里帰り
その後、森崎は今までの悪行が学校にばれ、退学処分を下された。
みんなの頼れるリーダーが、学校から姿を消したのだ。
生徒からは何度も理由を尋ねられたが、俺はいつも言葉を濁した。
委員長の本性を、みんなに話さないといけなくなるから。
「陽斗。」
「どうした。」
「…なんか、その、茜ちゃんの件は、ごめん。」
「えっ?」
「あの時、私何の罪のない女子三人組を疑っちゃったりして。」
「ううん、大丈夫。あの状況だったら、誰だって彼女たちを疑う。」
「…うん。そうだよね、そうだよね・・・」
美菜の目から、涙が零れ落ちた。
俺はそっと、そっと美菜を抱きしめた。
「ひっ、ひっ、うああ・・・」
「いいから、今日は泣きたいだけ泣け。」
美菜は俺の胸に顔をうずめて、別人のように泣きじゃくった。
お前、森崎大好きだったもんな。
俺は、美菜が泣き疲れて眠るまで、ずっと美菜を抱きしめていた。
その年の夏休み。生徒にだいぶ遅れをとって、教師たちにも休みができた。
美菜は常にジャージ姿でゴロゴロ。俺は、休みだというのに休み明けの課題プリントを作らされていた。
「あー、目が痛い。」
「大丈夫?一気に終わらせたからじゃない??ちょっと横になりなよ。」
「ああ、さんきゅ。」
俺は寝室に行こうと立ち上がった。すると、
プルルルル、プルルルル・・・
「電話だ。」
俺は即座に応答した。
「もしもし。」
『ああ、陽斗?久しぶり、元気してる?』
「ああ・・・。」
この声は、母さんか。珍しい。
「どうした?急に電話なんて。」
『いや、学校から連絡が来てね。あんた、大変みたいじゃない。』
「まあ、色々あったけど。」
『だからさ。ちょっと実家帰って来ない?』
「は?」
俺は思わず間抜けな声を発した。
「なんで?」
『気分転換にどうかと思ってね。父さんも会いたいって言ってるし。』
「うーん、空いてる日あるかな・・・。」
『あ、無理しなくていいからね。あんたが忙しいのは百も承知だから。』
「いや。全然いい。今ちょうど生徒のプリント作っちゃって、暇になったとこ。」
『ああ、それじゃ、ちょうどいいね。じゃあ、気が向いたらおいで。』
「わかった。じゃ。」
俺は素早く通話を切った。
「ふーん、実家帰るの?」
「えっ、なんで分かった?」
「スピーカー、がっつりONになってたよ。」
「あー…。やっぱ俺、疲れてるわ。」
「さっさと寝てき。晩御飯は作っとくから。」
「わかった。」
俺はそそくさと寝室に入り、ドアを閉めた。
新幹線で二時間。目的地のW県にやって来た。
俺の実家は、この県の中の田舎町にある。
「ここが、陽斗の故郷?」
「そ。」
「んー、なんかここ、前にも来た気がするの。」
「え?そうなの?」
「いや、確信は持てないけど。」
美菜は首を傾げる。俺はおや、と思った。
なんでだろう。美菜は突然として俺の肩に現れた小人なのに。
なんでここを知っているんだ・・・?
「ま、いっか。陽斗。早く行こうよ。お父さんお母さん、待ってるよ。」
「あ、ああ。そうだな。」
疑問が残りつつも、俺は足を進めた。
「父さーん、母さーん!俺、陽斗!」
引き戸の前で、俺は叫んだ。
「おお、陽斗か。」
応じたのは父さんだ。
「お帰り。何年ぶりだ?」
「ざっと3年ぶりかな。」
「おお。かなり久しぶりだな。まあいい。ゆっくりしていけ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は靴を脱いで、居間に上がった。
「おお。久しぶり、陽斗。」
居間には、茶碗にご飯を盛る母さんの姿があった。
「まあ、座りなさい。」
俺は座布団に腰を下ろす。その途端、俺の前にご飯と味噌汁が運ばれた。
「仕事の話、聞かせてくれ。」




