裏の姿
「来ると思ってましたよ。」
にんまりと笑って、森崎は俺を見る。明らかにいつもの森崎と雰囲気が違った。
「森崎。なんで俺が来たか、わかるか?」
「ええ、もちろんです。ばれちゃいましたね。」
森崎は赤い舌をペロッと出して、狂気的な笑みを浮かべる。
もはやそこに、かつての清楚な少女の姿はなかった。
「森崎、これは立派な犯罪だ。言うことがあるだろう。」
「謝罪ですか?…ふふっ、そんなことをして何になるんですか?」
「森崎、お前・・・」
「ストップ、七瀬先生。貴方は大人です。私に暴力を振るうと、暴行罪に値する。」
俺は、握りしめていた拳を緩める。
「七瀬先生。それよりも、先生は聞きたいことがあるはずです。」
「・・・どうして、お前は知っていたんだ。」
「あの可愛い小人さんのことですよね?キャンプの時に目撃したんですよ。小人さんが大きくなるとこを。」
「ま、まさか、あの時の!」
「やっと気づきましたか。そうです。茂みで様子を観察していたのですが、危うく見つかりかけて。」
俺は怒りで体を震わせながら、尋ねた。
「お前、一体目的はなんなんだ。」
「目的ですか。そんなの決まっています。あの馬鹿どもの信用を無くすことです。」
「どういう事だ。」
「女子三人組です。先生の気持ちも知らずに、馴れ馴れしく近づいてはしょうもない話に付き合わせる。
私は、あいつらが許せなかった。だから先生の秘密を知ったとき、使える、って思ったんです。」
「使える?」
「はい。SNSに先生の写真をアップして、その犯人があの三人組になるよう仕向けたんです。しかし、どこで誤算があったんでしょう。何故か先生は真実に辿り着いた。理由を教えてもらえますか。」
「お前は、一度三人組の一人に変装して犯行に及んだことがあったな。」
「そこまで、分かっているんですね。」
「あの時は、犯人は美菜、小人の存在を知っていた。だから、あんなに堂々と背後を歩けるはずがないんだよ。」
「・・・。」
「お前はあの時、犯人が三人組だと確信を持たせる為に、わざと俺の後ろを歩いた。そして美菜が目撃したところを確認次第、逃走した。そうだろ?」
「…お見事です。」
森崎は顔を上げ、パチパチと手を叩いた。
「ふふっ。でもね、先生。私の復讐はまだ終わっていない。」
「どういう事だ。」
「こういう事ですよ。」
次の瞬間には、俺は森崎に両腕を拘束されていた。
「この縄は美術室から持って来た、特別頑丈なものです。ほどこうとしても無駄ですよ。」
「森崎、何をする気だ。」
「ふふっ、想像してください。」
「お前、まさか」
「慌てないで下さい。すぐに済みます。…もし叫んだりしたら、小人さんのこと、言っちゃいますからね。」
森崎はブレザーに手をかけた。
どうしよう。もう身動きがとれない。なにもできない・・・。
俺はふと、首元に目をやった。
美菜がいない。
なんでこんな時に限って。
すると、
「ねえ、うちの陽斗に何してんの?」
「え」
森崎がはっと振り返る。
大きくなった美菜が仁王立ちして、森崎を睨み付けていた。
「あいにく、陽斗は私のもんだから。他をあたって。」
「な・・・。」
森崎はブレザーをさっと羽織り、そそくさと逃げていこうとした。
「待ちなさい。…茜ちゃん。」
「!!」
「あんたのそのやり方、三人組と一緒だから。あなたがどうこう言える資格はない。」
「え・・・あ・・・」
森崎はそのまま絶叫した。
「いやあああああああっっ!!!!」




