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ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第三章 冒険者"杭打ち"と集う仲間達
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冒険者達もカンカンだよー

 今後の方針は大まかながら決まった。さしあたってはギルド長に面会して、シミラ卿処刑についてどこまで情報を掴んでいるのかの確認、そしてギルドはどう動くのかの思惑まで含めて共有し交渉する必要があるねー。

 そんなわけでさっそく次の日の朝、僕ら新世界旅団メンバーはギルドを訪れていた。施設に入るや否や、酒場で呑んでいる冒険者連中が僕を見て叫ぶ。


「おい、杭打ち! 聞いたかやべーぞ、お嬢が消される!!」

「エウリデのやつら、ついにトチ狂っちまいやがった!!」


 主に昔からの冒険者で、調査戦隊主催の宴会に参加したりもしていた人達だ。レイアは当時、ギルド施設内で所属関係なしによく酒宴を開いていたからねー。

 シミラ卿もそういうのによく参加して、メンバー以外の人とも交流してたから……だからこうしてお嬢なんて呼ばれて、親しみを獲得していたんだよー。


 彼らにとっても馴染み深いお嬢が、国の無茶苦茶なやり口で処刑されようとしている。どこからどう考えてもアウトだね、エウリデ。

 他の冒険者達もすっかり殺気立って、シミラ卿を助けよう、エウリデ王族貴族を潰そうって声が高らかにあげられていく。

 モニカ教授の睨んだ通り、冒険者達は蜂起するかもだよー。施設内を歩く傍ら、そんな確信を抱く。


「エウリデのやつら、もう我慢できねえ! お嬢みたいないい子を追い詰めて、苦しめて、そして最後には用済みだから消すなんざ認められるかってんだ!!」

「ふざけやがって王族貴族のボンボン共が、下手に出てたら図に乗りやがって!!」

「調査戦隊解散のツケを支払わせてやる!!」


 ずいぶんヒートアップしてるのも見受けられるよー。調査戦隊解散の件まで含めて、まとめてエウリデへの鬱憤を晴らすつもりの人さえいるねー。

 溜まりに溜まった憤りをこの際、上乗せしてキレているような人達も尻目に僕らは、ギルド施設のカウンターにまでやってきた。すぐさまギルド受付嬢のリリーさんが、僕相手ということで対応しにやってきてくれる。


「来てくれたのね、ありがとう……ええと皆様、事情はお分かりで?」

「シミラ卿が半月後、処刑されようとしているってところまでは。それ以外の細かいところを今日、ベルアニーさんと話しさせてもらいに来たんだよー」

「調査戦隊メンバーを複数人抱える新世界旅団として、ギルド長と交渉せねばならないこともまた、ありますので」


 シアンさんと並んでリリーさんに向き直り、今日ここに来た理由をざっくりながら伝える。シミラ卿が処刑されるらしいってところ以外、ほぼほぼ情報がないからね、僕達はー。

 ギルドの動きとかも教授の推測を聞くばかりで、実際のところが分からなかったし。そうなると今回どう動くのも読みづらいわけなので、その辺の打ち合わせやすり合わせも今回、したかったってのも本音ではあるよー。


 リリーさんは僕らの言葉に頷き、すぐに手続きをしますと言って速やかに上階へと向かっていく。

 ことがことだけにいつにも増して早いねー。あるいはギルド長、こうなることを予期していたかな? 元が歴戦の古強者な人だから、長年の経験から僕らがやろうとしてることだって見抜いていてもおかしくはないのかもー。


 今さらちょっと緊張してきたのか、シアンさんが美しいお顔を憂いと不安に曇らせてきた。

 ギルド職員の帰還を待つまでの僅かな時間だけど、彼女はぽつり、小声で内心を吐露した。


「……少し緊張してきました。ギルド長との交渉に臨むなど、普通のパーティーの普通の冒険者であればなかなかする機会のないことですから」

「それは……そう、だねー。あの人、実績があるか可能性に溢れた冒険者とは積極的に絡んでいくんだけどねー」

「ま、よほど大物なパーティーくらいのものだろうね本来は。つまりはソウマくんやサクラ、私を抱え込む程の新世界旅団とあなたは、今でなくともゆくゆくは大物として成長するのだと見込まれていると言えるが」


 泣く子も黙るギルド長ベルアニーさんとの交渉が、まだまだ新人なシアンさんには不安なものなんだねー。気持ちは分かるよー。

 そもそも普通の冒険者には滅多なことで関わることのない人だ。何しろ実績がある人か今後に期待できる人ばかりを優遇する、これはこれでクセの強い人だからね。

 普通の括りに入ってる人には見向きもしない、なんて悪癖があるんだよー。


 つまりは今から行う彼との交渉は、新世界旅団というパーティーとその団長、シアン・フォン・エーデルライトの品定めの色合いも含まれているね。

 ここで彼に対して自分達の価値を示せないようでは先が思いやられると、そういう話し合いの場でもあるわけだった。


「ギルド長にまで登りつめた傑物の、眼力は本物でござろうなあ。あーあとシアン、おそらく交渉中、お主も何度かは試されるでござろうから気を抜いてはいかんでござるよ?」

「もちろんです。新人でも、いえ新人だからこそ舐められるわけにはいきません……!」

 

 サクラさんの忠告を受けてシアンさんが気合を迸らせる。放つカリスマの強さに、これなら大丈夫だと確信できるよ。

 やがてリリーさんが戻ってきて、ギルド長室へと案内しますと告げてきて。僕らはそれに従い、2階へと上がっていった。

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