アリステア(3)
初めての夏季休暇。
サルトン伯爵邸に帰省した私、アリステア・サルトンは毎日生まれてまだ一歳の弟を可愛がりまくって過ごした。ただレティシア様の麗しいお顔を見ることができないのが唯一の不満だったが。
ようやく夏季休暇も後半に入り、私は生徒会のメンバーと湖畔の町リドピレーに来ていた。
生徒会メンバーの結束を強め、後期の学園祭についての話し合いをする。という目的で毎年この時期に皆で旅行をするらしい。
この旅行で私も生徒会のほかの方々と話す機会が出来、それぞれの性格も少しわかってきた。今まではオスカー殿下と行動を共にすることが多かったので、ほかの方々と話をする機会があまりなかったのだ。
三年生のギルフォード・ラッセル様は伯爵家令息。この方は昨年卒業されたヒューゴ・カーティア前会長への愛が凄い。もちろんオスカー殿下も尊敬していらっしゃるが、ヒューゴ前会長について語りだすと止まらない。
反対にヒューゴ前会長にあまりいい思いを抱いていないのが同じく三年生のストランド・バルシェック公爵令息。二年生に妹がいらっしゃるこの方は殿下の側近を狙っていらっしゃることがまるわかりだ。
なので殿下の乳兄弟で側近決定だといわれているヒューゴ前会長が気に食わないのだと思う。
最近殿下とずっと行動を共にしている私もお気に召さないようだ。
同じく、殿下と行動を共にするのをお気に召さないのが二年のベルナール・ジュヴィル様。
ジュヴィル様は「同じ二年生の私がアリステアと行動を共にすべきであろう」とか「アリステアを本当に理解しているのは僕だけだ。困ったことがあったら僕を頼るといい」とか言ってくるが、殿下に逆らう勇気はないらしいので、殿下と行動を共にすることで離れていられるのはありがたい。
一年生のレオナール・キュイック様はよくわからない。
可愛いお顔をしていらしていつもニコニコと人当たりの良い方だ。
昨日の晩、殿下が
「明後日でこの旅行も終わりだ。学園祭に向けての話し合いも進み、一定の成果が得られたことと思う。明日は各自自由に過ごそうじゃないか」
と、おっしゃった。私はピーン!ときた。明日、殿下はレティシア様に会うに違いないと!
ずるい!殿下ばっかり。といっても殿下はレティシア様の婚約者なのだから当たり前なのだけど……
私はこっそりついていくことに決めた。せめて物陰からレティシア様を堪能したい。
次の日———
私は物陰からレティシア様を眺め、「湖畔に立つ美少女!なんて絵になるの~!」なんてひっそり楽しんでいたが、ついにレティシア様に見つかってしまった。
殿下がすっ飛んできて「なんでいるんだ!今すぐ帰れ!」と脅されたが、優しいレティシア様が「よろしければアリステア様もご一緒にどうですか?」と誘ってくださった。マジ天使。
殿下が事あるごとに「もう帰れ」とか「シアとのデートを邪魔するな」とかちょっとウザかったが、レティシア様と至福の時を過ごした。
殿下の何回目かの「帰れ」攻撃を聞き流していたらレティシア様のお友達の方々がいらしていた。私ともクラスメイトの方々だ。お話したことはまだないが。
なんと!羨ましいことにレティシア様のお屋敷に滞在しているらしい。私も行きたいとおねだりしてみたが、明日発つということで断られてしまった。
私は新たな目標を立てることにした。
〝いつかレティシア様のおうちに招待される!!〟
その後レティシア様は明日の支度があるということでお友達と帰って行かれた。
宿への道すがら私は気になったことを殿下に聞いてみた。
それは、レティシア様といるとき何で殿下はずっとあんな仏頂面をしているんだろうという疑問だ。
「シアはクールな男が好きなんだ」
「え?それにしても仏頂面過ぎませんか?」
「ぶっ……失礼な奴だな。仕方ないんだ。シアといると頬が緩んでしまって、すぐニヤケそうになってしまうから顔にいつもより力を入れているからな。
普段はしっかりクールだろう私は」
そりゃ、レティシア様以外は興味ないんだからほかの女の人達には素でクールだよね。
そうか、レティシア様はクール男子が好きなのか。
夏季休暇も終わり、私たちは学園に戻ってきた。
後期には学園祭が控えている為、私は準備に忙しい日々を過ごしていたが、最近、私の周りで不穏な出来事が続いている。
最初は中庭から校舎に入ろうとしたときに上から鉢植えが落ちてきたことだ。私のすぐ脇に落ちた鉢植えは地面に当たって砕け、破片で足を切ってしまった。
ジュヴィル様が身辺警護だといって常に私の傍に張り付いてしまった。かなりウザかったのでしばらく様子を見てからお断りをした。
そのすぐ後、誰かに背を押されて階段を落ちかけた。咄嗟に手摺をつかんで事なきを得たが。
そして頻繁に私物が無くなる。
ジュヴィル様はまた私に張り付き、そして奇妙な噂が立ち始めた。
レティシア様が、私と殿下の仲を嫉妬し、嫌がらせをしているというものだ。
馬鹿馬鹿しい。大体殿下とレティシア様の仲は順調だ。週に一度のランチも楽しかったと毎回惚気を聞かされている。最近、殿下は私に対し遠慮がない。私の前でだけは思い切りレティシア様愛を語る。私も負けてはいない。二人で思う存分レティシア様への愛を語り合うのだ。
レティシア様のことは疑っていないが、私が殿下の近くにいることは事実だ。生徒会に入っていることも面白くないと考える令嬢も多いと思う。殿下はとても人気が高い。でも、一見クールな表情や言動で、近づけない令嬢は多いのだ。
ここ最近の様々な事は、私を気に入らない令嬢の誰かが起こしているのだろうと考えていた。




