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ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第三章 冒険者"杭打ち"と集う仲間達
159/280

交渉の場を設けなきゃ、だよー

 エウリデの冒険者達も最近知ったような話を、どうやらずいぶんと前から知っていたらしいリューゼリアと"戦慄の群狼"。

 遠く離れたカミナソールにいてどうやってそんなことができたのか気になる僕に、モニカ教授が推測になるけど、と前置きして説明する。


「カミナソールの革命騒ぎに深入りしていた、あちらの国の英雄だからね、リューゼ嬢は。当然国ぐるみで付き合いもあるし、情報部から仕入れでもしたんだと思うよ」

「その辺は分からんし気にしても仕方ない。重要なのは、リューゼリアがシミラ卿処刑に激怒してカミナソールを出、エウリデに戻って来ようとしている点だ」

「すでに動いているんですね……正直私としては、処刑騒ぎがどのような形にせよ一段落した段階でくるかと思っていました」


 シアンさんが困惑しながらも言う。

 正直僕としても同感というか、普通に考えたらシミラ卿の処刑が行われる半月後までにエウリデに到着するなんてどう考えても無理だと思ってたから、まさか間に合いそうだなんて夢にも思わなかったよー。

 

 これって良いのか悪いのか……リューゼリアという戦力が対エウリデ戦線に加わるのはこの上なく頼もしいけど、反面あいつはあいつで暴走するからね。

 誰の言うことも聞かない、乱暴者モードになった場合あいつを止められるのはたぶん僕だけだ。最悪のケースは考えとかないといけないねー。

 ギルド長も同じ懸念を抱いているらしく、ため息混じりに机を指で叩き、難しい顔をして話す。

 

「レジェンダリーセブンの動きは私のような者には読めんよ……ともかくだ。彼女がおそらくは激怒して殴り込んでくるからには私はむしろ、エウリデと冒険者ギルドの関係調整を行うべき立場となった」

「ええと……それってその、リューゼリアさんという方がやりすぎてしまう、ということですか?」


 レリエさんの質問に彼は無言で頷いた。やっぱり、ギルドとしても感情のままに暴れ倒すリューゼのことは危惧してるんだよー。

 調査戦隊時代から彼女と、あとミストルティンの二人はしょっちゅう揉め事を起こしていた。引き起こす当事者だったこともあれば巻き込まれた末、なぜか当事者を差し置いて大暴れするケースだってあったんだ。


 当時を思い出してギルド長と顔を見合わせる。モニカ教授も苦笑してるけど、前線に出ない彼女だから苦笑いで済むんであって、僕やベルアニーさんからすれば笑い事じゃないよーって感じだ。

 二人、げんなりしつつも振り返る。


「他のメンバーはともかく彼女とミストルティンはな、下手をすれば処刑阻止からそのまま国王の首まで刎ねにかかるぞ。さすがにそこまでするのはまずいのだが、激怒している以上はそんなことを一切気にするやつではあるまい」

「ありえますねー。身内の危機にはミストルティンと並んでやりすぎる、そんなやつでしたしー」

「普段は多少ながら後先を考えられる質ではあろうが、親友とも言うべきシミラ卿が狙われては後先も考えまい。下手をすればエウリデの国体が終わる」


 個人によって国そのものが終わる、だなんて大袈裟に思われるかもだけど事実だ。レジェンダリーセブンはそれぞれ、単騎で国を落としてしまえるだけの力があるんだから。

 ましてや七人の中でも上位の方に位置するリューゼだ、マジでシミラ卿解放にとどまらずエウリデの貴族という貴族を、王族という王族をどさくさ紛れに始末していったって不思議じゃない。


 僕らの真剣さが伝わってか、亡国の気配を感じ取り一同の表情が変わる。

 下手すると今いるこの国がなくなりかねないんだ。いくら僕ら冒険者が常に権力に中指立ててるアウトローの集まりであったとしても、社会基盤の崩壊まではさすがに望んじゃいない。


 事態の深刻さに、より真剣味を帯びるシアンさんの顔つき。

 貴族として国を想い、冒険者として国に逆らう。矛盾した立場にいる彼女にけれど、ベルアニーさんはニヤリと笑った。

 今は彼女のような人物こそが必要なのだとつぶやき、そして語る。

 

「半月後に行われる処刑にタイミングを合わせて"戦慄の群狼"本隊が殴り込みに来るのは容易に想像できる。それまでにこちらのほうで連中にも足並みを揃えるよう、話をつけておきたいが……」

「この町に来ているという斥候役の方と接触する必要がありますね。幸い、ソウマくんがすでに知り合いらしいのでそこは我々が受け持ちましょう」

「頼む。カミナソールからくる場合確実に海路を使いトルア・クルアへ至るはずなので、最悪そこに使者を立てるが……ソウマを間に立てたほうが彼女相手には有効だろう」

 

 何はともあれリューゼリアと交渉しなければならない。その一点で新世界旅団と冒険者ギルドの見解は一致した。

 となれば何を置いても"戦慄の群狼"の斥候としてこの町を訪れているミシェルさんを確保し、説得して協力してもらわないといけない。

 

 そう考えてひとまず僕らはミシェルさんを探すことにした。

 彼女を通してリューゼとやりとりし、最低限足並みを揃えるように説得するんだねー。

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