第49話 錬金術師
領主に紹介された錬金術師に会いにいった。
「初めまして。領主から紹介されて来ました。あなたが錬金術師ですか」
「ええ、そうよ」
錬金術師はお洒落な感じの何処にでもいる二十代の女性だった。
「ホムンクルスを定期的に欲しいのですが、都合できますか」
「仕事が欲しいから願ったり叶ったりだわ」
「何か俺の顔についています」
彼女があんまりじろじろ見るものだから気になった。
「あなた、禁忌持ちね」
「なぜそれを」
「用心しているのは分かるけど、追われる者特有の仕草が出ているわ」
「ちなみにどんな」
「部屋に入った時に逃げ道をまず探したでしょ。次に相手の武装の確認。人が隠れていそうな所に目をやったわね」
「なるほど。初対面の人には自分の店以外で会わない方がいいのか」
「そうね。緊張は悟られ易いわ」
「密告するのか」
「はっきり言うと私も教会に追われているのよね」
「何をやったんだ」
「魂を持ったホムンクルスの研究」
「生命を創造しようとしたのか」
「ええ、ホムンクルスには魂が無いと言われているわ。私は霊術士と組んで研究してたの」
「それは教会の逆鱗に触れるな」
「まったく、進歩を否定してどうなるって言うの」
なんとなく彼女は信頼しても良さそうな気がした。
「俺はサクタだ。死体術士だ」
「私はセルマ。ちなみに本名よ。偽名はケミカよ」
「ケミカ、ホムンクルスを早速用意してくれ」
「いいわよ。こっちに来て」
隣室に案内された。
そこには大きなタライが特殊なランプに熱せられていた。
タライの中身ははっきり言って臭い。
「精液とハーブと糞と血よ。ホムンクルスとなれ【アルケミー】」
タライの材料が子供ぐらいの人型をとる。
人間と違うのは髪の毛がなくてへそがない。
そして性器がない。
瞳孔がなくて虹彩だけだ。
なんとなく宇宙人を連想させる。
「使う上で注意点はあるか」
「魔力が切れると元に戻るから、一週間たったら連れて来て」
「知性は」
「知識は一通り持っているわ」
「こいつにマンドラゴラを引き抜かせたらどうなる」
「もちろん、元の材料に戻るわよ」
「ケミカはその場合どうなる」
「死なないわね」
「じゃあ、大もうけができる」
「ホムンクルスはね。知識を持っているの。当然そんな仕事は拒否して材料に戻ってしまうわ」
「俺はある機械でマンドラゴラヴァンパイアを切断しているんだが。その仕事をやってくれると思うか」
「あなたがやって見せれば、納得して仕事すると思う」
「そうか。よしホムンクルスついて来い。お前の名前は駒箱だ」
「ネームをインプットしました」
ホムンクルスの声は無機質だ。
どことなく電子音を連想させる。
「他に何か聞きたい事はある」
「こいつミスはするかな」
「感情はないから。人間よりミスは少ないわね」
「ありがとう。助かったよ」
俺は用意していた金貨三十枚を皮袋に入れたまま渡した。
ケミカは重さを確かめると机の引き出しに無造作に放り込んだ。
「何か美味しい仕事があれば、紹介して」
「情報が欲しいな。重要な情報なら金を払う」
「こんなのはどう。この街は禁忌持ちの極悪人らに狙われているわ」
「なんで」
「禁忌持ちを取り締まらないから、楽園だと思われているのよ。かく言う私も裏の情報屋に、この街を紹介してもらったの」
「そうか、情報の対価の金貨一枚だ」
金貨を財布から出して投げ渡した。
そして、ケミカの家を駒箱を連れて出た。
禁忌持ちの極悪人か。
ぶっ殺して、ヴァンパイアになってもらおう。
家に戻り離れの小屋で駒箱に仕事の説明をする事にした。
「やってみるからな。まず、切断機の刃を持ち上げる。次にマンドラゴラヴァンパイアをセットして、タイマーをセット、スイッチを押して少し離れる」
マンドラゴラヴァンパイアが切断され叫び声を上げた。
「マンドラゴラヴァンパイアが切断されたら血を与える。後は繰り返しだ」
「プロセスをインプットしました」
「よろしく頼むぞ」
「プロセスはスタートしました」
駒箱の仕事ぶりを眺める。
「そうだ。もし、異常があった場合は仕事を中断しろよ。休んでて良い」
「フォールトをインプットしました」
明日からは禁忌持ちの極悪人を狩ろう。
強敵でなければいいが。




