1 氷の女
僕ほんとに文章力がなくて、他の作品の構成とか色々パクってるんですけどご了承を。
後学生なので投稿頻度は低めかも。
"少年よ大志を抱け"
かの偉人、クラークはそう言った。
これは若者は大きな志を持つことで大きな夢を達成できるという励ましの言葉だ。
だがこの先生に物申したい。
それは、
誰もが志を抱けるような環境にいると思っているのか?
志を抱けるということはその先になんらかの結果を期待しているということだ。
もちろん期待することは誰だってできる。
期待するだけなら。
いつ誰が期待、希望は叶うと言った?
努力が報われ、希望は叶えられる世界なら若者だって、俺だって、頑張って馬鹿みたいな夢抱いて、頑張って努力して、頑張って歩き続けた。
だがそんな世界は存在しない。
努力は報われないし、希望は虚しく砕ける。
世のため人のために尽くした奴が早死にし、悪事の限りを尽くした奴が蓄えた甘い蜜を啜りながら悠々と生き延びる。
そんな理不尽で最低な世界、それが俺たちが暮らしている世界だ。
そしてそのことを子供も大人も心のどこかでわかっているはず。
その証拠に神なんていう不確定なものを崇めて最悪の現実から逃げようとする。
結局人間も人間で浅ましく醜い存在。
そしてそいつらは努力しようとする奴を嘲笑し、蔑み、否定する。
そして努力を諦めた奴が、嫉妬心から努力する奴を拒絶する。
見事な悪循環だ。
もうこの世界は救いようがない
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ピピッピピッピピッ
規則正しい聞き慣れた音を聞きながら目を覚ます。
起きたばかりなのに何故かやけに冴えている頭をさほど使わずに目覚まし時計を止め、一階へ下りる。
朝早くのアパートは静寂に包み込まれていた。
まあ俺以外誰も住んでいないのだが。
リビングのカーテンを開けると日の光がもれ、俺の姿を浮かび上がらせる。
容姿は特筆すべき特徴がない。
少し長い前髪に、奥二重の目。
身長は同年代の平均を少し上まっているぐらい。
体つきは普段暇つぶしで鍛えているからかがっしりしていて引き締まっている。
ただ顔に覇気がないので貧弱なやつに見えてしまう。
そんな青春真っ只中のはずの十六歳だ。
もちろん青春なんていう精神力の無駄遣いのような時間は送らない。
なんで人付き合いなんかで限りある貴重な精神を削らなければいけないのだ。
そんなことを思いながら日課のための準備をする。
すっかり使い古したジャージを着て、スマホをポケットに入れる。
肩からかける小さい鞄の中に水筒も入れ、キッチンの引き出しにあるブドウ糖を圧縮したお菓子のようなものを一つ口に放り込む。
日課というのはありきたりな朝のランニングだ。
町内を一周するだけの簡単なランニング。
擦り切れてサイズの合わないスニーカーに無理やり足を押し込め、玄関のドアを開ける。
朝の空気は好きだ。
夜の間に清められた新鮮な空気。
汚れた心に汚染されていない空気。
そんな空気を胸いっぱい吸い込み、走り出す。
ザッザッ
ただただ無心に走り続ける。
野良猫がいても。
おばあさんが挨拶をしてきても。
いつものランニングコースが工事中で通れなくても。
同級生がうずくまっていても・・・え?
そのまま通り過ぎようとした自分の足を止める。
振り返った先では確かにクラスメートの一人が道端に視線を落として座り込んでいた。
・・・何やってんだ?
そいつ、そのクラスメートはかなり有名なやつで他人のことに興味がわかない俺でもある程度は知っている。
前川優奈
うちの学校で知らない奴はいないだろう。
その無意識に人を陥れる殺人的な容姿と、何者も近づけない圧倒的なオーラ(物理)から名付けられた名は冷美の女神、氷の女王、エターナルキューティーブリザード…etc.
定期考査では毎回一位。
運動神経も抜群でなんか色々と実績残しているらしい。
もうチートウーメン。
天は二物を与えないの犯行勢力筆頭。
俺とは対極の立場の人間。
そしてそんな奴が道端にしゃがんでいる。
全く状況が飲み込めないぞこれは。
「……」
「……」
目があった。
しばらく膠着時間が続く。
そして先に痺れを切らしたのは……
「……何してんだ?」
俺だ。
「別にあなた関係ないでしょ」
その無感情な目に疑惑の色が刺す。
急に話しかけてきた俺に対して明らかに警戒しているようだ。
「そうですか」
こうなること目に見えていた。
俺みたいなスクールカースト最底辺のやつが話しかけても下心丸出しとか思われて引かれるだけなのだ。
何故話しかけてしまったのだろうか。
「じゃあこれで」
「……」
チート娘は無視を敢行するらしいので俺も気にせず走り出す。
ザッザッ
無心で走り続けているとアパートが見えてくる。
ラスト100メートルぐらいは全速力で走ると決めているので、つま先で地面を力強く蹴り、なるべく空気抵抗を受けない体勢で足を動かす。
そしてあと30メートルというところ。
そこで俺の足は止まった。
何故なら視界の端に。
「お前まだいたのかよ」
「……」
前川優奈が位置を変えてまたうずくまっていた。
「……私の勝手でしょ」
「じゃあ俺の家の前じゃなくて他のところに行ってください」
「……それも私の勝手でしょ」
こいつどこまで傲慢なんだ?
「だいたいお前はなんで道端にうずくまってんだよ。おうちがあるならとっとと帰れ。ないなら少年院でもいっとけ。こんなところいたら変態おじさんに攫われるぞ」
昨日ニュースで見た話だと最近ここら辺で誘拐事件が多発しているらしい。
小規模な誘拐グループがやっているらしいが、なかなかうまく逃げおおせているっぽい。
「……うるさい」
こいつ誘拐させてもらおうか。
いちいち腹が立つ。
「そうですか。んじゃ俺はお前を全く見てないってことで、さようなら」
「……」
もうこれで接することはないだろう。どうせ明日にはいなくなってるし。
そのままその場をさろうとすると。
ぐぅぅ〜
気抜けする音が響いた。
音の元は、顔を赤くしている前川。
「お前……いつからここらへんにいんだ?」
「……昨日の夕方」
「お腹すいんてんのか?」
「すいてない」
「いやお腹の虫が知らせてくれてるけど?」
「……すいてる」
意地を張るのを諦めたらしい。
はぁ〜仕方ねえ。
「なんか食うか?」
「……」
「いらないならいいけど」
「……ほしい」
「ちょっと待ってろ」
これは親切にしようと思ってやったわけじゃない。
俺の中にある良心が少し訴えかけてきたので仕方なく応じてやっているだけ。
そんなことを思いながら家からストックしてある菓子パンを持って戻る。
「ほら」
前川に菓子パンを投げ渡す。
そして彼女の隣に腰を下ろす。
もちろん距離はとっている。
俺が自分の菓子パンの袋を開けようとすると前川が栗色の髪を揺らして聞いてくる。
「……いいの?」
「ああ、毒とか入ってないから安心しろ」
「あ、りがと」
少し驚く。
こいつにも礼を言うという概念があるとは。
そのまま二人で黙々と食べ続ける。
チラリと横顔を盗み見る。
……顔はほんとに整ってんな。
肩程まで伸ばした栗色の髪。
目鼻立ちは整っていて、くりっとした茶色い瞳が見たものを魅了する。
身長はそこまで高くなく、だがそれが人形のような容姿を作り上げている。
そして一番破壊的なのはその胸だろう。
身長に似合わず大きく、形は綺麗な半球型。
誰もが最初に胸部を見てしまう。
そして俺がしばらく横目で見ていると、
「何見てんの?変態」
ぶちっ
血管何本か切れた。
なんだこの生意気なやつは。ちょっと顔がいいからって調子に乗ってやがる。
「わかりました。僕は変態なので家に帰りますね。あと変態の触ったものなんて嫌だと思うのでそのパンも返してもらいましょうか?」
「っ……ごめん」
ふーん。こいつにも謝るっている思考があったんだな。
「てかお前ほんとになんでこんなとこでうろうろしてんだよ」
「……家出」
「家出?なんで?」
「家庭の事情」
「だからそれを聞いてるんだけど?」
「……」
彼女によるとこうだ。
前川の家族は両親と娘の3人家族。
そのため小さい頃からすごく可愛がられて育ってきた。
けどその"可愛がり"がかなり激しいらしい。
門限は四時半。
スマホは一日一時間。
一日一回は外に出て運動。
夕食時にはその日にあったことを詳しく話す。(この時楽しそうに話さないといじめとかなんとか思われて学校に通報される)
連絡手段はメールのみ。
挙げ句の果てには男子との交流の抑制。
これはひどい。
女子の青春を全て潰しているとしか考えられない。
てか親の方針で塩対応されている男子たちがほんの少しだけ可哀想になった。
そして話し始めて十分もすると。
「ひどいと思わない⁉︎それに私はもうれっきとした高校生なのにまだ小学生と思ってるのかカレーは甘口だし、歯磨き粉はグレープ味だし、パパは一緒に風呂に入ろうとか言い始めるし!」
「お、おう」
急に酔っ払ったおじさんみたいに大声で愚痴を言い始めた。なんだこいつ。
「だいたい男子との交流抑制してパパたちになんのメリットがあるの?可愛い娘が男の毒牙にとか考えてるならマジきもい!」
「おいもうちょっと声のトーンを」
ここ一応住宅街だよ?
せっかくの有給日なのに変な大声で起きたとかクレームが来ても知らんからな?
「私だってちょっとは夢の高校生活に期待してたのに蓋開けてみたらこれだよ!友達できないし、彼氏とかそういうのも……欲しかったのに……」
「OKわかった。一旦落ち着こう」
さっきまでめっちゃ激しかったのに急に泣きそうな顔になる前川。
情緒不安定なのかな?
てかこんなとこで泣かれたらかなり俺の立場不味いんだけど。
あーもうこれだから女子との交流は嫌なんだよ。
変なとこに気使わなきゃいけないし。
思考が全く読めないし。
「……落ち着いた」
「早えな!」
「そういえばあなた名前なんて言うの?」
「今更?」
「うん。そういえば知らないなーと思って」
「俺は鷲島仁。一応聞くけどお前は?」
もしかしたら瓜二つの別人かもしれない。
「一応って何?まあいいや。私は前川優奈」
ですよね。
「これからよろしくね」
……は?
なんだこれからよろしくって。
これからも何もないぞ?
「何言ってんだお前?」
「私決めたの。パパたちが私の要求受け入れるまであなたの家に住む。ストライキってやつ」
「おいおい冗談は顔……態度だけにしとけ」
「冗談じゃないもん。本気だもん」
「いや俺は許可しな」
「レッツゴー」
「おい待てまだ話は」
そんなやりとりをしてる彼女の顔に"氷"は感じられなかった。
ほんの1mmでも面白いと感じたら星埋めお願いします。