第58話 陰謀の尻尾
開拓地に住んでいる少女が二人、俺の家に尋ねて来た。
「えっと、俺の商会で働きたいんだよな」
「はい」
「是非」
「死体術士という事で、仕事は漬物作りになるが良いか」
「はい」
「文句はありません」
「ちなみに聞くが、理由は」
「まだ禁忌持ちはおおっぴらに歩けません。漬物なら農村で職業を隠して出来ます」
「私は儲かるって聞きました。禁忌持ちは仕事が選べないので、少しでも実入りの良い仕事がしたいです」
「いいだろう」
「フランダルとシュガイに話しておくよ」
これで増産も可能になる。
良い事だ。
「むっ」
鳩ゾンビが窓から飛び込んで来た。
足に手紙が付いている。
領主からだな。
やはり、救援依頼か。
場所はビャックという都市だ。
俺達は空を飛んで駆けつける。
駆けつけたところ城壁は壊され、ドラゴンは立ち去った後だった。
遅かったか。
「例の臭いが近づいてくるとドラゴンが言っている」
「何者かは知らないが、許しておけないな」
しばらく、待っていると、一頭の馬が都市に向って駆けてきた。
乗っている男は香炉を背中にくくりつけ、背中からは黄色い煙が立ち上っていた。
こいつが黒幕か。
弾丸アンデッドの成香で狙撃する。
弾丸は当たり、男は馬から転げ落ちる。
即死したようだ。
「くるぞ」
羽ばたき音と風と共にドラゴンがやって来た。
ドラゴンは男の香炉を盛んに気にしている。
「シャデリー出番だ。特訓の成果を見せてやれ」
「闇よ安らかな眠りを【スリープ】」
シャデリーは呪文を唱えるとスリングで素早く鉄塊を投げた。
「闇よ集まりて爆発せよ【ダークボム】」
鉄塊が黒い光を発して、ドラゴンの頭の付近で爆発する。
ドラゴンは頭を振って睡眠から醒める。
それからシャデリーは眠らせてダークボムを食らわせるというコンボで、ドラゴンに着実にダメージを与えた。
だが、繰り返すうちにダークボムが発動する前にドラゴンが起きてしまう。
ドラゴンにダメージが蓄積されて痛みで眠りが破られたのだろう。
「どうする。手を貸そうか」
「いいえ、快楽よ身を満たしたまえ【プレェジャ】。闇よ安らかな眠りを【スリープ】」
「眠ったが長くは持たないぞ」
「こうするのよ。獲物に食らいつく夢を【ドリーム】」
ドラゴンが口を開ける。
そこに鉄塊を投げ入れた。
「とどめよ。闇よ集まりて爆発せよ【ダークボム】」
口の中で爆発する鉄塊。
ドラゴンの怒り狂った叫び声が辺りに響く。
「駄目だったようだな」
「まだよ。闇よ痛みとなって襲え【ペイン】」
ドラゴンは痛みの相乗効果で気絶した。
倒れるドラゴン。
シャデリーはドラゴンに駆け寄ると自分が装備していた鉄塊が沢山付いたベルトをドラゴンの頭に巻きつけた。
「時を置いて爆発せよ【ダークボム】。時を置いて爆発せよ【ダークボム】……時を置いて爆発せよ【ダークボム】。今度こそ止めよ。一斉起爆」
轟音と共にドラゴンの頭が黒い光に包まれる。
ドラゴンは起きてこない。
どうやら退治したようだ。
「ついにやったな」
「私にかかればこんなものよ」
ドラゴンをアンデッドにする前に。
「ヴァンパイアになれ【メイクアンデッド】」
香炉を背負った男がむくりと起き上がった。
「その香炉の中は何だ」
「竜媚香です」
「やっぱりな。誰の命令だ」
「工作部隊の隊長であるイントスの命令です」
むっ、イントス。どこかで聞いた名前だ。
そうだ、確か俺が聖騎士を襲った事件を調べていた奴だ。
同一人物かな。
「そいつは聖騎士か」
「いえ、元聖騎士です」
同一人物なら、降格させられたって事か。
まあいい。
叩き潰す事が確定だからな。
「ちなみに聞くが繰り返しドラゴンに襲わせたのはなんでだ」
「一回目の襲撃では竜媚香が風で散ってしまって、ドラゴンが襲撃途中で巣穴に帰ってしまったのです」
街の様子は確認していないが、俺達は間に合ったという事だな。
よしドラゴンをヴァンパイアにしたら撤収しよう。
頭の中に鳴り響くファンファーレ。
これでレベルは66だ。
教会も馬鹿なやつらだ。
俺のパワーアップに協力してくれるとはな。
レベル70では本によればリッチ。
かなり戦力になるだろう。




