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めちゃくちゃ拗ねるよー!

「ちょ、ちょっとゴメンだけどしばらくそれ触っていて! たぶん一時間くらいで十分に充電できるはずだから!」

「そんなー!?」


 ここまで来て僕だけ足止め、というか仕事持ち!? 一時間って結構長いよ、好奇心に支配された冒険者達ならその間に粗方調べ尽くすよー!?

 愕然としつつ、けれど頭は冷静に機器に触れ続ける。別段、僕の身体に何か異常があるわけでもないし、ましてや力を吸われていくなんて感覚とかも一切ないんだけど……


 とはいえ実際、僕が触れてる間だけはいろいろ塔の仕掛けがまた、動いているのは間違いない。なんならガラスに表示された絵が勝手に動いて、まるで何かを溜め込んでいくような表現をしてるし。

 エネルギーをチャージしてるんだろうねー。つまりはこれがいっぱいになるまでの間、僕はここにいなくちゃいけないってことだった。

 

「そしてこっちは再度システム再起動、っと! そしたら、ええと!」

『塔外周辺探査用サーチライト展開。半径100kmまでの地表を照射します』

「うおっまぶしっ!?」


 また動き出した機器に、すかさずレリエさんが手をつける。あちこちの画面を触ったり押したりしてるけど、何がなんだか分かんないやー。

 そもそも表示されてる文字とかも、この場で理解できるのはたぶんレリエさんかレイアかモニカ教授だけだろうし。


 もうどーにでもしてーって気分で眺めていると、いきなり機器から声がして塔の外がまばゆい光を放った!

 何、眩しいっ!? どうにか機器から手を離さずに目を閉じていると、レリエさんの声が周辺に響いた。


「塔の電灯──あたり一面を照らすライトをつけました! これなら」

「外が……地下世界が見られる!! みんな窓に!!」

「ちょっ!? あの! えっ!? 嘘でしょ置いてきぼり!?」


 どうやら今の、何かしらの操作によって塔の外につけられてるライト? ランタンだか蝋燭みたいな? 灯りをつけたみたいだ。

 これによって外の世界、すなわち真っ暗闇に隠されていた古代文明のあった地下の風景を一望できるかもしれないよー。


 さっそくとばかりに挙って、窓に駆け寄る冒険者達。くそーっ、僕も行きたいー!!

 でも今、この手を離したら明かりは消えるだろうし。それだと話が進まないよー。

 ああ、けど僕も古代文明を心の底からみたいよ、今すぐー!


 逸る心、焦る気持ち。

 冒険者としての魂の叫びを察してか、新世界旅団の面々だけはここに残って僕を慰めてくれる。

 ううっみんな! みんなだけは僕の味方だよー!


「ま、まあまあ。新世界旅団は傍にいますから……」

「言ってシアン、ウズウズしてるの隠せてないでござるけど」

「えっ!?」

「シアンさんー!?」


 まさかの裏切りだよー!? 見ればたしかにシアンさんソワソワしてる! みんなと一緒に窓の外を見たがってる!!

 サクラさんの指摘にあからさまに動揺して、団長は慌てて手を振り否定するけど──


「い、いえそんなこと──」

「う、うおおおおっ!? マジか、これが古代文明の跡! 本来あった世界の姿かぁっ!!」

「なんという……このようなものに出くわすとは、冒険者として一番の上がりだな」

「────こと、は。くうっ」

「悩んでるー!!」


 向こうで盛り上がってる人達をチラと見て悔しそうにしてる時点で説得力がないよー!!

 気持ちは分かるけど、今にもあっちに行っちゃいそうだものみんなして、僕を置いて! 僕だけここで健気になんかチャージっぽいことしてるのにー!


 なんだか悲しくなってきたよー……

 機器に手を置きながら僕は突っ伏した。そして恥も外聞も捨て置いて、全力で不貞腐れてやることにするー!

 

「ううっ、ううっ! いーよいーよどーせ僕なんか! 見てきたらいーじゃんみんなしてさ! ふーんだ!!」

「あっ、拗ねたでござる。あーあ、シアンのせいでござるー」

「あーあ。悪い団長もいたものだねぇー」

「ち、違っ! 私そんなつもりじゃ──ご、ごめんなさいソウマくん! 別にそういうつもりじゃなくて!」

「拗ねてないもーん! いいよ行ってきなよ僕なんか置いてさ、へーん!」


 いやまあ、実際にはめっちゃくちゃ拗ねてますけどねー!

 すっかりへそを曲げて駄々をこねる僕にシアンさんは慌てて宥めにかかり、サクラさんとモニカ教授はからかうように笑い声を上げ。


「あはは……もう。ソウマくんも程々にね? ごめんなさい、足止めしてしまって」


 そしてレリエさんは、全力で拗ね倒す僕の頭を優しく撫でながらも謝ってくるのだった。

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