第70話 水の罠
「うわぁ」
目の前で聖騎士が水に吸い込まれる。
一丁上がり。
今回の罠は生きている土のリビングソイルと生きている水のリビングウォーターのあわせ技だ。
水の表面に生きている土を乗せて地面に見せかける。
そこに兵士が足を踏み入れた途端、水に溺れるって寸法だ。
生きている水は纏わりついたが最後絶対に放さない。
死因は溺死なので、事故か魔獣の仕業に見せかけられる。
こんな仕掛けをそこら中にした。
ばれても問題ない。
対策されても痛くないからだ。
損害ゼロだしな。
「あたい、こういうまだるっこしいのは苦手だぜ」
「そういうなよ。相手の手の内が分からないうちは我慢だ」
「夢に出てきそうな悪質さね。呪いも真っ青だわ」
「水中に仕掛けたゾンビも夢にでてきそう」
「どうせ俺は悪役だよ」
「ゴーストは喜んでいるよ。仲間が増えたって」
「ミディだけだよ。喜んでくれるのは」
藪が揺れて聖騎士が姿を現した。
「報告に来ました」
ヴァンパイアにしてスパイとして放った聖騎士だった。
少しだけびびったのは秘密だ。
「ご苦労」
「騎士風の四人ですが、勇者パーティで間違いないかと」
「どんな能力持ちなんだ」
「目に見える物なら何でも切れる神器の持ち主らしいです」
「ほう、何でもか。毒ガスとか水でも切れるのか」
「何でも、物質には核があるそうでそこを切るのだとか。毒ガスでも敵なしだそうです」
「よく分からん。毒ガスの核ってなんだよ。不思議能力だから気にしたら負けか」
「では隊に戻ります」
窒息攻撃は通用しそうなんだが。
まさか空気も見えるとか言わないよな。
いや、言いそうだ。
とにかく作戦を立てよう。
作戦は速攻で窒息攻撃だ。
とにかくそれしかない。
なら後は聖騎士の大軍をどうにかしよう。
ゲリラ戦をしばらく続けるのが良いかな。
毒ガスで一つ思いついた。
空気に呪いを掛ける。
空気は目に見えないから、聖騎士が面白いように引っ掛かるかもしれない。
問題は俺達が引っ掛かる事だ。
期限付きで呪いをかけてその間は放置だな。
偵察はゴーストに頼もう。
「よし、ジュサ。空気に呪いを掛けてくれ。三日限定でな」
「空気ってなによ」
「そこからか。水の中に物を沈めるとあぶくが出るだろ。あぶくの中にあるのが空気だ。風は空気の移動で起こる」
「なるほど、もの凄く軽い物体の中で、私達は泳いでいるのね」
「まあ、そんな感じだ」
「やってみる。空気よ、触れるものの生命力を三日のあいだ吸い取りたまえ【カース】」
「こればっかりは試す訳にはいかないな。湿原の道のいたる所に仕掛けるぞ」
「分かったわ」
遠くから湿原の聖騎士を観察する。
聖騎士が呪いの空気に突っ込んで行って倒れる。
上手くいっているな。
おっ、勇者が来たぞ。
勇者が剣を抜いて一閃。
うわ、呪いの空気を切りやがったのか。
さっきの聖騎士が倒れた所に行ってもぴんぴんしてる。
勇者の取り巻きが光魔法を唱える。
呪いの空気を浄化すれば良いと気づいたようだ。
ちっ、上手くいかないか。
呪いの空気は上手い手だと思ったのだがな。
別の手口を考えないと。
そうだ。呪いの空気を水中に閉じ込めて、人が来た時に浮かび上がらせたらどうだろう。
やってみるか。
リビングウォーターを作って中に空気を閉じ込めて空気を呪ってもらう。
浮かび上がらせるタイミングだな。
蛙のゾンビを使おう。
蛙ってのは人が来たら水の中に飛び込む習性がある。
蛙が水に飛び込みリビングウォーターに穴を開ける。
まずまずの仕掛けだ。
仕掛けを作り観察する。
聖騎士が近づいた。
ポチャンと蛙が飛び込み、ぽこっと呪われた空気が水面に出る。
倒れる聖騎士。
上手くいった。
後は仕掛けをそこら中に仕掛けるだけだ。
勇者を遠くから観察する。
仕掛けに勇者が掛かる。
ぽこっと呪われた空気が水面に出たが、剣を一閃。
呪いが切られた。
駄目か。
いや、まだだ。
リビングソイルとリビングウォーターのあわせ技はまだ破られていない。
こそこそと監視を継続する。
おっ罠に近づいたぞ。
そこだ。乗れ。
乗ったぞ。
勇者が水中に引きずり込まれた。
どうなった。
しばらくして勇者が剣を抜いた状態で岸に上がった。
水中でリビングウォーターを切ったのか。
中々やるな。
聖騎士達の嫌がらせにはなったが、勇者に対しては芳しくない。
どうしたものか。
どうやって勇者を封じよう。
これ盾の勇者より強敵ではなかろうか。




