dear陽斗
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
神社の境内を歩きながら、俺たちは思い出話に花を咲かせていた。
「ほんっと変わってないのね、おミヤちゃんて。」
「へっ!?」
「ほら、そういう無自覚で可愛いって思わせちゃうとことか。」
「そ、そんなこと…。」
おミヤはポッと顔を赤らめる。
確かに全然変わっていない。喋り口調も、仕草も、何ひとつ。
「あ、そうだ。陽斗さんって、今で何歳でしたっけ。」
「25歳だよ。」
「なら、渡さなきゃいけないものがあるんです。ここで待っててください。」
そう言うとおミヤは急に、本堂の方へ走っていった。
「どうしたんだろう。」
葉月が不思議そうに、走り去るおミヤを目で追いかける。
俺に渡さなきゃいけないもの、か。一体何だろう。
「すいませーん!」
やがておミヤは、一つの封筒を手に戻ってきた。
「なあに、その封筒。」
葉月が両手を出すと、おミヤはぶんぶんと首を振った。
「いくら葉月さんとはいえ、いけません。これは成人になった陽斗さんしか、読むことができないと、住職様が。」
「えー、そんなあ。」
葉月はふてくされて、ガックリと肩を落とした。
「そういえば、住職様はどうしたんだ?本堂にいるのか?」
「住職様は・・・。」
おミヤは俯いて言った。
「去年、肺炎で亡くなられました。」
「!!」
俺と葉月は揃って仰天した。まさか、ちょっと来ていない間にあの人が亡くなるとは。
「そして、亡くなる一週間前に、住職様にこれを託されたのです。」
「なるほど。」
そんなに重要な書類なのか。なにが書かれているのだろうか。
…おっとその前に。
「葉月、頼んだ。」
「?…ああ、オーケー。」
俺は葉月と肩をちょんとくっつけた。その一瞬で、美菜が葉月の肩に飛び移った。
何か感じ取ったのだろう。その時の美菜は、妙に素直だった。
「よし、っと。じゃあおミヤ。それ見せて。」
「???は、はい。」
疑問だらけのおミヤははっと我に返り、慌てて封筒を手渡した。
「どこか、一人になれる所は…」
「あ、あちらがぴったりです。」
おミヤに勧められ、俺はそこへ足を運んだ。
そこは、昔葉月と遊んだ空き地だった。
「・・・。」
俺は黙って、あたりを見回す。
隅にある電灯に、張り紙がしてあった。
『夏祭りin若葉神社 日時:20xx年8月10日 PM6:00~』
どうやら今年のものだ。この日ならまだいるだろうし、行ってみるか。
俺は、その電灯にもたれかかって座った。
ビリ、っと封筒を破く。不器用なために、全くうまくいかない。
何とか開封すると、そこには三つ折りの便箋が入っていた。
俺は心臓をばくつかせながら、それを開く。
そこに書かれていたのは-------
「ただいま。」
その日の夕方、俺はもやもやとした気持ちで帰宅した。
「お帰り。どうだった?」
母さんが優しい口調で尋ねてくる。
しかし、俺はそれを無視した。
「陽斗?」
不思議そうな顔をする母さんを背に、俺は二階に上がった。
そんな質問に、答えてる暇などない。
俺は、まっすぐに母さんの部屋に入った。
「陽斗?」
「どうした、美菜。」
「どうしたって、なんでお母さんの部屋に」
「用があるから。」
「用?」
「うん。なあ美菜。今大きくなれるか?」
「え、どうして?」
「探し物を見つけるのを、手伝って欲しいから」
「なるほど。任せて!」
美菜は俺の肩から飛び降りると、むくむくと大きくなった。
その瞬間、俺は美菜に襲い掛かった。
「!?」
美菜の口元を、隠し持っていたタオルで押さえつける。
俺はそのまま、力任せに美菜を押し倒した。
必死で抵抗していた美菜だったが、やがてぐったりと動かなくなった。
「・・・ごめんな、美菜。」
俺はぽつりと呟いて、立ち上がった。




