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手のひら彼女  作者: 吉川 由羅
10/17

裏の姿

「来ると思ってましたよ。」


にんまりと笑って、森崎は俺を見る。明らかにいつもの森崎と雰囲気が違った。


「森崎。なんで俺が来たか、わかるか?」


「ええ、もちろんです。ばれちゃいましたね。」


森崎は赤い舌をペロッと出して、狂気的な笑みを浮かべる。


もはやそこに、かつての清楚な少女の姿はなかった。


「森崎、これは立派な犯罪だ。言うことがあるだろう。」


「謝罪ですか?…ふふっ、そんなことをして何になるんですか?」


「森崎、お前・・・」


「ストップ、七瀬先生。貴方は大人です。私に暴力を振るうと、暴行罪に値する。」


俺は、握りしめていた拳を緩める。


「七瀬先生。それよりも、先生は聞きたいことがあるはずです。」


「・・・どうして、お前は知っていたんだ。」


「あの可愛い小人さんのことですよね?キャンプの時に目撃したんですよ。小人さんが大きくなるとこを。」


「ま、まさか、あの時の!」


「やっと気づきましたか。そうです。茂みで様子を観察していたのですが、危うく見つかりかけて。」


俺は怒りで体を震わせながら、尋ねた。


「お前、一体目的はなんなんだ。」


「目的ですか。そんなの決まっています。あの馬鹿どもの信用を無くすことです。」


「どういう事だ。」


「女子三人組です。先生の気持ちも知らずに、馴れ馴れしく近づいてはしょうもない話に付き合わせる。

私は、あいつらが許せなかった。だから先生の秘密を知ったとき、使える、って思ったんです。」


「使える?」


「はい。SNSに先生の写真をアップして、その犯人があの三人組になるよう仕向けたんです。しかし、どこで誤算があったんでしょう。何故か先生は真実に辿り着いた。理由を教えてもらえますか。」


「お前は、一度三人組の一人に変装して犯行に及んだことがあったな。」


「そこまで、分かっているんですね。」


「あの時は、犯人は美菜、小人の存在を知っていた。だから、あんなに堂々と背後を歩けるはずがないんだよ。」


「・・・。」


「お前はあの時、犯人が三人組だと確信を持たせる為に、わざと俺の後ろを歩いた。そして美菜が目撃したところを確認次第、逃走した。そうだろ?」


「…お見事です。」


森崎は顔を上げ、パチパチと手を叩いた。


「ふふっ。でもね、先生。私の復讐はまだ終わっていない。」


「どういう事だ。」


「こういう事ですよ。」


次の瞬間には、俺は森崎に両腕を拘束されていた。


「この縄は美術室から持って来た、特別頑丈なものです。ほどこうとしても無駄ですよ。」


「森崎、何をする気だ。」


「ふふっ、想像してください。」


「お前、まさか」


「慌てないで下さい。すぐに済みます。…もし叫んだりしたら、小人さんのこと、言っちゃいますからね。」


森崎はブレザーに手をかけた。


どうしよう。もう身動きがとれない。なにもできない・・・。


俺はふと、首元に目をやった。


美菜がいない。


なんでこんな時に限って。


すると、


「ねえ、うちの陽斗に何してんの?」


「え」


森崎がはっと振り返る。


大きくなった美菜が仁王立ちして、森崎を睨み付けていた。


「あいにく、陽斗は私のもんだから。他をあたって。」


「な・・・。」


森崎はブレザーをさっと羽織り、そそくさと逃げていこうとした。


「待ちなさい。…茜ちゃん。」


「!!」


「あんたのそのやり方、三人組と一緒だから。あなたがどうこう言える資格はない。」


「え・・・あ・・・」


森崎はそのまま絶叫した。


「いやあああああああっっ!!!!」



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