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ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第三章 冒険者"杭打ち"と集う仲間達
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今後の方針だよー

 案の定っていうかなー! ガルシアさんを事実上放置して僕に解決させた腹黒ベルアニー爺さんをひと睨みして、それを笑って受け流されたのにこれまたイラッと来ているとレリエさんがため息を漏らすのが横目に見えた。

 なんだろ……どこか苦虫を噛み潰したような、複雑な表情をしてるよー。まさかお腹の調子でも悪くしたのかな?


 気になって彼女を見ると、顔色は至って健康的だけどやはりどこか元気がない。

 僕につられてシアンさんやサクラさんもレリエさんに目を向ける。それら視線に気がつくと彼女は明るく笑って、しかし声色は暗く答えるのだった。


「なんでもないの! ただ……ほんと、全体的には牧歌的なのに、局所的にとても怖いのよね当世って。そんなことをつい思っちゃって」

「ああー……なるほど」

「まあビビるでござるよねー。大丈夫でござるよレリエ、その感性は当世においても一般的なものでござるし」


 うーん、どうやらベルアニーさんによる過激な発言が、思ったより彼女を怖がらせていたみたいだよー。

 つまりギルド長が悪い! んだけど……正直冒険者の感性的にはまぁまぁ普通なところはあるんだよね。一般市民ならドン引きものだけど、冒険者の内輪でなら精々ブラックジョーク程度というかさ。


 この辺、古代文明においてもレリエさんが上等な教育を受けているんだなーって感じられて興味深いよー。

 お嬢様ってやつだね、お嬢様。立ち居振る舞いを見ればシアンさんにも負けないくらい洗練された仕草をしてるんだもん、古代文明ってこれが当たり前だったのかな? すごいよー。


 とまあ、感心しているけど気まずいのがベルアニーさんだ。

 事情を知ってる彼としては、古代文明人に自分が当世代表みたいに思われ、あまつさえ妙な評価を下されるのも嫌なんだろう。乾いた笑みを浮かべて、気持ち早口で釈明してきた。

 慌ててるねー。


「怖がらせたようですまんな、レリエ嬢。だがこれが冒険者どもを一応でも束ねる組織というものだ、思うところはあろうが納得はしていただきたい」

「……郷に入っては郷に従えと、かつての文明の一地方においてはそのような格言もあります。昔を押し付けるようなことはしませんよ、ギルド長さん」


 恥じ入るように笑いつつ、ギルド長にそう返すレリエさん。大人だよー……これまでの自分の物差しだけじゃ測れないから、新しい物差しを持とうとしてるんだね。

 これができない人って案外多いんだよー。たとえばリューゼなんかは典型的で、"物差しが合わない? だったらテメェらがオレ様の物差しを持つようにしやがれ!! "みたいなノリで生きてるからまあ衝突が多いのなんのって。


 それを思えばレリエさんのスタンスはすごく聡明で大人で素敵だよー。

 改めて惚れ直す思いでいると、ギルド長も感心した様子で穏やかに微笑んだ。偏屈爺さんらしからぬ、好好爺みたいな笑顔で気持ち悪いよー。


「ふむ? その格言こそは当世にも伝わっているが、あくまで民間伝承的なものだ。起源などについては知る由もなかったな──と、まあそんな話はいずれまた、お茶でも飲みながらさせていただきましょうか。レディとの語らいにはティーがつきもの、というのが私のポリシーでしてね」

「あらあら。素敵なポリシーですのね」


 そしてさりげなくレディをお茶に誘ってみせた!? 何この爺さん、いい歳こいて何を色気出してるんだよー!?

 ダンディに微笑むベルアニーさんは、悔しいけどかなりのイケオジって感じだ。このー、後で奥さんに言いつけてやるー。


 悪辣腹黒ダンディおじさんとして名を馳せる彼だけど、唯一自分の奥さんにはてんで弱っちくなるのを知っている僕は、絶対にチクってやろーって決意を胸に固く刻む。

 ちょっと背筋に寒気でも感じたのかブルッと震えた彼は、不思議そうに首を傾げつつも話を本筋に戻した。

 

「さて……それでは戦慄の群狼の2人には一旦、本隊と合流して情報の共有、周知を図ってもらおう。行動開始に間に合うようにパーティーを率いてくれ」

「任せなァー。本隊がこの町に着き次第、もっぺんテメェら呼びつけっからそのつもりでなァ」


 豪快に笑ってリューゼが吠えた。隣ではミシェルさんも神妙な顔をして頷いているね。対象的だよー。

 パーティー・戦慄の群狼。カミナソールのクーデターを成功に導いたとされる程に精強な連中だから、合流できれば心強い戦力になるのは間違いないね。


 ただ、だからこそパーティーを率いるリューゼに主導権を握られないようにしないとね。現状規模で負けてる新世界旅団は、せめて質の高さでイニシアチブを取っていかないと。

 シミラ卿をまんまと取られるのも嫌だからねー。


「了解した。次は新世界旅団についてだが……」

「基本的には我々はギルドと行動をともにします。少なくともエウリデ王城に到達するまでは」

「ふむ。そこから先、シミラ卿を救出するのは自己判断で動くつもりかな?」

「無論。彼女を勧誘し我々旅団の仲間に加えるのも、今回の新世界旅団の目的の一つですから」

 

 次いで新世界旅団はシアンさんに確認を取る。

 僕らの方針は一貫してるよー。ギルドとともにエウリデ王城を襲撃し、シミラ卿を助け出し、そしてあわよくば仲間に加える。

 なんら迷いない、団長以下全員の総意だねー。

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