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ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第一章 冒険者"杭打ち"と新世界旅団
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トラブルだよー?

 地下に拵えた僕だけの秘密基地。そこに安置していた杭打ちくん3号を軽々と手に取って背負い、僕は早速地下道に出ることにした。

 基地には地上と行き来するための穴が一つと、地下道へ向かうための通路が一つきりある。どちらも僕が自力で作り上げた空間で、それぞれ創り上げるのに丸々一日がかりの、大変な作業だったのを思い出す。

 

 なんなら秘密基地に至っては広々した地下空間を形成するまでに一週間は費やしたからねー。例の教授とか知り合いっていうか、前いたパーティーの人も何人か駆り出しての、ほとんど工事みたいな様相だったよー。

 その結果近くにある地下道と直結する形に収まったことについてはみんな大喜びで、ぜひ探検させろと言ってくる始末だ。

 

 一応僕が内部の安全をある程度確保してからにしようって言ったことで、ひとまず落ち着いてはいるものの……早晩サクッと一通り調査しないと、我先にとここから愉快な人達が迷宮都市の地下道に侵入することになるんだろうなー。

 

「さて……」

 

 言いながら部屋を出て地下道へ。僕が大雑把に掘った道を歩くと数分して辿り着けるそこは、ひどく暗くてジメッとしていて、何より廃れている広い空間だ。

 虫だの蝙蝠だの鼠だのがわんさといるけど、迷宮攻略法の一つである威嚇を使って軒並み退避させると平穏な光景だ。水路だったと思しき中央のへこみに左右の歩道が、延々と続きつつ要所で枝分かれを繰り返している。

 

 まあ見ての通りでおそらく、旧下水道とかそんな感じの空間なんだろう。打ち捨てられた看板とかに、どことなくそれっぽいことも書いてあるし。

 この町もなんだかんだ数百年の歴史があるそうだからねー。基本的に迷宮のお陰で寂れたことはないにせよ、いろいろあってなかったこと扱いにしたものごとの数は多く、また証拠を隠滅した形跡もそれなりにある。

 

 この地下道なんてまんま、何かあった末に管理運営を放棄されてるっぽい感じだし。数年前の僕と同じだね、仲間ー。

 そこはかとなく仲間意識を持ちつつも僕は道なりに歩く。スラム内の井戸まではこれまたそんなに遠くはなくて、精々歩いて一時間程度のところにあった。

 

 空高くにうっすら、地上の光が差し込む狭い井戸の底に這い出る。狭いよー、この狭さだけはちょっと不満だー。杭打機がゴリゴリ行っててギリギリだよー、狭いー。

 うんざりするような井戸の中身。でも構わずに僕はそこから、まっすぐ上に飛んだ。単なるジャンプだけど迷宮攻略法の一つ、身体強化を使用しているため僕はまるで、バネ仕掛けのおもちゃのように勢いよく、一気に地上まで跳んだのだ!

 

「────!」

 

 本来水が出るはずのところから人が出てくる。なんともおかしな話だけど、すでに涸れ井戸だからね。多少の滑稽さは堪忍してほしいところだよー。

 一息に井戸から飛び出て地上に降り立つ。いつも通り、スラムの中でも一際廃れて人も大して寄り付かない正真正銘の廃墟だ。周辺の索敵も同時に行い、生き物がいないことも確認。

 

 ん、よし。

 無事に問題なく、自宅からスラムまでの移動完了ってわけだねー。

 ちなみに帰りもこの路を逆に進んで帰る。そうしないことには杭打機を秘密基地に戻せないし、何より正体がバレかねないし。多少面倒でも往復するのが、僕こと冒険者"杭打ち"の通勤退勤ルートであった。

 

「行くかぁ」

 

 一言呟いて僕は、スラムを後にしてギルドへと向かう。ここからだとそう遠くないところにある冒険者ギルドは、ぼちぼち日も暮れゆく夏の夕暮れともなると賑わってるんだろうなあ。

 こないだみたくまた、オーランドくん達と鉢合わせたりしなければいいんだけれどね。ああでも、もしかしたらサクラさんとまたお会いできるかも。

 運命かもしれない人だからねー。そのくらいの奇跡は期待してもいいのかもしれないねー。

 

 スラムを抜けて市街地へ。そしてそこから町の中央部近く、誰が見ても分かるように"冒険者ギルド"と銘打ってある大きな看板を掲げた施設を目指して進む。

 今日はなんの依頼があるかなー。また来ないかな、ゴールドドラゴンの討伐依頼とか。遂行しつつ、ついでにヤミくんとヒカリちゃんがいた地下86階層を再度、くまなく調査できるのにねー。

 

「……ん? なんかしてる?」

 

 と、ギルドに近付くにつれて様子がおかしくなっていってるのを感じる。空気がなんか、ピリついてる? 喧嘩かな?

 荒くれの多い冒険者達のお膝元でやらかすなんて、大したやんちゃさん達もいたもんだなと感心しちゃうよ。最悪ギルド長が出張ってきたら半殺しにされるのに、よくやるよー。

 

『──これは命令だっ! そちらの双子を寄越せ、冒険者ども!!』

『──うるせえっ! てめえらなんぞにこの子達を渡せるもんかよ!!』

 

 なんならそこそこ距離のあるここからでも、揉め事の様子が耳に入ってくる。けどー……なんか、聞き覚えのある声?

 なんか嫌な予感がする。双子を寄越せと要求する、冒険者じゃない人? それに抗う聞き覚えのある男の人の声?

 

 次の角を曲がれば冒険者ギルドだ。でもなんだろう、あんまり曲がりたくない。

 でも依頼も受けたいから仕方なし、大人しく角を曲がる。ことは冒険者ギルドの中で起きているようで中から怒声の応酬が聞こえてくるし、追い出されたのか大勢の冒険者達が屯している。

 

 何より、遠くからでも見えるギルドの中に、いたのは。

 

「レオンくん達……と、ヤミくんヒカリちゃん。それに、騎士団かぁ……」

 

 先日ご縁のあった少年少女新米冒険者パーティーの面々と、超古代文明の生き残りらしい双子の兄妹。

 そして彼らに相対するように並ぶ、エウリデ連合王国が誇る騎士団連中の姿だった。

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