特異体質の幼馴染
「・・・はあ!?」
俺は思わず叫んだ。
「しっ。お父さんお母さん起こしちゃう。」
「お前、どうしてそれを?」
「なんか、見えちゃうんだよね、私。」
葉月は布団を抱えながら、俺をじっと見る。
そういや、葉月はそういう所があった。
小さい頃、かくれんぼの鬼で無双していた。
中学時代は皆の好きな人をことごとく当て、「エスパー」と恐れられた。
そして、今回も・・・
「陽斗?」
「あ、ああ。ごめん。」
「あのさ、隠し事は駄目。私が特異体質なこと、知ってるでしょ?」
「まあ、そうなんだけど」
「じゃあ何者なのか教えてよ。」
「何者と言われましても・・・」
「言葉を濁さない!」
「はいはい、わかりましたよ。」
葉月の圧には、屈する他なかった。俺はざっと美菜のことについて話した。
「…という事なんだよ。」
「ふーん。陽斗に彼女、ねえ。」
「なんだよ。」
教えてやったのに。失礼な。
「あ、そうだ。夜だけ大きくなれるってことはさ、今いけるんじゃない?」
「ここで?」
「うん。」
「いや、それはさすがに無理が」
「それは本人が決める。」
「!?」
振り返ると、ポケットから飛び出した美菜が立っていた。
そしてむくむくと膨らんだ。
「はじめまして。葉月ちゃん。」
「どうも。」
二人は向き合って座った。
「ねえ。あなた、何者?」
「私は美菜。それ以外は、わからない。気がついたら陽斗のトコにいたの。」
「へえ、そう。」
葉月は美菜をまじまじと見つめる。
「ねえねえ、陽斗。」
「?」葉月に急に話しかけられ、自然と背筋が伸びる。
「美菜ちゃんと陽斗って、なんか似てない?」
「え?ま、まあ長いこと同居してるから…」
「そういう中身の事じゃない。私が言ってるのは、外見の事。」
「??」
俺と美菜は顔を見合わせた。
意識したことはなかったが、似ていなくはないかもしれない。
おそらく美菜も同じ気持ちだろう。
「ね?」
葉月は笑って言った。
「なんでだろうね。ちょっと興味ある。」
「たまたまでしょう?」
「…本当に、そうかなあ?」
「!」
美菜は明らかに動揺した。
一体どういうことだ?
「やめろ。せっかく里帰りしてきて一日目、こんな変な空気は嫌だから」
気がつくと、会話を止めていた。
葉月はしばらく黙り込んだのち、
「そっか。ごめん、陽斗。」
呟いて、なにもなかったかのように寝る準備を始めた。
「美菜。」
「・・・。」
呼んでも、返事はない。
なんなんだ、美菜。
俺に、何を隠しているんだ?
お前は、何者なんだ・・・?
次の日。
「陽斗。思い出の場所に行こうよ。」
「思い出の場所?」
「若葉神社。」
「ああ。」
若葉神社は、子孫繫栄の神様がいる神社。
俺たちはそこを遊び場にして、住職によく怒鳴られたものだ。
「思い出といっても、苦い思い出だけどね。行ってみる?」
「うん!」
葉月は嬉しそうに頷いた。
「母さん!ちょっと出かけてくる!」
「どこいくの?」
「えーと、近くの駄菓子屋!」
「気をつけてねー。」
俺は葉月の手を引いて、家を飛び出した。
「昔から陽斗のお母さん、若葉神社嫌いだもんね。」
「まあ、そう。」
「誤魔化し方も小さい頃と一緒で、笑えてきちゃった。」
葉月は隣でクスクスと笑った。
今考えると、どうして母さんは若葉神社が嫌いなのか、未だにわからない。
住職は怒ると怖いが、基本優しい。
佇まいも、まあまあ綺麗。
嫌いになる理由が、見当たらない。
しかし普段穏やかな母さんも、この神社を話題に出すと、目を吊り上げて言うのだ。
「その神社の名を口に出さないで!」
???
「おーい、陽斗!どうしたのさ!」
「あー、なんもない!」
俺は葉月を追いかけて走った。
「ここか。」
「懐かしいね。私もここ来る機会なかったから、ホントに陽斗と同じくらい久しぶり。」
朱色の鳥居を見上げ、俺たちは声を上げた。
「ここの巫女さん、まだいるかな。」
「巫女?…ああ、おミヤのこと。」
俺は思い出した。毎年ここで行われている祭りで、一つ下のおミヤこと若葉雅は舞を踊っていた。
問題児だったために住職には要注意人物に指定されていたが、その子だけは優しくしてくれた。
「うーん、もう成人のはずだし、さすがに・・・。」
「ん?」
急に葉月がぐいーと背伸びをして、遠くを見つめる。俺も真似して背伸びをした。
「あれ、もしかしておミヤちゃん?」
「噓だ!」
「いや、間違いないよ!ほら、陽斗!」
「うおっ、そんなに慌てるな・・・。」
俺は葉月に腕を引っ張られ、凄い勢いで走った。
「おミヤちゃん!おミヤちゃん!」
「えっ、わあっ」
おミヤが振り返ったか振り返なかったか、葉月が思い切り抱きついた。
「久しぶり!私のこと、覚えてる?」
「え、もしかして、葉月さん?」
「そう!覚えててくれたんだ!」
葉月が満面の笑みを浮かべる。おミヤは目を丸くして、葉月を見た。




