第77話 商品開発
勇者は決闘をせずに大人しくしているようだった。
しばらくすると賭け屋も無くなり、商人も帰り始めていた。
不味いな。
人が少なくなると俺達が目立つ。
ここに居座る口実が何かないか。
そうだ。
漬物を作るには野菜が必要。
野菜は足が早いため、加工は近場が望ましい。
ここに近隣の村から集めた野菜を加工する工場を建てよう。
聖騎士に聞かれたら、この辺りの野菜が気に入って、漬物にして出荷したいと思ったと言えば良い。
工場の立地としてここが最適だと言い訳できる。
なら、やる事はこの辺りの野菜の調査だな。
嘘をつくにしても名物ぐらい調べておきたい。
俺は近隣の村を訪れた。
「この村の名物はなんだい」
「そりゃ決まっとろう、タケノコさ」
タケノコは美味いが。
漬物にできるかな。
穂先の部分は柔らかいが、それだけだとな。
村人からタケノコを買って商品開発に掛かる。
穂先を漬けた物は普通に美味かった。
問題は硬い場所だ捨てるには勿体ない。
煮てからゾンビにしても良いんだが、漬物屋だから漬物にこだわりたい。
ゾンビに繰り返しすると段々と劣化していく、今回はそれを利用する。
実験の結果、三回ゾンビにすると程よい硬さで大変美味しい事が分かった。
よし、工場を作ろう。
近隣の村に声を掛けて小屋を作る手配をした。
十日程で闘技場から少し離れた所に小屋が完成。
聖騎士からは半ば呆れた顔をされたが、タケノコのゾンビを食うとあまりの美味さに納得した顔をした。
聖騎士達が立ち去ったらこの工場は誰か他の死体術士に任せるとしよう。
俺もタケノコの漬物が気に入った。
せっかく工場が出来たのだから、もう一品何か開発するか。
「漬物開発会議をする。各人、斬新で食いたい漬物を言うように」
「芋の漬物なんてどうかしら。新しいと思うわ」
「芋は生で食うと美味くない。却下だ」
「あたいは生姜なんかどうかと思う。きっと辛くて美味そうだ」
「生姜ねぇ。有りと言えば有りなんだろうけど、作ってみないとな」
「私はキノコの漬物が良いと思うわ」
「菌類の生は不味いだろ、腹を壊す可能性大だ」
「ミディ、すいかが良い」
「西瓜か。有りだな」
西瓜を近隣の村で栽培してもらう事になった。
漬物にする西瓜はまだ大きくなっていないのを使う。
間引きの意味もあるから、一石二鳥だ。
大きい西瓜は生で食べれば良い。
商品開発も一段落したので、改めて闘技場の伝説が書いてある資料を読む
昔、魔王が現れたとある。
これは魔獣使いの魔王の話かな。
その時に神は神器を人々に与えたとある。
それに闇の神器はどう関係してくるんだ。
魔王は神を騙し闇の神器を手に入れたとある。
闇の神器をその後どうしたんだ。
闇の神器は各地に隠され今も眠っているとある。
あれっ、魔王は手に入れながら使ってないのか。
変だな。
神は闇の神器を使う者に条件を課したとある。
第1の隠し場所は毒に負けない者。
第2の隠し場所は誰にも負けない者。
第3の隠し場所は魔獣に負けない者。
なるほどね。一つ目は湿原で二つ目は闘技場。
三つめはこれから他の資料から推測するにダンジョンだろう。
疑問が残るんだよな。
誰が何の目的で隠したのか。
生きているか分からないが、この事態を予測した者がいるようだ。
予言能力持ちの仕業かな。
だとすると一つ目を俺達が確保したという事は残りも俺達に確保して欲しいのか。
考えすぎかな。
「ミディ、闇の神器は三つみたいだ」
「ええー、三つしかないの」
「そうだよな。不公平だ。神器は沢山あるのに」
そもそも、神器を作ったのは誰だ。
神が作ったのか。
神はなんで騙された。
凄い力を持っているのなら、心ぐらい覗けそうだ。
分からん。
だが、たぶん闇の神器を全て探し出した時に、何かが分かるのだろう。
そんな事になる気がする。
勇者が再び決闘を行う事にしたようだ。
商人やら賭け屋が戻ってきた。
噂では各国の力自慢を集めてトーナメントを行うみたいだ。
百連勝は諦めたのかな。
とにかくまた事態は動き出した。




