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覚醒

第二章の始まりとなります。

この章で異世界からどのように転生してくるのかを紐解きながら話を進める予定です。

私は覚えている。

忘れようもない。


私は今、婚約者である彼から婚約破棄を宣言されている。

彼の隣には忌まわしい令嬢が寄り添っており、その周囲には彼の取り巻きたちが私を睨みつけている。

今、私には誰も助けがない。

彼の父親である王は今は何者かに毒を盛られ死の淵を彷徨っている。


私は何も言えず、涙を流しながら屋敷へ戻った。

屋敷には王の代わりに政を司る父の疲れた姿があった。

私は父に今夜の事を話す。

父は驚きを隠せなかった。

なぜ、お前が傷つかねばならぬのだと。

私はただ涙を流すのみだった。

その時、私たちの身を脅かす者たちが現れたのだ。

外を見るとユリウス国の王旗があった。

私はその時、彼が私たち家族を殺そうとしているのを知った。

なぜ、たかが婚約破棄だけで我が一族を害しようとするのか。

私には到底理解できなかった。


私はあれを鮮明に覚えている。


彼は私との婚約を破棄した後、王不在の隙を突いて私の一族を襲った。

王族への不逞を働いたと叫びながら彼は私の目の前で父を殺すと今度はその刃を私に向けた。

私は彼の手で殺された。


目が覚めた時、私は生きていた。

いつものように侍女が私の起こしに来た。

この侍女も彼の手によって殺されていた。

だが、目の前にいる侍女は何事もなく私の世話を始める。

夢だったのかどうか私にはわからなかった。


それが現実だったと知ったのは学園に到着してからだった。

彼の隣にあの令嬢がいたのだ。


私は許せなかった。

なぜ彼が私だけでなく父や母たちに手をかけたのか。

私たちには何も罪はない。

目の前にいる彼とその令嬢は私の姿を確認すると私など眼中にないかの態度を取った。

多くの同級生たちがいる前で彼らは私を辱めようとする。

だから私は笑顔で応える。

私は心に誓う。

彼らの凶行から家族を守るのだ。


私の予想もしない行動に二人は戸惑いを見せた。

私は笑顔のまま教室ではなく教員室へ向かう。

そして担任である教員にしばらく休むと話をすると屋敷へ戻った。


今度は私から婚姻を破棄する。

それが私が考えた彼らへの抵抗だった。


だが、彼はなぜか婚約破棄を認めようとしなかった。

あの令嬢と婚姻できると言うのに。

父は王と掛け合ってくれているが、彼は何故かそんなつもりはないと答えるのみだったと言う。

件の令嬢のこともあれはあくまで親切心からのものであって決して私を辱めようとしたのではないと答えた。


果たしてそれは本当だろうか。

私には見え透いた嘘だとわかっている。

彼は何としても社交界の場で私との婚約破棄を宣言したいのだ。


私はその日より屋敷から出なかった。

急な病で休養をすることにしたのだ。

父は私の心に乱れがあるのではと心配していたが、私は至って正常だと答える。

私は知っている。

この後、どのような悲劇が起こるのかを。

私は止めなければならない。

そのためにも自らの身を守る術を考えなければならない。

選択は間違ってはいけない。


そう、私は彼に踊らされない。

私は負けない。

必ず家族を守る。


私は窓の外にある王城を見ながら心に誓った。

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