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ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第三章 冒険者"杭打ち"と集う仲間達
157/280

新世界旅団という希望、だよ

 緊張に強張りながらも、それでもギルド長ベルアニーさんに毅然と向き合う我らが新世界旅団団長、シアンさん。

 カリスマを放ちながらの宣言は歴戦の、そして老獪なるギルド長をして感嘆させるもののようだった。軽く吐息を一つして、それからジロリとパーティーの面々を一瞥してつぶやく。


「未だ登録もしていないパーティーでよくまあ吠えるものだ……ソウマ、それにサクラ殿にモニカ教授も、この新米冒険者には大言壮語を実現するだけの器があると?」

「あるよ」

「ないわけねーでござろ」

「あるんですよねえ、これが」

 

 Sランク冒険者一人と天才教授、あとついでに僕が3人揃ってシアンさんを肯定する。紛れもなくうちの団長は大器だよー、少なくとも大器になり得る可能性にあふれている。

 放つカリスマもそうだけど、何より自身の野望、野心に対してストレートに挑む姿勢が素晴らしい。貴族であること、冒険者であること……僕にかつて助けられたことまで含めてすべて活かして前に進もうとしている。


 それは間違いなく素敵なことだ。少なくとも冒険者界隈においては、それもまた一つの冒険として見ることができるだろうねー。

 新米で、未熟で、まだまだ課題の多い人だけど。カリスマも威厳もあり、何より未知へ向かおうとする情熱が、ロマンを求める心が誰よりも強い。

 僕にせよサクラさんにせよモニカ教授にせよ、そこをまず一番に評価しているわけだよー。


「シアン・フォン・エーデルライトはまさしく英傑の素質を持っていますよベルアニーさん。強さと野心は言わずもがな、宿す力、カリスマは未だ萌芽でしかないものの、すでに私達との縁を手繰り寄せて掴み取るに至っている」

「切った張っただけが強さではござらん。人を動かし、ともに行こうとする力もまた強さでござろう? その点で言えば団長は底知れぬでござるよ。いつか本当に、誰をも連れてどこへも行ける大人物になるのでござろうなあ」

「モニカ……サクラ」


 新世界旅団の副団長とブレーンによる賞賛。特に師とも言えるサクラさんに大きな期待を寄せられていることについて、シアンさんが感動の面持ちを見せる。

 そうだ。シアンさんにはあるんだよ、そういう空気が。いつかやってくれるんじゃないか、僕らを引き連れて、世界のどこにだって行ってくれるんじゃないかって雰囲気が。


 未知なるものへの探究心の強さがそんな空気を醸しているのかもしれない。あるいは名だたる冒険者を輩出してきたエーデルライト家の、教育の賜物なのかもしれない。

 どちらにせよ"彼女となら、どこまでも未知を求めて進んでいける"なんて気持ちになれるんだ。レイアにも感じることのなかったものだよ、これは。

 僕からもベルアニーさんに話す。

 

「何よりね。僕はシアンさんに、冒険者の真髄を見たよ」

「ほう? 真髄だと」

「うん。未知を求め、道なき道を行く。冷たい風に晒されても、心に宿した炎は絶えることはない。僕がレイアに、調査戦隊に教わった冒険者の姿そのものなんだよ、うちの団長は」

「ソウマくん……!」


 新人ゆえの無知とか、世間知らずゆえの浅はかさだけじゃない。たしかに未知を求めて生きていく覚悟を秘めた情熱を、シアンさんは胸に強く抱いている。

 そうでもなきゃ新世界旅団なんて、プロジェクト"ニューワールド・ブリゲイド"なんて構想しないからね。


 かの計画こそは富より名声より栄誉より何よりも、未知を求めて止まないシアンさんの理想そのもの。

 今はまだまだ雛形どころか設計図段階だけれど、完成した暁には果てない夢を載せてどこまでも進んでくれるだろう希望の帆船。


 それを数多の縁を用いて実現させようと奮闘するシアン団長は、きっと冒険者としてはレイアとは似ても似つかないんだろう。

 でも僕は、そこにたしかにレイアと同じ、いやそれ以上のものを見たんだ。

 

「"絆の英雄"とは違う。どこまでも仲間を、絆を最優先にしていた彼女と異なり団長はどこまでも未知を、冒険を求めている。その姿勢こそが調査戦隊に足りなかったもの。レイアが失敗した理由でもあるんだろうって思う」

「……なるほど」

「調査戦隊を乗り越えて冒険者達が次に進むためには、新世界旅団が必要なんだ。いつか必ず、"灯火の英雄"となるだろうシアンさんがね。だから僕は彼女の力になる。今回は他の誰でもない、僕だけの選択だよ」


 レイアを。絆を大切にしようとしてどうにもならなくなった彼女を──そういう風に僕が追い詰めてしまったところも少なからずある──さえ超えて、シアンさんはそこに辿り着くと確信している。

 絆をつなげるだけでなく、繋げた絆を未来へと続けていくための灯火。

 

 大迷宮深層調査戦隊が示したものをさらに先へと進める偉業とは、新世界旅団こそが成し遂げられる。冒険者達を行く先を照らす、篝火になれるはずだ。

 他の誰でもなく僕自身がそう信じているんだ。3年前とは違い完全に僕自身の意志で。シアンさんとサクラさん、そしてそこに集う仲間達ならきっと未知なる新世界へ行けるって。

 だから僕も、新世界旅団で頑張るんだよ。

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