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白薔薇の君に捧ぐ  作者: 冬野ゆな
上巻:彼女の追憶
6/26

R-3 ヴァルハサール魔法学院への道のり

 あれから五年が経った。

 な、長かった。

 選択肢を忘れてしまいそうだったから、ぜんぶノートに書き出すとかもやった。でも案外、忘れていないものね。このノートは社外秘だわ。

 時々、前世のことを思い出す以外、生活にも特に支障は無かった。


 えーっと、結局魔法を見いだされたのは事故から三年後だったかな。

 インタビュー記事でプロデューサーの高橋さんがちょびっと語ってたことなんだけど、質問してくれた人は本当にグッジョブとしか言いようがない。

 えーっと確かこんな記事だった。


――――――――――――――――――――――――――――

記者:次の質問ですね。「ローゼリアは誰に魔法の才能を見いだされたんですか」と。

タカハシ:えっ。そんなとこまで気にします?(笑)あれは、多分お父さんかお母さんに見いだされたんじゃないでしょうか。

記者:案外、普通ですね。

タカハシ:ローゼリアは優しい子なので、おそらく怪我をした野生動物に、無意識に回復魔法を使ってたと思います。それをばっちり見られてしまったと。

記者:じゃあ、偶然からなんですね。

タカハシ:侍女とかにも使っていたとは思いますけど、最初のうちは魔法がうまく使えなくて、ものすごくゆっくり効いてたんですよ。なんかいつもより怪我の治りが早いな~みたいな。

――――――――――――――――――――――――――――


 うんうん、細かいところまでみんな覚えてる。

 ありがとう高橋さん。あなたの設定のおかげで真エンドまでいけそう。


 でも、魔法を使うのにも意外に苦労したなあ。

 ゲームだとあっさり魔法を使えるのに、自分が使うってなると、コツやきっかけっていうのが難しい。そりゃまあ、前世の感覚では覚えてないものだからね……。

 もしかして高橋さんの設定のせいだったりして。


 それと、この国のことを細部まで理解するのにも時間がかかった。

 ヴァイセローゼは推しゲーだから、苦労はしたけど楽しかった。インタビュー記事や雑誌でちょっと紹介された設定まで読み込んでおいて良かったぁ。

 ローゼリアのパパとママも見守ってくれてたし。

 私はあの時の事故で記憶が無い扱いになってるから、そのせいもあるかもしれないけど。


 怪我をした野生動物なんて、そもそもどこにいるのかわからないし。少し時間はかかったけど、三年目くらいで見つけられてラッキーだった。

 ピクニックに行った先の森の中で、召使いのジャックと、怪我をしたウサギを発見したのよね。彼は獣がいるかもしれないから離れようって言ったけど、こんなの見過ごすわけないでしょ!


「それより、ウサギさんをなんとかしないと」

「しかし」

「大丈夫。すぐに終わるから」


 私はニコッと笑った。

 ……笑えてるわよね?


 だ、大丈夫よ。ローゼリアはかわいいから。

 それからこの三年かけて開発した、最初の魔法――ヒーリングを使ってみせた。うまくいくかなあ、と思ったけど、意外に魔力がこもりすぎちゃって、ものすごい光になった。自分もまぶしかったけど、集中集中。

 ジャックは急いでローズパパを呼びに行った。

 よしよし、そのままローズパパを連れてきてね。ちょっと順番が前後したけどこれで大丈夫。ジャックに連れてこられたローズパパは呆然としてた。


「ろ、ローズ、その魔法は……」


 うろたえっぶりはちょっと面白くて、笑いそうだった。

 シナリオだとどれくらいの期間でばれたのかよくわからないけど、でもまあ及第点だと思う。だってとりあえずは、学校進学までの五年――手続きもあるから実際は四年くらいかな?――のあいだに力を見せれば良かったから。


 けど、ローズパパは意外な事を言い出した。


「ローズ。その力は人前で使ってはいけない。いいね」

「ええっ?どうして」

って、思わず素で聞いちゃった。

「とにかく、どうしてもだ」


 うわっ、パパの顔、怖っ。でもまあ、こんなものかな。

 確かにこの世界って、魔法学院に通ってようやく自分の魔力を制御できて形にできるって感じだし。優秀な人とか貴族の家柄だと、既に家庭教師を雇って魔法が使えるようになってる子もいる、っていう設定だったっけ。


 ああ、いるいる。そういうの。ラノベの学園モノで最初に出てくる嫌な奴。でもとにかくこれで上手くいった。

 トントン拍子で私はヴァルハサール魔法学院に通うことが決定した。

 まさかシナリオ外での事まで微調整する必要があるとは思わなかったけど。これでようやくヴァイセローゼのシナリオに入れるってもんよ!


 そういえば、この世界のことについてはだいぶ学んだけど、ヴァルハサールだけは後回しにしてたんだよね。

 学院だけ独立した地区にあるからっていうのもあるけど、このオープニングを再現したくて。


 モブ学生たちの中を歩くと、アーチ型の銀色に光り輝く正門が見えてきた。

 薔薇が巻き付いた形の正門が奥にぎぎぎ……と開かれて、そこにあるのはヴァルハサール


 あ~~!!

 ヴァイセローゼのオープニングで見た正門~~!!


 やっばい。口からなにか出かけちゃった。

 すっごい!!


「今更ながら、ヴァイセローゼの世界に転生したんだな~……」


 だってこの五年間、やってたことといえば、ひたすらこの世界について学び直すことだったからね。それからシナリオに向けて必要なことはぜんぶやってやったわよ!

 それもこれも、真エンドを迎えるため。


 そしてなにより……推しとお近づきになるためっ……!!


「ほあー。それにしても、すごいなあ……」


 思わずぽかーんとしちゃった。

 学校を見上げていると、とつぜん、きゃーっ、という黄色い悲鳴が聞こえてきた。


「えっ、なに? 攻略キャラの誰か?」


 思わず周囲を見回して探すと、不意に綺麗な金髪が視界に入った。


 あっ、と思った。

 なんで忘れてたんだろう。


 そうだ、この女も重要キャラの一人だった。

 真エンディングを目指すには、この女との交流も大事になってくる。


 主人公に突っかかって、真エンディングではライバル関係になる。もう一人の「赤き薔薇」。


 悪役令嬢、ミザリィ・L・ベスヴィオ!

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