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ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第二章 冒険者"杭打ち"と夏休みの日々
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ギルドとの話し合いだよー

「というわけで超古代文明人のレリエさんですー」

「レリエでーっす! 年は数万と25歳、スリーサイズはないしょ! よろしくー!」

「待って待って待って待っておかしいおかしいおかしいおかしい」

 

 ギルドについてリリーさんを訪ねて、ちょっとギルド長も交えてお話がありますーって言って。そうしてギルド長室でベルアニーさんとその秘書さんも同席しての事情説明。

 こーゆーのはノリで押し切るものだって聞くから、レリエさんと息を合わせてテンポよく軽妙に喋ったところ、即座にリリーさんのツッコミを食らってしまった。

 ベルアニーさんは唖然としつつ頭を押さえている。なんでー?

 

「グンダリ……ジョークを飛ばせるほどの人間性を獲得してくれたことは素直に喜ばしいが、そういうのは時と場合を考えてくれるか? TPOをわきまえるのも常識の範疇だぞ」

「最近ようやく人間らしくなってきたからって、こんなことでジョークをかます僕じゃないって知ってるでしょギルド長ー。ましてこないだの今日で、そんな質悪いこと言うわけないじゃん」

「……………………本当、なんだな」

「正真正銘、地下86階のあの玄室にあった箱から出てきたお姫様だよー。僕も、正直ビックリしてるけどねー」

 

 肩をすくめる。僕が冗談を言ったわけではないと確信したようで、ギルド長の眉間にシワが寄っている。

 まあ、言いたくなる気持ちも分かるよー。こないだ古代人絡みで2回も立て続けに騒動が起きて、しかもその内の2回目ではSランク冒険者レベルの存在が3人ぶつかりあったからねー。


 特に僕とサクラさん、シミラ卿の激突ってのが実はかなり大事で、話を聞きつけた他所の地域や国のジャーナリストが連日このギルドに押しかけていたりするよー。

 酒盛りしてる冒険者達が口を滑らせてたりするみたいだし、早晩世界中にあの茶番が出回るだろうねー。僕こと冒険者"杭打ち"の存在や来歴、超古代文明からやって来た双子や女の人についてなんかは、かなりセンセーショナルだと思うよー。

 

 そんな騒動の中、さらに姿を見せた4人目の超古代文明人。

 レリエさんは申しわけなさそうに頬をかきつつ、ギルド長に答えた。

 

「ええと……すみません、ご迷惑をおかけします。どうやら私の同胞がすでに何人か、そちら様のお世話になっているようで」

「ああ、いやいや。こちらこそ不躾な発言を謝罪します、レリエさん。いかにも、あなたに先んじて3人、おそらくはご同輩かと思しき者達が当ギルドにて冒険者登録を行いましたが……なあに迷惑だなどととんでもない」


 レリエさんの言葉に紳士然として答えるギルド長。あからさまにカッコつけた振る舞いに、僕はおろかリリーさんも脇に控える秘書さんも白けた視線を向けている。

 この人、美人相手にはカッコつけたがるからねー。男なんてみんなそうだろって言われたらうんそうだよー? って答えちゃうけど、この人の場合はカッコつけ方が微妙にナルシストっぽいんだよー。


 今もホラ、角度つけて髪かきあげてちょっとワルっぽいオジサンぶろうとしてるー。渋いのは渋いけど毎回美女を見るなりそんなことするから、もうすっかり呆れられてるって気づいてほしいよー。

 ニヒルな笑みを浮かべてカッコつけギルド長は、いかにも大物っぽい余裕ある笑みを浮かべて続けた。


「3人のうち1人は今やこの国を出立していますが、残る双子のヤミくんとヒカリさんにつきましては、我々同様冒険者としての道を歩み始めています。利発で聡明、かつ愛らしい」

「ヤミ……ヒカリ……うっすら覚えがあります。コールドカプセルに入る直前に、少しだけ話をしたような覚えが……そうですか、元気にしているんですね。よかった」

「同じ年の頃、一切の感情を持たず可愛げの欠片もなかったどこぞの杭打ちに比べて、冒険者達から愛されるマスコットのようにさえなってくれていますよ。私にとっても、まるで孫のような存在に思えておりますとも」

「ぶち抜くよー?」

 

 何かにつけて当てつけてくるよー、腹立つよー!

 3年前の調査戦隊解散の件をどれだけ根に持ってるんだよー、めんどくさいよーこの爺さんー!

 あからさまに僕を見て微笑むギルド長。からかい半分で皮肉ってるのは前からのことだけど、レリエさんの前ではやらないでよーって感じー。


 別に僕も全然気にしてないし、いつもの軽口の応酬ではあるんだけどねー。レリエさん、意外そうに僕を見てるよー。

 というか、僕への発言についてリリーさんのほうが怒り出してる。ああ、虎の尾を踏んだねベルアニーさん。

 

「……ギルド長。ソウマくんの事情を御存知のはずですよね? それなのにそのようなことを仰るのは、彼の担当受付として聞き流せませんが」

「別に本気で言ってはおらんよ、リリーくん。私にとって、グンダリは冒険者として唯一対等に接せる相手だとさえ思っているのだ。このくらいの軽口はスキンシップとして聞き流してほしいね」

「その言葉、3年前のレイア・アールバドはじめレジェンダリーセブンの面々の前で言えます?」

「言えるわけ無いだろう、杭打ちを溺愛していた集団なのだよ? それこそTPOというやつだともさ」

 

 リリーさんに痛いところを突かれて、乾いた笑いを浮かべるギルド長。

 今はどうか知らないし下手しなくても憎まれてるだろうけど、当時は良くしてもらってたからね、レイア達には。僕への揶揄はジョークとして受け取られなかった可能性は、大いにあるよねー。

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