表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
手のひら彼女  作者: 吉川 由羅
6/17

委員長

何だかんだあって、無事キャンプは終了した。


幸い、ハプニングがあれだけだったから助かった。


美菜もぐずること、少なかったし。


ただ・・・


「七瀬先生、起きてます?」


「ふえっ」


俺は慌てて我に返った。寝不足で、まだ瞼が重いのだ。登校日にもかかわらず。


起こしてくれたのは、頼れる委員長、森崎だった。


「ごめん森崎。キャンプで寝不足。」


「大丈夫ですか?良かったら、私が代わりに挨拶しときますよ。」


「ううん、大丈夫。」


俺は校門の前で、挨拶を続けた。



その日の昼休み。


「七瀬先生。その服のブランド何ですか?」


「ブランドじゃなくて、元が良いだけじゃない?」


「そうだよ。七瀬先生、素が素敵です。」


俺はいつものように、女子生徒に取り囲まれていた。


・・・あのー、美菜さん。首筋をそんな強く持たないでくれます?怒ってるのはわかるけど、それ100パー八つ当たりだから。


すると、


「七瀬先生。」


女子生徒の輪の外側から、森崎が尋ねて来た。


「あの、ここの問題教えて欲しいんですけど、今からいいですか。」


「ああ、いいよ。みんなごめん。」


「「「えーっ」」」


嘆く三人組を置いて、俺は自習スペースに向かった。



「ここがこう。で、ここはここを見たら分かるように・・・」


俺は長机に森崎と肩を並べ、問題を教えていた。


森崎は、成績優秀の優等生。そんな彼女が質問してくるのは、どれも難問ばかりだ。


ただ理解力があるため、説明はいつも一回でわかってくれる。


「・・・という感じかな。わかった?」


「はい。」


俺と森崎は立ち上がった。


「先生、ありがとうございます。」


「いいよいいよ。」


「…あと、先生。」


「ん?」


「無理、しちゃ駄目ですよ。」


「えっ」


俺が何か言おうとした時には、森崎は階段の奥に消えてしまっていた。


「ねえ、陽斗。」


「なに?」


「さっきの茜ちゃんの言葉、どういう意味?」


「んー、多分、女子たちのことだよ。対応に困っていると察して、わざとあのタイミングで質問をしてくれたんだと思う。」


「へー、だから『無理しちゃ駄目』。気が利くね。かっこいい!」


美菜は目をキラキラ輝かせて言った。



帰宅して大きくなった後も、美菜は森崎のことで一人盛り上がっていた。


「ねえ陽斗。見てみて」


「なに?」


「これ。茜ちゃん描いてみたの。本人に渡してくれない?」


「はあ?」


俺はフライパンを置いて、美菜の方を向いた。


「お前本気か?これを渡したら俺に彼女がいることバレルだろ?あと連れて来てることも」


「じゃあ陽斗が描いたってことにすればいいじゃん。」


「それもまずいって。変質者扱いされる未来が見えてる。無駄にうまいし」


「無駄は余計だッ!」


俺は美菜をなだめ、フライパンを持ち直した。


自炊歴は浅いが、最初よりはましな料理を作れるようになった。


俺は出来上がったハンバーグを、皿に盛った。


皆さんは、茜ちゃんのこと好きですか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ