第44話 井戸に毒
店に顔を出すと何時ぞやの鋭かった聖騎士のイントスが来ていた。
「いらっしゃい、注文ですか」
「いいえ、スケルトンの骨の出所を追っています」
「スケルトン? はて何の事でしょう」
「主人、あなたがやっている孤児院の子供がスラムの人骨の片付けをしているとか」
「ええ、荷馬車で骨を森に捨てに行きましたよ」
「その場所に案内してもらっても」
「ええ良いですよ」
俺は森に案内した。
そこには人骨に偽装したオークの骨をばら撒いてあった。
仕掛けはこうだ。
オークの骨で人間大のスケルトンを作って森に運ぶ。
オークの骨で作ったスケルトンに何故ビラを撒かせないかというと。
骨の記憶が人間より背の高い姿なので人間大にするとまともに動けない。
だが、スケルトンにしてからばら撒くには好都合だ。
「ここです」
「荒らされた形跡はありませんね」
「ええ、獣が骨を咥えて行くにしても、この量は流石にもって行かないでしょう」
「手間を取らせました」
「お構いなく」
そろそろ、聖騎士が沢山、街に入った頃かな。
皆殺しといきたいが、手はずをどうするかだな。
殺人バクテリアの扇子対策もそろそろしてきそうだ。
ここはあの手でいくか。
フリーダーク出撃というより、ミディの出番だな。
ミディを荷馬車に乗せて街の門に来た。
「漬物屋だな。お子さんかい」
「ええ、そうです」
「可愛らしいお嬢さんだ。名前は?」
「ミディ」
「悪いが魔法の確認をさせて貰うよ」
「うん。デュオン、お手。お次は尻尾」
ミディが連れているリスがお手をする。
そして尻尾を差し出す。
ミディは尻尾を撫でると微笑んだ。
もちろん、このリスにはゴーストが憑依させてある。
「動物使いなんだね。通っていいよ」
俺は門をくぐって大きく息を吐いた。
ばれるとは考えてないが、いつも門番とのやり取りには神経を使う。
店に馬車を置きミディと二人城に向う。
現在、聖騎士の宿舎は領主が住んでいる城の一角だ。
井戸の位置は子供達の情報から明らかになっている。
洗濯婦は井戸の位置を把握しているからな。
「やっぱりな。城は警備が厳重だ」
城門の所に行くと兵士が数多く立っていた。
でもな、裏手というか門以外のところはどうかな。
門から外れた所に行くと案の定人はいない。
城壁は高いから侵入は難しい。
ただし人ならばな。
俺はスライムゾンビを背負い鞄から取り出し次々に壁に向って投げつける。
スライムは壁にへばりついた。
「ミディ頼むぞ」
「お願い」
リスがポーション瓶を背中に背負い、スライムを足場に器用に壁を登る。
リスが見えなくなった。
潜入成功だな。
スライムにはがれるよう指示を出した。
ミディが画板を持って城の絵を描き始めた。
兵士に見つかった時の言い訳だ。
しばらくしてリスが城壁の上に姿を見せる。
飛び降りたリスを俺達は布を広げキャッチした。
「よし、決め台詞だ。解き放たれた死よ蹂躙せよ」
「眠りから覚ましてごめんなさい」
「撤収しよう」
今回の作戦は聖騎士が使う井戸水にリスが扇子を投げ込む。
井戸水は冷たいから温度の低いうちは活動しないように出来る。
体内にはいると温度は上昇、活動しだすという訳だ。
井戸に残った扇子は魔力が切れると細菌の屍骸になり毒性はない。
検知できないはずだ。
次の日、店に行くと、店番の女の子が興奮していた。
「井戸に毒が投げ込まれたっていう通達があって、昨日から一滴も飲んでないの」
「ワインを買ってきて飲んでいいよ。金は俺が出そう」
「良いんですか。今ワインはもの凄く高いと思いますよ」
「いいんだよ。よく仕事してくれてるお礼だ」
井戸に扇子作戦上手く行ったみたいだな。
さて手口を特定できるかな。
「ただいま戻りました。ワイン金貨一枚越えてました。お釣りです」
「よく味わって飲んでくれ。しかし、井戸に毒とは物騒だな。誰が死んだ」
「それが分からないみたい。街の人の噂にはなってないの」
「なるほどな」
孤児院に顔を出して、バートを呼んだ。
「バート、城で異変が無かったか」
「兄ちゃんも耳が早いな。毒で聖騎士が多数暗殺されたみたい。洗濯婦が疑われて、おばさん達がぷりぷり怒っていたよ」
「被害はそれだけか」
「城の兵士も何人か犠牲になったって」
城の兵士に恨みはないが、戦闘に犠牲はつきものだ。
領主が聖騎士に宿舎を貸している以上、無関係とは言わせない。
「その他には」
「領主が怯えて部屋から一歩もでないって言ってた」
「なるほど」
ちょっとやりすぎたかもな。
領主に謁見するのが難しくなったかも知れない。




