表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/280

"罪の始まり"だよー

 エウリデ王国の大祖、初代国王の正体がレリエさん達と同じ、はるか眠りから目覚めていた古代文明人だった!

 ……いやーさすがのオカルト雑誌でもここまでの与太話は思いついてなかったよね。下手すると王権をも揺るがしかねない話だし、思いついていても検閲がかかってたろうけどー。


 そもそもさきほど今の国王、ラストシーン自身がなんかそんな感じのことを言ってたもんね、自分達は古代文明人の末裔だ的なこと。

 本人が言うあたり、むしろ王権の所在が王家に有りとするための根拠として捉えているみたいだけど……それでも一般国民には可能性さえ仄めかしたくない話だったのかもしれないね。


「…………コールドスリープ。私達よりもはるかに早く、エウリデ連合王国が出来上がるよりもずっと前にその者は偶然にも目覚めた、と。それもノウハウを持っていたあたり、おそらくは神の製造に直接関与した研究者ってところかしら」


 レリエさんが戦慄を顔に張り付かせつつも推測する。初代国王となったかつての同胞の身分を考えているみたいだよー。

 古代文明を滅ぼした、神についてのテクノロジーを今代に至るまでエウリデ王家に遺してきた初代国王。その正体はどう考えても古代文明において、神の製造に関与していた人だよねそりゃあ。

 レイアも同意するように頷き、自身の発見したところを語る。


「スタトシン・ペナルティ・エウリデ……などと文献には載っていますがね。古代文明においてコールドスリープに就いた者のリストにそんな者の名前はありませんでした。レリエさんやヤミくん、ヒカリちゃんの名前まであったのにです」

「つまりは偽名ってこと? 何から何まで嘘まみれじゃない、エウリデ……」

「おそらくは研究職だったろうこと、エウリデの歴史書に残る初代国王の来歴や年齢の伝説と照らし合わせることでようやく、それらしい候補が一人浮かび上がってきました」


 そこで一息置いて、レイアは僕らを見渡した。

 ここから告げられるのはきっと、この国の闇の原点。始発点ともいえる元凶の存在だ。


 悪意があったのか、あるいはないままに良かれと思って成したのか。そこはわからないけど……

 エウリデ王家に神の再現、そしてそれを用いた世界征服だなんて歪んだ野望を抱かせた初代国王の罪は、古代文明人であることも含めてかなり重いよ。とっくに滅んだ文明の、あってはならない技術や知識をわざわざ蘇らせようとしたわけだからね。


 1000年続く邪悪な野心を植え付けたその男の真の名前を、レイアは厳かに、そして険しい顔で告げるのだった。

 

「カネツグ・トキハ──ヒノモト人めいた名前ですが、おそらくはその男こそがスタトシン初代国王の正体。神を作り出した始まりの研究機関の、職員だった男です」

「ヒノモト人……!? まさか、拙者らヒノモトの祖とも関係が!?」

「あるかもしれませんね」


 サクラさんが驚きに目を見開く。まさか、ここに来てサクラさんやワカバ姉の出身国であるヒノモトさえも話に絡んでくるなんて!

 ただ、直接の関わりはなさそうだよー。精々がその、カネツグ・トキハとかいう男の故郷がヒノモトの元になった土地ってくらいかなー。


 ヒノモト自体がここから大分離れた位置にあるし、まさかヒノモトで目覚めてわざわざこっち来て建国したりしたのかな? ありえるの、そんなことー?

 イマイチ首を傾げるエウリデ建国周りについて、レイアは何か知ってるかな? と思って見てみるけどあまり確証はないようで、肩をすくめてトキハとかいう男とエウリデとの関係を軽く説明した。

 

「その男、トキハことスタトシンは今からおよそ1000年前、突如として歴史に姿を見せました。この地に当時存在していた13の部族のうち一つと手を組み、他の部族を次々に征服していったのです」

「知っています。エウリデ建国神話……スタトシン初代国王による奇跡の大征服。神話らしく神の力を借り受けたとも、天よりの導きがあったとも言われていますが」


 あー、そのへんは僕も聞いたことあるよ。

 なんでも初代国王は戦乱に荒れたこの地に現れ、一つの部族を従えて次々に他の部族を抑え、大地を平定させていったとかなんとか。

 そしてその際に神からもらった雷とか、天よりの恵みとして授かった武器とかを駆使したって言い伝えられてるそうな。 


「そのエピソードは実話をモチーフにしている、ということだろうな。神の力、天よりの導き。すなわちそれは、当て嵌めるのならば」

「古代文明から引き継いだ、スタトシン自身の知識と知恵、そして力……それを建国神話上における、天だの神だのの正体かもしれないわけですか」

「可能性に過ぎんがな。いずれにせよ、神の製法が継承されていた以上、古代文明ありきでの国家だったのは間違いあるまい」

 

 スタトシンが古代文明人だとすると、そうした神話を現実に即した表現で置き換えられなくもないってことだねー。

 実際のところがどうだったのかは誰にも分からないけど……これはこれで、ロマンがある話だよー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ