表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第三章 冒険者"杭打ち"と集う仲間達
204/280

3年ぶりに見る人だよー

 交渉が決裂に終わることは予め、織り込んだ上で半ば潜入するような形でエウリデ王城へと向かおうか、ということになり僕ら冒険者達は一旦、王都の門前にまで一気に距離を詰めた。

 武力による示威だ──これをもってそもそも交渉をしない、という選択肢をなくさせる。


 仮に交渉の場さえ持てない場合、僕ら冒険者に取れる手段はその時点で一つしかなくなる。そう、突っ込んで無理矢理ことを成す、だねー。

 さすがに最初の一手から、なんの交渉もなしにそれをやらかすと後から面倒事が噴出しそうだし。最低限"一応話はしたよー? 向こうが頑固で取り付く島もなかっただけでー"という体裁は整えとかないといけないってのが僕ら、新世界旅団と冒険者ギルド、そしてリューゼの戦慄の群狼との共通見解だった。


 なんだけどー……


「…………冒険者風情が陛下と、エウリデと交渉だと!? 思い上がるなクズどもが!!」


 ……とまあ、こんな調子でしてー。

 ベルアニーさんとシアンさん、あと新世界旅団の面々や冒険者の何人かを引き連れての交渉の提案を行いに出向いたところ、待ち構えていた騎士団の現状のトップだろう人からこんなことを言われてしまったよ。


 シミラ卿やマルチナ卿がいた頃にもいたメンツが見当たらない、というかめちゃくちゃ若い人達で構成されているあたり今の騎士団がどういう状況なのか人目で分かる気がするー。

 トップらしい金髪のイケメン以下、後ろに控える連中もあからさまに侮蔑的な表情を隠そうともしてないし。

 あちゃー、これはもしかしたら駄目かも知れないねー。


「そもそも交渉すらしないつもりっぽいよー……」

「現場の騎士共が勝手吹いてるだけ、のような気もしなくはないでござるが……」

「それをこちらが考慮してやる必要がないからねえ。彼らは現在進行系で自分達の首をギロチン台にかけようとしているわけだ。ある意味貴重な光景だよ、よく目に焼き付けといたほうがいいかも」

「下っ端の無能の現場判断によって一国が亡ぶ瞬間って? いやま、亡ばれても困るから精々捕縛して傀儡化するくらいだとは思うけどー」

「亡びてるか亡びてないかで言えば9割くらい亡びてるわよね、それ」


 新世界旅団の身内達でヒソヒソ話す。モニカ教授の毒舌が結構鋭さを帯びているけど、言いたくもなるよねこんなの、ガルシアさんが何百人といるような光景だものー。

 毒を吐く僕にレリエさんもツッコんでるけど割と疲れた感じだ。古代文明の人からしたら、こんなことってなかなかありえないんだろうなーって思うと、なんだか現代人として恥ずかしくなるよ。


 さておき、交渉に至るために会話を試みるベルアニーさんを見る。彼も割と辟易していると言うか、アホらしくてやってられなーいって感じがすごく出てるね。ご苦労さまー。

 それでも忍耐強く会話はしていかなきゃいけないんだから大変だよー。まあ彼も彼で、言葉の端々にイラツキを隠せてはいないんだけれども。


「我々冒険者はすでに王都を包囲している。号令一つあればすぐにでもこんな町一つ陥落してみせよう。それでもそのような戯言を抜かすかね、お坊ちゃん殿?」

「反逆者どもが調子づきおって……! 徒党を組んだからどうだというのだゴミどもが、今ここで始末してくれるわ!!」

「我々はエウリデ貴族だぞ! 刃向かうな逆らうな、大人しく殺されろ虫けら共がっ!!」


 うーん。あからさまに武力をもっての、ここまで来たらただの恫喝な気がしなくもないけど。それだけにベルアニーさんの言葉は本来ならば、自分の意志を通すための必殺級の威力を誇るはずなんだよー。

 それが一切通じてないっていうか、彼我の戦力差をまるで理解してなさそうなのがすごいよー。案の定だけど貴族のボンボンだけで固めたみたいだね、今の騎士団。これ、シミラ卿が見たら卒倒するかブチギレるかもだねー。

 

 にらみ合う僕らと彼ら。

 もはや衝突もやむなしかな? 向こうに何か隠し玉でもない限り、事実上エウリデは今日終わるねー、なんてことを考えた矢先。

 騎士団の後ろ、王都の内部から豪華な馬車が走ってきた。金ピカな装飾過多の、いかにもお偉いさんの乗る趣味の悪いデザインだ。


「なんだ、あの馬車! どなた様だ!?」

「あれは……閣下か!」


 馬車は戸惑う騎士団達のすぐ後ろに止まり、客車のドアが開いて中から人が出てくる。うっすら見覚えのある禿げたおじさんだ……誰だっけ?

 喉元まで出かかってるんだけど思い出せない、なんかやたら偉そうなその人は戸惑う騎士達に声をかけた。


「────我らが騎士団の誉れある騎士達よ。私は国王陛下の命によってここへ来た。諸君らの忠誠、大儀である」

「っ!! 大臣閣下!」

「我らが騎士達よ、ここは寛大なる姿勢を見せてやるのだ。そこな羽虫どもの囀りを、至尊なる国王陛下は耳で楽しみたいと仰せである」

 

 いかにも大物ぶってそんなことを言う。自称大臣さん──思い出した、3年前に僕に調査戦隊を出てけって言った人だ、この人!

 前はフサフサだったのに禿げてるもんだから気づくのが遅れたよー! っていうかわざわざ大臣が動いて、僕らを招きに来たってことかな?

 羽虫呼ばわりはイラッと来るけど、どうにか交渉の場は持てそうでよかったよー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ