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手のひら彼女  作者: 吉川 由羅
14/17

dear陽斗

「お久しぶりです。お元気でしたか?」


神社の境内を歩きながら、俺たちは思い出話に花を咲かせていた。


「ほんっと変わってないのね、おミヤちゃんて。」


「へっ!?」


「ほら、そういう無自覚で可愛いって思わせちゃうとことか。」


「そ、そんなこと…。」


おミヤはポッと顔を赤らめる。


確かに全然変わっていない。喋り口調も、仕草も、何ひとつ。


「あ、そうだ。陽斗さんって、今で何歳でしたっけ。」


「25歳だよ。」


「なら、渡さなきゃいけないものがあるんです。ここで待っててください。」


そう言うとおミヤは急に、本堂の方へ走っていった。


「どうしたんだろう。」


葉月が不思議そうに、走り去るおミヤを目で追いかける。


俺に渡さなきゃいけないもの、か。一体何だろう。


「すいませーん!」


やがておミヤは、一つの封筒を手に戻ってきた。


「なあに、その封筒。」


葉月が両手を出すと、おミヤはぶんぶんと首を振った。


「いくら葉月さんとはいえ、いけません。これは成人になった陽斗さんしか、読むことができないと、住職様が。」


「えー、そんなあ。」


葉月はふてくされて、ガックリと肩を落とした。


「そういえば、住職様はどうしたんだ?本堂にいるのか?」


「住職様は・・・。」


おミヤは俯いて言った。


「去年、肺炎で亡くなられました。」


「!!」


俺と葉月は揃って仰天した。まさか、ちょっと来ていない間にあの人が亡くなるとは。


「そして、亡くなる一週間前に、住職様にこれを託されたのです。」


「なるほど。」


そんなに重要な書類なのか。なにが書かれているのだろうか。


…おっとその前に。


「葉月、頼んだ。」


「?…ああ、オーケー。」


俺は葉月と肩をちょんとくっつけた。その一瞬で、美菜が葉月の肩に飛び移った。


何か感じ取ったのだろう。その時の美菜は、妙に素直だった。


「よし、っと。じゃあおミヤ。それ見せて。」


「???は、はい。」


疑問だらけのおミヤははっと我に返り、慌てて封筒を手渡した。


「どこか、一人になれる所は…」


「あ、あちらがぴったりです。」


おミヤに勧められ、俺はそこへ足を運んだ。


そこは、昔葉月と遊んだ空き地だった。


「・・・。」


俺は黙って、あたりを見回す。


隅にある電灯に、張り紙がしてあった。


『夏祭りin若葉神社 日時:20xx年8月10日 PM6:00~』


どうやら今年のものだ。この日ならまだいるだろうし、行ってみるか。


俺は、その電灯にもたれかかって座った。


ビリ、っと封筒を破く。不器用なために、全くうまくいかない。


何とか開封すると、そこには三つ折りの便箋が入っていた。


俺は心臓をばくつかせながら、それを開く。


そこに書かれていたのは-------



「ただいま。」


その日の夕方、俺はもやもやとした気持ちで帰宅した。


「お帰り。どうだった?」


母さんが優しい口調で尋ねてくる。


しかし、俺はそれを無視した。


「陽斗?」


不思議そうな顔をする母さんを背に、俺は二階に上がった。


そんな質問に、答えてる暇などない。


俺は、まっすぐに母さんの部屋に入った。


「陽斗?」


「どうした、美菜。」


「どうしたって、なんでお母さんの部屋に」


「用があるから。」


「用?」


「うん。なあ美菜。今大きくなれるか?」


「え、どうして?」


「探し物を見つけるのを、手伝って欲しいから」


「なるほど。任せて!」


美菜は俺の肩から飛び降りると、むくむくと大きくなった。


その瞬間、俺は美菜に襲い掛かった。


「!?」


美菜の口元を、隠し持っていたタオルで押さえつける。


俺はそのまま、力任せに美菜を押し倒した。


必死で抵抗していた美菜だったが、やがてぐったりと動かなくなった。


「・・・ごめんな、美菜。」


俺はぽつりと呟いて、立ち上がった。

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