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手のひら彼女  作者: 吉川 由羅
8/17

いざ、決戦

その週の日曜日、俺は作戦を実行した。


作戦というのはこうだ。


①俺と美菜で家近くのショッピングモールへ買い物に出かける


②帰り道、写真が撮られた道をわざと通る


③美菜が首元で監視、怪しい人が現れ次第、俺にそれとなく知らせる


④現行犯逮捕!


・・・こんなにあっさり捕まえられるかわからないが、とにかくやってみよう。


さっそく①。これは美菜のわがままである。


「俺は要らないと思うけどな。」


「あら。雰囲気作りって、意外に大事なのよ。」


「お前が行きたいだけだろ・・・。」


俺はしぶしぶ、美菜とショッピングモールへ行った。


その日の正午。


「ねえ陽斗。私って、どうして私なんだろう。」


フードコートで、美菜が珍しく哲学的な質問を投げかけてきた。


「おいおい、急にどうした?」


俺は苦笑交じりで尋ねる。


「いや、今回の作戦を考えてるときに、ふと思ったの。私ってなんでこんな体なんだろう、って。」


「んー、言われてみれば。」


すっかり慣れてしまっていたが、よく考えるとこれは異常事態だ。小人の彼女て。


「昔から小さかったの?」


「ううん、分からない。」


美菜は頭を抱える。


そう、彼女は出生不明なのだ。付き合い始めた時も、気がついたら居た、みたいな感じだった。


「お父さんとお母さんは?覚えてる?」


「わからない。でも、声なら分かる。二人ともすごく優しい声だった。」


美菜はうっとりとした顔で、上を向いた。


その時、


『ブルルルルッ!!』


「「わあっ」」


機械の呼び出し音に、二人一緒に驚かされた。


こうやって長い間暮らしていると、驚くタイミングまで似てくる。


俺と美菜は顔を見合わせ、クスクスと笑った。



「じゃあ、そろそろ帰る?」


美菜が俺に提案する。俺は時計を見た。


「もう6時か。うん、そろそろ帰ろう。」


俺はちらりと美菜を見る。美菜は任せとけ、という感じで俺を見た。


さあ、決戦だ。


俺は写真を撮られた現場である細い道に、足を踏み入れた。


「ホントに現れんの?これ」


「しっ、黙ってろ。」


俺は何もないかのように、道を進む。


見えないが、美菜はしっかりと見張ってくれている(と願う)。


「陽斗、陽斗。」


「どうした?」


俺は小声で応対する。


「もう来た。」


「は。」


「背は普通ぐらい。髪が長くって、ワンピースを着てる。」


「そーか、思ってたより早いな。」


まだ3分も立っていない。俺は少し戸惑ったが、それでも進んだ。


「…!陽斗、犯人逃げた!」


「はああ!?」急展開すぎだろ!


俺はサッと振り返り、そいつを追った。


「おいっ!そこのお前!止まるんだ!」


警官のような言葉をいくつも発しながら、俺は無我夢中で追いかけた。



「はああ。」


「そんなに落ち込まないの。失敗は誰にでもあるんだから。」


家に帰ってから、俺は大きくなった美菜に励まされた。


何となく想像はついていると思うが、一応言う。取り逃がした。


「にしてもあの女、どうして逃げたんだろう。」


「分からない。視線を感じたんじゃない?」


「視線、ねえ。」


その時、俺の頭にある可能性が浮かんできた。あってほしくない、最悪の可能性。


「まさか、その犯人・・・」


「?」


「美菜の存在に、気が付いたとか?」


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