「この檻毎連れて行きます。これはなかなか良い品物ですね。しっかり捕獲出来て持ち運びが容易で、強制排出も可能だ。……これから出たときに貴方はどのような姿になっているのでしょうね」
姿は見えないのに、奴がニヤリと笑ったのが見えた気がした。
読了、ありがとうございます。
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あらすじにもありますが、作中で捕獲された『御使い様』のその後です。勢いで書いたらとんでもないことになったので途中で強制終了しました。
(R18認定・削除は嫌でおじゃる (+_+)。
表現として何処まで許せるのか、いつも自己規制との鬩ぎ合いです。
あ、興味をもたれた方はぜひ本編もご一読くださいませm(_ _)m