第55話 処刑
凶悪犯こないな。
情報だとあとペアが一組残っているはずなんだが。
夜中、鐘が鳴らされて起こされた。
「ゾンビの大群が来ているぞ」
門の方から逃げて来た人々が口々に言った。
俺は門の方に急いだ。
城壁に上がると眼下を埋め尽くすゾンビの群。
どかんどかんと大砲の音がする。
シャデリー頑張っているな。
だが大砲は小回りが利かない。
大物を相手になら強いが人間大だとな。
それに、人間なら恐怖で逃げ出すが、ゾンビにその効果は無い。
俺の出番のようだ。
「馬鹿だな。ゾンビなんて幾らいてもしょうがないのに。ふっ、バクテリアに食われてしまえ。細菌の屍骸よ、凶悪なグールとなれ【メイクアンデッド】解き放たれた死よ蹂躙せよ」
黒い霧がゾンビを包み込み食らっていく。
「俺様のゾンビが塵に!」
クズが喚いているが気にしない。
松明なんか持っちゃって狙撃して下さいと言わんばかりだ。
「やれ、成香」
弾丸に貫かれ男は沈黙した。
「よくもダーリンを。狂え【クレイジー】」
「つーんと来た。お返しだ。行け成香」
弾丸に貫かれ女も沈黙した。
闇魔法を破ったのはわさび漬けだ。
即死魔法でもないかぎり破る事ができるのは実験済み。
こいつらが何時くるか待っていたので対策はばっちりだ。
領主の権限で門を開けてもらい外に出る。
あーあ、新スラム街が被害を受けてやがる。
こいつら本当に極悪人だな。
新スラム街の住人のめぼしいのは薪拾いでスカウトして開拓地に送ったから、残されているはろくでもない奴らばかりだ。
だから、あまり心は痛まない。
「ヴァンパイアになれ【メイクアンデッド】。ヴァンパイアになれ【メイクアンデッド】。おい、起きろ」
「はい、ボス」
「はい、ただいま起きます」
「お前達どういうつもりだ。街を襲うなんて悪手だと思わないのか」
「領主を傀儡にして街を乗っ取るつもりでした」
そいつは間に合っている。
もう既に俺が実行済みだ。
二人を門の兵士に引渡して、情報をもらった凶悪犯全てが片付いた。
実にあっけないものだ。
さてと、二度寝しないと。
翌朝。
俺は凶悪犯の処刑ショーの準備を始めた。
と言っても俺がやるのは露店の準備と凶悪犯に段取りを説明するだけだ。
他の準備は領主の仕事だからな。
立て札が街の至る所に立てられて、今日の正午に凶悪犯を処刑すると書いてあった。
街の人はなんだか少し興奮気味に見える。
鎖に繋がれた八人が街を練り歩く。
街の人々は石を持って容赦なく投げつけた。
痛い、止めてと凶悪犯が言う。
こいつら演技が上手いな。
顔は潰れて痛そうだが、アンデッドには痛覚がない。
演技に自信がない奴は呻いていろとは言ったが、本当に演技が上手い。
生きている人間みたいに見える。
広場に引っ立てられた凶悪犯らは柱に括り付けられて、罪状を読まれた。
銅鑼が鳴らされて、槍が凶悪犯に突きたてられる。
死んだふりも上手い物だ。
城の死体安置所で俺は凶悪犯ヴァンパイアに血を飲ませた。
「おい、起きろ」
「はい、ボス」
「今からお前らは開拓地で開拓に従事してもらう」
「はい」
聖水漬けを入れてきた樽に凶悪犯達を入れて隙間に小麦粉を詰めた。
「おい、樽の中身は何だ」
城の門で誰何された。
「悪くなった小麦粉です」
「開けてみろ」
蓋を開けると黄ばんだ小麦粉が見える。
兵士は何を思ったのか、剣を小麦粉に突き入れた。
「通ってよし」
「お役目ご苦労様です」
領主権限で秘密のうちに運びだすのもありなんだが、あまり頻繁に領主権限を下らない事に使うと領主がヴァンパイアだと疑われる事にもなりかねん。
領主は実際に何度も疑われている。
当たり前だ。
考えが180度変われば疑われる。
特に領主の奥方をごまかすのは骨がおれた。
激務のせいでと言い訳させた。
領主の浮気ぐせが治ったので奥方は信用しているらしいが、疑いの目は摘んでおくに限る。
それから、禁忌持ちの犯罪者は来なくなった。
処刑の噂が広がったせいだと思う。
そして、領主から驚きの報告が来た。
セイルーと呼ばれている都市がドラゴンに襲われているらしい。
セイルーは今までドラゴンとは上手く付き合ってきたそうだ。
縄張りを侵さず、ドラゴンも人里には現れなかった。
急にセイルーを襲って来たそうだ。
何か裏がありそうな事件だな。
俺はドラゴンを倒せればレベルアップできるのでセイルーに行く事にした。




