真相
俺は母さんのベッドに近づいて、身をかがめた。
「やっぱり。」
俺は思わず言葉を漏らす。
そこには俺の予想通り、大量の書類が積んであった。俺が産まれた時の書類だ。
俺は、くるりと後ろを振り返る。
そこには、先ほど気絶させた美菜が横たわっている。
「美菜。」
俺は美菜に話しかけた。
「お前の正体、やっとわかったよ。」
次の日。
「あ、陽斗。おはよ…ちょ、ちょっと、どこいくの?」
「おい、陽斗!」
両親の声を無視して、俺は外に出た。
田舎の透き通った風が、俺を包み込む。
ただ、今はそんなことを考える余裕はないのだ。
俺は真っ直ぐ、畑の道を進んだ。
目的地は・・・近所の墓地。
「ずっと、気になってたんだ。」
俺は一つの墓石の前に座り込んだ。
「なあ、美菜。」
俺はすやすやと寝息を立てる美菜に話しかける。
「起きろ。」
「ん、んんん…」
美菜は目をこすりながら、俺の手のひらで目覚めた。
「こ、ここは?」
「お前は知らないだろうな。死んだ後にできたんだから」
「は?どういう事?」
「とぼけるな」
俺は美菜を睨み付けて言った。
「お前はもう死んだ、俺の双子の姉なんだろ?」
「・・・。」美菜は俺から目を逸らして、はーっと溜息をついた。
「はっきり言え。もう俺はわかっているんだ。」
「…ふうん、そういうこと。」
美菜は目を大きく見開く。美菜の綺麗な瞳が、みるみる赤く染まっていく。
「隠すつもりなんてないから言うわ。そう、私はあなたのおねーちゃん。そして、25年前に死んでいる。」
「やっぱり、そうだったのか。」
「どうしてわかったの。」
「あの手紙だよ。」
「ああ、あれ。」
美菜は別人のように、ふんと鼻を鳴らす。
「私は残念ながら見れなかったけど、どういう内容だったの?」
「それは美菜、お前についてだ。」
「・・・。」
「字体的に、母さんが書いたんだと思う。そこに、全てが書いてあった。」
俺は説明した。
「まず、母さんはお前の事を詳しく書いていた。」
「うん。」
「出産時に、なんの手違いかお前だけ死んだ。母さんは相当なショックを受けたらしい。」
「そう。ねえ、いま思ったんだけど、どうしてその手紙が若葉神社にあったの?母さんは神社が嫌いなんでしょう?」
「ああ、それについても書かれていた。母さん、出産日の1ヶ月前に若葉神社にお参りに行ったみたいなんだ。あそこは子孫繫栄の神社だから。」
「でも、私は死んだ。」
「そう。だから母さんは神社嫌いになった・・・ふりをした。」
「ふりをした?どういう事よ。」
「だって、そうじゃなきゃ神社にどうやって手紙を預けたんだ?」
「た、たしかに。子供にも近づけようとしない神社に自ら行くなんて、どう考えても不自然。じゃあ、どうしてふりをしたの?」
「俺たちが小さいうちに知りすぎてしまわないためだと、手紙には書いてあった。」
「そういうこと、だったのね。」
美菜は俯いた。
「さあ、次はお前の番だ。…姉ちゃん。」
「わかったわ。こうなったら仕方ないわね。」
美菜は顔を上げて、こちらを見た。
「私はね、出産の途中に死んだの。冥界側は想定外だったみたいで、今でいうバグが生じちゃったの。」
「バグ?」
「うん。本当はちゃんと手続きして、許可も得て、そして初めて生まれ変わることができるらしいんだけど、私の場合死んですぐ生まれ変わっちゃったみたいなの。」
「???」
頭がついていけない。生まれ変わりとか、そもそもあったんだ。
「は、はあ。」
「で、その生まれ変わりの際にもバグが生じちゃったらしく、こんな見た目になっちゃったの。」
「な、なるほど。」
詳しく説明しろと言われたらできないが、なんとなくは把握した。
俺は、じっと美菜を見つめた。
「姉ちゃん。」
「?」
「どうして、今まで黙ってたんだ?隠すつもりはなかったんだろ?」
「…そうよ。たまたま言うタイミングを失っちゃっただけ。」
「ほんとうに、そうなのか?」
「ええ、そう。もうちょっと早く言っておけばよかったわね。ごめんね、陽斗。」
美菜は優しく微笑んだ。
うーん。本当に、そうだろうか?
それにしては今の美菜、やけに動揺している。
長く暮らしていると、そういうことまでわかってしまう。
しかしそれだけを根拠に攻めても、かなり弱い。
どうしよう。
すると、
「やれやれ。そういうこと。」
はっとして振り返ると、そこには葉月が腰に手を当てて立っていた。
「なんか嫌な予感がすると思って来てみたら。」
「は、葉月。」
「大丈夫。大丈夫だよ陽斗。ね、おミヤちゃん。」
「・・・陽斗さん。」
葉月の背後から、おミヤがひょこっと顔を覗かせた。
「おミヤ。どうして。」
「私が頼んだ。一応専門家でしょう?」
「一応、巫女です。」
おミヤは葉月の前に出ると、じっと美菜を見つめた。
「・・・。」
「どう?」
「…残念ながら。」
おミヤは溜息混じりに言った。
「先ほどの美菜さんの言葉は、本心ではないようです。」
「は?」
美菜は目を大きく見開いた。
「なんで、そんなこと…」
「神が、そう仰っておりました。」
「神ぃ?なにゆってんのよ、あんた…」
「私は決して、ふざけてなんかいません。」
おミヤは、キッと美菜を睨み付けた。
今まで見たことのない表情だ。
その表情を変えず、おミヤは言った。
「貴方は・・・、陽斗さんに殺意を持っている。」




