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ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第三章 冒険者"杭打ち"と集う仲間達
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二手に分かれるよー

 門番さんから貴重なミシェルさんの情報を一発ゲットできた。さすが僕だねーってのは、ちょっと言い過ぎかも?

 どうやら彼女はリューゼの元に戻ったとかでなく、迷宮へと冒険に繰り出しているみたいだ。まあこの地は冒険者にとっての聖地、ここに来て迷宮に潜らなかったら冒険者としては別の意味でモグリだからねー。


 とはいえ今回の場合、僕らの状況的にはちょっぴりよろしくない。居場所は概ね絞り込めたものの、その絞り込んだ先の迷宮そのものが極めて大規模なんだ。

 人探しするのにこんなやりづらい場所もなかなかないよ、最悪地下1階から地下88階まで総ざらいすることさえ、選択肢としてはあり得るのだから。


「…………さて。迷宮ともなるとちょっと厄介だ」

「正門から、つまり地下一階から入っていると考えるべきか、ショートカットを使ってある程度深い地点から攻略開始しているか。迷うところでござるなあ」

「ミシェルさんはBランクだ。それに慣れないザンバーを使うのに慣れなきゃいけない修行中でもある。無茶なことはしないと思う……けど」


 ミシェルさんの実力、さらには慣れない武器を憧れだけでどうにか使っている現状を考えると、そこまで深い階層には戻っていないのは推測できる。

 この間、少しだけ手合わせした感じで言えば本来Bランクであるミシェルさんは槍使いとしての実力で、ザンバーを使ってる今では残念ながら二段階ほど実力が落ちていると言える。


 つまりはDランク相当の戦闘力しか持ってないんだよー。そこからある程度、潜っている階層については絞り込めるはずだねー。

 僕の話を聞いて、それならとレオンくんが提案した。

 

「よし! じゃあこうしようぜ杭打ち、ジンダイさん……俺達パーティーが正門から普通に入ってその、ミシェルさんだが言うのを探す。あんたらはショートカットで地下に行って、そこから上に登ってきてくれ」

「挟み撃ちの形でござるな。ちなみにレオン殿達は迷宮はどの程度まで潜れるのでござる?」

「あー……お恥ずかしながら9階層までね。迷宮攻略法が必要になってくる階層まであとわずかに届いてないって感じ」

「新人さんにしては攻略ペース早いね。むしろすごいよ」


 パーティー内にベテランがいるとかならともかく、なって間もない冒険者だけの集団なら短期間でそこまで行けるなんてむしろ大変なことだ。

 単純に戦闘やダンジョンの環境、ギルドの仕組みや各種依頼のこなし方なんかに慣れていかなきゃいけない段階でもう、迷宮攻略法がどうのって話に手をかけようとしている。


 紛れもなく才能がなければできない芸当だ。

 サクラさんも感心してしきりに頷いている。シアンさん以外にもすごいルーキーさんっているものなんだって、いかにも言いたげな顔をしてるねー。

 最初に目をかけた身としてどこか誇らしい気持ちで、僕は提案を受けてみんなに告げる。

 

「それじゃあレオンくんの案で行こう……Bランクが潜れる最深部はギリギリ40階ってところかな? そこから彼女を探しながら僕とサクラさんは上に上がる」

「気配感知も使いつつでござるし、まあそれなりに早いスピードで登っていけるかもでござるね。あ、レオン殿達は確実に捜索するでござるよ、せっかく潜るんでござるししっかり修練にも活かすといいでござる」

「そ、そっすか? なんかすみません、足引っ張っちまって」

「……気にしなくていい。くれぐれも怪我や事故のないようにだけ、気をつけて」

 

 足を引っ張るどころか、サクッと方針を決めてくれて助かってくらいだよー。実力なんて死にさえしなきゃ勝手につくんだし、そんなの二の次三の次でいいんだよー。

 申しわけなさそうに頭を下げるレオンくんパーティーは、そのまま手はず通りに迷宮の正門へと向かって歩いていく。ここからは二手に分かれての捜索だ、こっちも頑張らなくっちゃね!


 さてと僕らも歩き出す。町の外に広がる草原は穴だらけで、そのいずれもが大迷宮のいずれかの階層へのショートカットになっている。

 大体の出入り口に何階行きかの看板が立てられているからそれを頼りに、ミシェルさんがギリギリ潜れそうかなーってラインの階層への最短ルートを探すよー。

 道すがら、さっき見事な采配を披露してくれたレオンくんについて二人で話す。


「うーむ……シアン以外にも頼もしい新米はいるもんでござるなあ当たり前でござるが」

「でしょでしょー? 何しろ初対面からして豪胆だしね、なんせ好奇心だけで地下86階層まで降りちゃったんだしー」

「そもそもそんな地下までのショートカットがあること自体が驚きでござるよ……よく突っ込んだもんでござるな、そんなとこ」

 

 僕と初めて会った際の、完全に無鉄砲に迷宮最下到達階層までショートカットで突入しちゃってた彼らを思い返す。サクラさんの呆れは当然だよね、そりゃあ。

 冒険と無謀はもちろん異なる。だからレオンくんの無謀は改めるべきことではあるんだけれど……反面、そこからでもしっかり生き延びて還った運の良さはまさしく彼らの天性のものだ。


 運も実力の内と信じる僕からすると、それだけでも彼らを推せる理由になるよねー。

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