表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
240/280

冒険前のスピーチだよー

 大迷宮の現時点での最奥部、開かずの扉を突破して一気に古代文明が眠る地下世界へと辿り着こうとする僕らの中には、当然というべきか冒険者ギルドの姿もあった。

 ギルド長ベルアニーさん。それと処刑からの解放後、ひとまずギルド預かりという形で身を寄せているシミラ卿だ。


 他にギルドから出向してきた冒険者はいない。完全に二人きりだ。

 煌めけよ光の面々も厳密に言えばギルドからの出向と言えなくもないんだけどー……彼らは古代文明人の双子の保護者枠ってことで別口なところがあるからねー。

 そんなわけで二人きりのギルド部隊だ。泉のほとり、ベルアニーさんが愚痴をこぼすのが聞こえた。


「ギルドからも精鋭を連れてきたかったが……いかんせん要求されるレベルが高すぎる。Sランク相当の冒険者なぞそうはいない」

「だからひとまずは私がギルドからの出向という扱いで来たのです、ベルアニー殿。あなたも含めた非戦闘員の警護はお任せいただきたい」


 今回、非戦闘員がいるからか余計に戦闘要員に求められている能力のハードルが高くなっているのは事実だよー。

 そんなだからギルドからだとどうしても人が少なくなっちゃったんだね。腕利きはみーんな調査戦隊に入ってた都合上、解散後はほぼ全員地元を離れたわけだし。


 とはいえ、臨時ながらシミラ卿が助力してくれてるんだからそれだけでも割と十分なんだよねー。彼女の実力は折り紙付きだもの、誰でも納得するよ。


「新世界旅団もどちらかと言うと警護される側でござるからねー。なんせ大迷宮深層ともなると、まともな戦力になるのってうちだとソウマ殿かギリギリ拙者かの2人でござるからー」

「そうなる……スマンが頼むぞシミラ卿、ジンダイ」


 サクラさんの言う通り、新世界旅団もメンツ的にはベルアニーさんやレオンくん達ともども、身を守られながらことの成り行きを見届ける側だ。

 本来ならいないほうが安全なんだけど、そこはやはり身内に絡む話であったり、冒険者として永年の謎を解き明かすチャンスだったりするしで、せっかくの機会はどうあれ逃したくないってことだよねー。

 周囲を見回して、僕は各パーティを指折り数えてつぶやいた。

 

「レイアとウェルドナーさん、カインさんが連れてきた元調査戦隊メンバーと、僕達新世界旅団メンバー。それと煌めけよ光の面々に、ベルアニーさん」

「非戦闘員がちょっと多めだけどいけるよね? ソウくん、ウェルドナーおじさん」

「もちろんだよー」

「任せろ。一人でも犠牲が出るならこの冒険は失敗だ」


 レイアの言葉に二人、頷く。若干ギスってる僕とウェルドナーさんだけど、いざ冒険ともなれば個人的な感情は持ち込まない。

 ましてや今回はそれなりに護衛対象もいるんだ。彼の言うように、一人でも犠牲が出たらその時点でこの冒険は失敗と見るべきだろう。少なくともそのくらいの覚悟で臨むべきなんだ。


「ふふ、やはり新世界旅団に参加して正解だった……まさかこんな早くに大迷宮の真実に到達する機会を得られるなんてね」

「古代文明の跡地……どうなっているのかしら。いえ、数万年も経っているならすべてが風化しているとは当然、思うけれど」

「それに件の神、古代文明を滅ぼしたモノも気になるね。無限エネルギーとか言ってたけどまさか、今も活動中だったりするんだろうか? ふふふ、ワクワクが止まらないよ」

「……ゾッとしない話は止してよ、モニカ」


 意気込む僕の近くでモニカ教授とレリエさんが話し込む。やっぱり教授ってば知的好奇心の鬼だよ、すごく迫力のある笑顔を浮かべていろんな器具やノート、筆記具を詰め込んだリュックを背負ってるもの。

 レリエさんもそれには苦笑いしつつ、けれど神の話題となると身を強張らせている。古代文明、すなわち元いた故郷や世界を滅ぼした化物だもの、トラウマなんだろう。


 今回の冒険の目的には当然、その神の現状を把握しにいくことも含まれている。

 万一にもまだ生きてるってんなら、地下世界は絶対に誰の手も入れられない禁止区域になることは確定だよー。さすがに数万年も生きてるような化物、相手にしてられないしねー。


 もっともレイアは何やら確証を得ているような素振りで余裕を見せているんだけど。何かあるのかな?

 僕の正体、すなわち古代文明人だってことについても現地で説明するって一点張りだし。何があるんだろうね、地下にはさ。

 

「────さて。それじゃあそろそろ出発だけど、その前に軽くスピーチなんてしちゃおっかな。主催者としてのある種の義務だしね」

 

 いろんな疑問、疑念、期待、不安。綯い交ぜになった希望ともつかない感情を胸にしつつも、声を上げたレイアを見据える。

 誰もが絆の英雄に視線をやる中、彼女はそして、この場にいる全員へとスピーチを始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ