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世界の正体、だよ!

 自分達の産み出したモノに滅ぼされながらも、けれどその不完全性により種そのものの絶滅だけは辛うじて免れた古代文明人、ひいては人類。

 何から何までぜんぶ自業自得としか言いようがないんだけど、それでもその結果として今の僕らに続いたわけなので、不幸中の幸いっていうべきなのかなー?


「塔に避難した人達は、次いで準備を始めた。神の打倒法を模索した者、資料室を遺した人達のように後世の人類のために資料蒐集を試みた者。そして──」

「自分達を直接、神が潰えた後の時代に送り込んで再起を図ろうとした者達。私やそこの双子ちゃんはそのグループになるわね」


 資料室に集積された情報を解析したレイアと、古代文明人そのものであるレリエさんがそれから先の、塔に籠もってからの人類についてを話す。

 様々なアプローチが試みられたんだね。神の攻略法を探したり、後の世のために資料を残したり、あるいは直接自分達をはるかな未来に送り届けようとしたり。


 古代文明が果たすべき最後の責任であり、そして義務。人類を一度は致命的に近いレベルで衰退させてしまった罪を、どうにか未来への種を蒔く事で償おうとした、みたいな。

 そんな印象を受ける動きだよー。僕は思わずつぶやいた。


「希望……古代文明人にとっての。レイアが見つけた資料室や僕らが出会った人達は、それぞれがはるか昔に栄えた人達が、滅びに瀕してもなお足掻こうとして生まれた希望なんだね……」


 滅びに瀕した中で、それでも人類は諦めなかった。いつかの再興を夢見て、その時が来た時のために自分達にできること、残せるものを模索してきたんだ。


 きっかけが自分達のやらかしなのを含めて考えると、リカバリーお見事! って感じかな。

 いずれにせよ意味も価値もあったことは、レイアさんやレリエさん、ヤミくんヒカリちゃんが証明してくれているよ。

 僕の言葉に軽く微笑み、レリエさんが話を続ける。

 

「世界中に建てられた塔、そしてその塔同士を繋げる形で覆われた膜。それもまた、次代へ繋げるための希望の一つでした」

「と、いうと?」

「神がいる大地にはもう、人間達は戻れない。ならば新しく大地を作ってしまえば良い、と。空から降り注ぐものすべてを受け止めるその膜は、本当にすべてを受け止めました。雨も、埃も、大気中の成分も、地上から細々と持ち込んだ土や木々、そして生物達さえも。それらを増殖させる、装置まで込みでね」

「……なるほどな。そういうことだったか、迷宮の正体とは」


 古代文明のスーパーテクノロジーってやつでこの星を覆ってみせたという、各地の塔から放たれそれぞれに結びついた膜。

 それが後の世への希望の布石だったと聞いて、ベルアニーさんが一気にいろいろ勘付いたみたいだ。さっきからずいぶん察しが良いよねこの人、さすがは年の功ってとこかな。


 残念ながら彼以外、その膜とやらがどんな形で希望となったのかイマイチピンと来てないみたい。僕も同じく。

 そんなだから、一際素直に感情を表しがちなサクラさんがギルド長を称えるのも当然のことではあったよー。


「え。今の情報で分かったんでござるかギルド長殿。すげー、でござるー」

「にわかには信じがたいがな。アールバドよ、つまりはこういうことだろう」


 相変わらずダンディ気取っちゃってさあ、この人。若い美女に褒められて目元がピクピクしてるのはわかりきってるんだよ、今度奥さんにチクってやろー。

 と、まあそんなイタズラについてはともかくベルアニーさんはどこか、躊躇いがちに床を見た。いや、床というか大地? 遠いところを見る目をしてるから、はるかな地下をも見据えているように思える。


 そして彼は確認をした。自分の推測が正しいかどうか、すでに答えに辿り着いている者に。あるいは最初から知っている人に。

 古代文明の残した希望、塔と膜。その状態が今、明らかになるのだ。

 

「────今ある我々の立っているこの大地こそ、その膜の上に成り立っている新たなる土地だと。数万年もの時の中で少しずつ新天地と化した、ここは元々天空だったのだな?」

「御名答。いままで地続きの話だと思われていた古代文明の在り処ってね、結局私達からすればはるかな地下にあったんだ」


 息を呑む。今いる僕らのこの世界が、実は古代文明人によって元ある地上からはるか上空に作られた、人工の大地だったって言うの!?


 ……古代文明が今や地下に埋もれた存在だっていう説は元々、オカルト雑誌とかでも取り上げられていたからある程度は信憑性があるとは思っていたけど。

 にしたって、まさかそれどこじゃなくそもそも僕らの世界こそが天空に作られた土地だなんて、そんなの分かるもんかってんだよー!!

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