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手のひら彼女  作者: 吉川 由羅
7/17

疑惑

「な・・・。」


次の日の夕方、大量のテスト用紙を前に、俺は絶句していた。


これは、新入生が対象の学力調査テスト(数学)。一週間前に実施し、今ようやく採点が終わったところだ。


これは実力を試すテストだから、満点を狙う必要はない。


しかし森崎がただ一人、満点を取ったのだ。


「七瀬先生。森崎、理科の点数一位でしたよ。」


「こっちは満点取ってる。」


「ひえー。」


津田先生はわざとらしく悲鳴を上げた。


美形でリーダーシップもあり、おまけに天才。非の打ち所がないとは、まさにこのことだ。


「あ、そういや先生。」


すると津田先生が思い出したように言った。


「どうしました?」


「なんか最近、SNSで先生によく似た人の画像がアップされてたんですよ。」


「俺によく似た人?」


「はい。今スマホ持ってるんで、見せましょっか?」


「いい?」


俺は津田先生にお願いして、見せてもらうことにした。


俺のそっくりさんか。気になるな。


「これです。」


見せてもらった写真を見て、俺は固まった。


「これ、俺じゃん!」


「ええっ!?」


スマホに映った人物は、私服ではあるものの、間違いなく俺だった。


「何でだ?いつ撮られたんだろう。」


「女子生徒たちにどさくさに紛れて撮られたとか。」


「いや、この写真私服だから、学校じゃ撮れないよ。」


「んー、じゃあ、どうして?」


俺らは揃って首を傾げた。


「・・・これって、学校に伝えといた方がいいんじゃないですか。」


「ううん、いい。俺一人のことで学校を混乱させたくないから。」


「そうですかー?」


「うん。・・・内緒ですよ。」


「はい。」


津田先生はこう見えて口は堅い方だ。


俺はほっと息をつき、書類の整理を始めた。



「それにしてもさ。」


次の日の通勤中、小声で美菜が話しかけてきた。


「どうした?」


「昨日のこと。SNSの。」


「ああ。」


「あれさ、よくよく考えてみると、かなりマズくない?」


「うん。しかもあの写真、アングル的に隠し撮りみたいだし。」


「つまり誰かが陽斗を尾行して撮影したってことだよね。」


美菜が不安そうな表情で言う。


「ストーカー、だね。…でも、俺昨日考えたんだけど、もしかしたらそいつ現行犯逮捕できるかもしれない。」


「えっ、どういう事?」


「美菜、お前が俺の服のすそに隠れて、後ろを見張るんだ。小さいから、ばれやしない。」


「確かに。でも…、いったい犯人、誰なんだろうね。」


美菜がぼやく。俺は無言で下を向いた。


津田先生には否定したけど、あの女子生徒三人組の可能性が高い。休み時間が始まった途端、こっち来て色々質問されるし。


でも、そんなことは公には言えなかった。


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