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ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─  作者: てんたくろー
第二章 冒険者"杭打ち"と夏休みの日々
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貴族街だよー

 そんなこんなで次の日曜、僕ら新世界旅団メンバーは貴族街の入口に足を踏み入れていた。

 プロフェッサー・メルルークすなわちモニカ教授のお家に乗り込んで、冒険者"杭打ち"に関する誹謗中傷および流言の流布について詳しくお話を伺うんだ。

 無論、兄貴にあたるガルシアさんもだねー。

 

「へー、ここが貴族街でござるか。やっぱどことなく品があるでござるね。中身がどうかはさておくでござるが」

「中身が伴っているかはもちろん別の話ね、サクラ。残念ながら貴族と言っても、ピンからキリまであるものだから」

「そりゃー、エウリデなら特にそうでござろうよ」

 

 整然とした道に屋敷と庭園が並ぶ通り。見れば庭では質のいい服を着た一家がペットの犬と戯れたりして遊んでいる。

 言うまでもなく貴族って感じの光景だ。どこを切り取ってみても裕福さがありありと見て取れて、スラムどころか平民街と比べても天上界かな? ってくらいの歴然たる差があるねー。

 

 向こうの屋敷では大人数でバーベキューでもしてるみたいだけど、何人か執事とか衛兵っぽいのが門の前からこっちを見て警戒している。他の屋敷も似たようなもんだね。

 僕がここに来る度に毎回、こんな感じで極端に警戒してくるんだからなんていうか呆れちゃうよねー。別に悪事をしにきたわけじゃないのに、なんなら調査戦隊の頃からずーっと通ってるのにいつまで敵視してくるんだか。


 こういう露骨な視線なんかも、僕が貴族を嫌いになった遠因の一つと言えるかもしれないよー。

 サクラさんも大分、気分を害したみたいだ。朗らかながらも鋭い声と視線で、屋敷を守る連中を見て嗤う。

 

「おうおう、飼い犬どもが御主人様のために健気な牙を剥くでござるか。見上げた忠誠心でござるなぁ、ござござござござ」

「笑わないの……この国の貴族にとって冒険者らしい風体をしている者達は、もはやモンスターと大差ないのよ。いつでも反抗的な一大勢力の存在に、半ばヒステリック気味になっていると言ってもいいわね」

「身分格差による対立、か。数万年経ってもやっぱりあるわよね。知性体である限りはつきまとう、業のようなものなのかしら」

 

 シアンさんの説明に、レリエさんがボソリとつぶやく。古代文明でも似たようなこと、あったみたいだねー。


 ちなみに、なるほどヒステリックなのはその通りなんだけど……恐るべきは目の前の三人の美女と言うことなのかもしれない。

 国一番ってくらいの美貌を誇るおねーさん達がこうして一箇所に集まってるものだから、門番や護衛、執事や使用人から果ては貴族の男連中までもがチラチラこっちを見ていたりする。


 分かるよー気持ちは分かる。こればっかりは身分とか関係ないよねー。

 でも特に貴族の人、隣でパートナーの方がヤッバイ顔してるから気づいて反省したほうがいいよー。超こわいよー。


 女の人のヤキモチも、身分とか関係ないんだろうねー……と、マントと帽子の奥で背筋を凍らせつつも僕は先頭に立って貴族街を歩く。もちろん杭打ちくんは背負っている。

 教授のお家にごあんなーいってわけだねー。僕に続く美女3人が、相変わらず人目を引くのを感じながらも通りを抜けるよー。


 やがて通りの端に差し掛かったあたりに、ひときわ大きな邸宅が見えてきた。

 庭園というか運動場みたいな空き地と、その奥に控えるシンプルな屋敷。左右には小屋がいくつも建っていて、それぞれにいろいろ書いてある看板が立てかけられている。


 到着だー。僕は門をみんなに指し示して言った。


「……着いた。メルルーク邸はここだよ」

「ん……なんかずいぶんアレでござるな、華美さはないでござるが」

「奥の屋敷にメルルーク家の人達が暮らしてるってだけで、他の建物から敷地から全部研究のためのスペースだからね。研究所に見栄えは関係ないって考えてるから、教授は」

「なるほど。実用性を好む方なのですね……」

「マッドな気配が漂うわねー……」


 貴族街どころか、平民街でもスラム街でも異質だろう敷地内の様子に目を丸くする仲間達。レリエさんに至ってはモニカ教授にマッド疑惑をかけてるけれど、さすがにそこまではいかないよー。

 家族愛もしっかり持ってる大人の人で、ただちょっと、ちょっぴりだけ自分の好奇心に欲望が強いだけだねー。


 屋敷についても、この通りにある他の貴族の家と比べて大分質素というか、言っちゃうとみすぼらしさはあるって話は何年か前に僕自身、彼女に言った覚えはある。

 でもモニカ教授は、元々平民生まれの平民街育ちだったことを挙げて、身の丈に合った暮らしをしたいってことであえてこんな屋敷にしたんだそうだ。


 仕事場兼一家の住処と考えるとむしろこのくらいで十分だって、彼女の御両親さんも笑っていたからねー。仲のいいご家族みたいだし、なかなかマッドとまではいかないと思うよー。

 

「きっとみんなとも気が合って、仲良くなれたりするかもねー」

「それはいいわね、ぜひとも新世界旅団にご協力くださると助かるけれど」

「で、ござるなあ。ポスト調査戦隊を気取る以上は、単なる戦闘要員だけではとても足りんでござるし。あらゆる分野で有能な人員をどんどん、引き入れていくでござるよー」

「賑やかになると楽しそうでいいわねえ」

 

 新世界旅団のメンバーに、なんて声も上がってるね。僕もそれはいいアイデアだと思うよー。

 いつでも杭打ちくんのメンテがお願いできるなんて願ったり叶ったりだし、ぜひとも勧誘してほしいねー。

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