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手のひら彼女  作者: 吉川 由羅
15/17

真相

俺は母さんのベッドに近づいて、身をかがめた。


「やっぱり。」


俺は思わず言葉を漏らす。


そこには俺の予想通り、大量の書類が積んであった。俺が産まれた時の書類だ。


俺は、くるりと後ろを振り返る。


そこには、先ほど気絶させた美菜が横たわっている。


「美菜。」


俺は美菜に話しかけた。


「お前の正体、やっとわかったよ。」



次の日。


「あ、陽斗。おはよ…ちょ、ちょっと、どこいくの?」


「おい、陽斗!」


両親の声を無視して、俺は外に出た。


田舎の透き通った風が、俺を包み込む。


ただ、今はそんなことを考える余裕はないのだ。


俺は真っ直ぐ、畑の道を進んだ。


目的地は・・・近所の墓地。


「ずっと、気になってたんだ。」


俺は一つの墓石の前に座り込んだ。


「なあ、美菜。」


俺はすやすやと寝息を立てる美菜に話しかける。


「起きろ。」


「ん、んんん…」


美菜は目をこすりながら、俺の手のひらで目覚めた。


「こ、ここは?」


「お前は知らないだろうな。死んだ後にできたんだから」


「は?どういう事?」


「とぼけるな」


俺は美菜を睨み付けて言った。



「お前はもう死んだ、俺の双子の姉なんだろ?」




「・・・。」美菜は俺から目を逸らして、はーっと溜息をついた。


「はっきり言え。もう俺はわかっているんだ。」


「…ふうん、そういうこと。」


美菜は目を大きく見開く。美菜の綺麗な瞳が、みるみる赤く染まっていく。


「隠すつもりなんてないから言うわ。そう、私はあなたのおねーちゃん。そして、25年前に死んでいる。」


「やっぱり、そうだったのか。」


「どうしてわかったの。」


「あの手紙だよ。」


「ああ、あれ。」


美菜は別人のように、ふんと鼻を鳴らす。


「私は残念ながら見れなかったけど、どういう内容だったの?」


「それは美菜、お前についてだ。」


「・・・。」


「字体的に、母さんが書いたんだと思う。そこに、全てが書いてあった。」


俺は説明した。


「まず、母さんはお前の事を詳しく書いていた。」


「うん。」


「出産時に、なんの手違いかお前だけ死んだ。母さんは相当なショックを受けたらしい。」


「そう。ねえ、いま思ったんだけど、どうしてその手紙が若葉神社にあったの?母さんは神社が嫌いなんでしょう?」


「ああ、それについても書かれていた。母さん、出産日の1ヶ月前に若葉神社にお参りに行ったみたいなんだ。あそこは子孫繫栄の神社だから。」


「でも、私は死んだ。」


「そう。だから母さんは神社嫌いになった・・・ふりをした。」


「ふりをした?どういう事よ。」


「だって、そうじゃなきゃ神社にどうやって手紙を預けたんだ?」


「た、たしかに。子供にも近づけようとしない神社に自ら行くなんて、どう考えても不自然。じゃあ、どうしてふりをしたの?」


「俺たちが小さいうちに知りすぎてしまわないためだと、手紙には書いてあった。」


「そういうこと、だったのね。」


美菜は俯いた。


「さあ、次はお前の番だ。…姉ちゃん。」


「わかったわ。こうなったら仕方ないわね。」


美菜は顔を上げて、こちらを見た。


「私はね、出産の途中に死んだの。冥界側は想定外だったみたいで、今でいうバグが生じちゃったの。」


「バグ?」


「うん。本当はちゃんと手続きして、許可も得て、そして初めて生まれ変わることができるらしいんだけど、私の場合死んですぐ生まれ変わっちゃったみたいなの。」


「???」


頭がついていけない。生まれ変わりとか、そもそもあったんだ。


「は、はあ。」


「で、その生まれ変わりの際にもバグが生じちゃったらしく、こんな見た目になっちゃったの。」


「な、なるほど。」


詳しく説明しろと言われたらできないが、なんとなくは把握した。


俺は、じっと美菜を見つめた。


「姉ちゃん。」


「?」


「どうして、今まで黙ってたんだ?隠すつもりはなかったんだろ?」


「…そうよ。たまたま言うタイミングを失っちゃっただけ。」


「ほんとうに、そうなのか?」


「ええ、そう。もうちょっと早く言っておけばよかったわね。ごめんね、陽斗。」


美菜は優しく微笑んだ。


うーん。本当に、そうだろうか?


それにしては今の美菜、やけに動揺している。


長く暮らしていると、そういうことまでわかってしまう。


しかしそれだけを根拠に攻めても、かなり弱い。


どうしよう。


すると、


「やれやれ。そういうこと。」


はっとして振り返ると、そこには葉月が腰に手を当てて立っていた。


「なんか嫌な予感がすると思って来てみたら。」


「は、葉月。」


「大丈夫。大丈夫だよ陽斗。ね、おミヤちゃん。」


「・・・陽斗さん。」


葉月の背後から、おミヤがひょこっと顔を覗かせた。


「おミヤ。どうして。」


「私が頼んだ。一応専門家でしょう?」


「一応、巫女です。」


おミヤは葉月の前に出ると、じっと美菜を見つめた。


「・・・。」


「どう?」


「…残念ながら。」


おミヤは溜息混じりに言った。


「先ほどの美菜さんの言葉は、本心ではないようです。」


「は?」


美菜は目を大きく見開いた。


「なんで、そんなこと…」


「神が、そう仰っておりました。」


「神ぃ?なにゆってんのよ、あんた…」


「私は決して、ふざけてなんかいません。」


おミヤは、キッと美菜を睨み付けた。


今まで見たことのない表情だ。


その表情を変えず、おミヤは言った。


「貴方は・・・、陽斗さんに殺意を持っている。」

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