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ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第三章 冒険者"杭打ち"と集う仲間達
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なんか軽いよー!?

 まさかまさかの再会。日に2度も、別々なレジェンダリーセブンと3年ぶりに会うとか今日はどうしたんだろう?

 運命とか、宿命とか? いやでも僕そういうのあんまり信じたくない派だしなー、とか考えながらも僕は久しぶりに会った友人──だった男──へと話しかけた。


「とりあえず家にあがりなよ。もう夜も更けてきたし、何か話すことがあるからここに来たんでしょ?」


 何はどうあれ、話はこんな所でやることじゃない。夜更けまで人の家の前で寝てた時点で大分アレだけど、まあカインさんは昔からそういうことも平然とやるからねー。

 恥をかくって感覚を何処かに落としてきたような人なんだよー。豪快さよりは繊細さんというか飄々としたイメージの人なんだけど、変なところで図太いんだねー。


 今だって僕の提案を受けて案の定、人懐こい笑みを浮かべてすっとぼけた感じを出してるし。


「応ともよ、邪魔させてもらうぜ! いやー昼間に訪ねたは良いがお前さんがおらんようで往生してな、待ってる間に寝ちまってたわ、ハハハハ!」

「いなさそうってなった時点で一回帰りなよー!」


 これだよー。普通に考えて家主不在ってなったら帰るもんだろうに、何を普通にその場で待ってあまつさえ寝こけるんだか。

 それもこの炎天下を夜になるまでずっとだ。彼もレジェンダリーセブンなら迷宮攻略法を身に着けてるわけで、命の心配とかはしてないんだけど……だからといって奇行に走らないでほしいねー。


 そんなこんなで彼を伴い家に帰宅。杭打ちくんは庭先に置いたよー、明日早朝、改めて秘密基地に戻しに行こう。

 家の中は真っ暗だけど問題ない、感覚強化で視界を確保する。通路と、リビングの燭台にそれぞれマッチで火をつければそれなりに明るくなった。大体暗くなったらもうお風呂入って寝るもんだけど、今日は来客があるからね。そうもいかないみたいだよー。


 カインさんを椅子に座らせ、僕はコップに水を注いで彼に手渡す。本当は東洋のお茶とか出したかったけどこの時間にそんな手間のかかることしたくない。ごめんねー。

 

「はい、粗茶だけど」

「ありがとよ……改めてだが久しぶりだな、我が友よ」

「久しぶり。未だに友と呼んでくれるんだね、この僕を」


 喉を潤すなり、僕を友と呼んでくる。カインさん……彼もまた、僕には思うところもあるだろうに。

 先日モニカ教授から聞いた、調査戦隊解散の顛末。カインさんこそはそのカリスマを用いてレイアに付き合いきれなくなった者達をまとめ、離反したらしいその人だ。


 …………そこについて僕から何か言うことはない。言えることがない。その資格がないし、今さら言う意味も薄い。逆ならともかくね。

 ただ、それでもこんな僕を友と言ってくれる。そこに対して嬉しさと、申しわけなさが込み上げてくるのは、これはもうどうしようもないことではある、よねー。


 にわかに俯く僕。後ろめたさがどうしても、彼と向き合うことを許してくれない。

 そんな姿を見るに見かねてかカインさんは大きく息を吐いた。そして呆れたように、でも優しい声色で語りかける。

 

「当たり前だろう? ……やはり気にしていたか。お前は優しい男だからな」

「優しくなくても気にするでしょー? 僕が、みんなの居場所を壊したも同然なんだし」


 あまり、胸中を吐露するなんてこと、したくはないけど。この人相手には別だよ、だって友達だもの。

 僕がみんなの居場所を、調査戦隊を壊した。エウリデとかミストルティンとかカインさんみたいな要因は他にもあったけど、まず一手目は僕だったんだ、間違いなく。


 そこについては何も弁明の余地がない。

 言われたほうがむしろホッとするくらいだ、正直ね。責められて当たり前のことを責められないのは、なんだか座りが悪いし。

 カインさんはそんな僕の気持ちを見抜いたように、軽く微笑んでみせつつも、けれど言った。


「違う、と他の連中なら言うだろうがそこは敢えて言おうか。そうだな、お前が大迷宮深層調査戦隊を壊した。エウリデ政府の卑劣な策もあったろうことは理解するが、それでも引き金を引いたのはお前だ、我が友」

「うん。そうだよね。どうあれ引き金は僕だった。僕の意志、僕の選択だった。何もかもとまでは正直思えないけど、それでも結構な割合が僕の責任だと思ってるよ」


 直球で言ってくれる、ありがたいね。

 未だに友と言ってくれる彼にこんなことを言わせる僕は悪いやつだけど、けれどどうしても感謝の念は絶えない。


 そう、ぜんぶ僕のせいとまではさすがに思わない。思わないけど、僕は何も悪くないと言うつもりもない。それだけの話だ。

 今さら何をしても手遅れだし、結局前を向くしかない、今できることをするしかないんだけれど。そこだけは誰かの言葉で確認したかったところはある。この期に及んで甘えたがりの、戯言だよね。


 苦笑いを零す。

 しかし、次の瞬間──僕はカインさんの言葉に、凍りつくこととなる。


「だがなあ、ソウマ。ソレがどうした?」

「…………え」

「それがどうした、と言っている。そんなことをこの3年、ずうっと引きずってきたのか、我が友よ」

 

 呆れたように笑う、僕の友達。

 なんか……思っていた以上に、軽いよー!?

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