第40話 ヴァンパイア漬とゼリースケルトン
鑑定士もいない事だし、ボルチック商店の力を借りて炊き出しだ。
スラムからはだいぶ人が減った。
その割合は二割減という所だろうか。
ネオシンク教も居ない事だし、トラブルは起きないだろう。
そろそろ、炊き出しも終わるかという所で悲鳴が起きる。
「お前、賞金首のフェルターだな」
男がスラムの住人に剣を抜いて突きつけていた。
「くそう、賞金稼ぎか」
「輝職同盟の首狩りエイブリーだ」
そういうと剣を一閃して首を切り落とした。
上がる血しぶきと悲鳴。
俺達、炊き出しの人間は撤収した。
エイブリーの後をネズミのゾンビにつけさせて、泊まっている宿を割り出させた。
宿は簡単に分かったので襲撃の準備に掛かる。
俺は店の倉庫に行き、ラスモンドを起こした。
「おい、仕事だ」
「はい、ボス」
「エイブリーって奴を知っているか」
「はい、戦闘員として有名です。司職で職業は聖剣士です」
「強いのか」
「剣の腕はこの国で五指に入るそうです」
なるほど、バリバリの武闘派って訳ね。
「エイブリーを呼び出す手紙を書いてくれ」
「暗号はどうします」
「暗号ってなんだ」
「輝職同盟の人間しか知らない符丁みたいなものです」
「それは入れてくれ」
手紙は出来上がり、スラムの子を使って宿に手紙を届けさせた。
決戦場所はあのチンピラがいた酒場だ。
ジュサが作った黒いマスクをして酒場に入る。
エイブリーは既に来ていた。
「お前が情報提供者か。マスクを脱いで顔を見せろ」
「ふっ」
俺は腰のポーション瓶にいる扇子を解き放った。
「黒い霧。てめえはジェノサイドか。【サンクチュアリ】」
扇子はサンクチュアリに触れて溶けていく。
「サンクチュアリの魔法が効くのは報告にあった。対策はばっちりだ」
「はたしてそうかな」
「余裕だな【ホーリーブレイド】」
剣に光のオーラが宿る。
オーラは次第に伸びていく。
俺は距離を取った。
さてどうする。
「レベルの低い聖女と一緒にしてもらっては困る」
そう言うとエイブリーはサンクチュアリの魔法を引き連れてこちらに歩いてくる。
えっ、サンクチュアリって移動可能なのかよ。
しょうがない、切り札を出そう。
ふところからマンドラゴラヴァンパイアを出して俺は投げつけた。
「解き放たれた死よ蹂躙せよ」
決め台詞は少し恥ずかしい。
だが、聞いていた人間はすぐに死ぬけどな。
「どうした。そんな見当違いに投げたら、当たらないぞ」
狙いはエイブリーじゃないサンクチュアリの魔法だ。
魔法にマンドラゴラヴァンパイアが触れて溶ける。
だが、死に間際、マンドラゴラヴァンパイアは死の絶叫を上げた。
魔法の叫びは魔法の魔力を伝わってエイブリーを即死させた。
魔力を伝わるって事は結界魔法も恐くないな。
でも慢心は良くない。
どんな強敵が来ても大丈夫なようにしないと。
俺はマンドラゴラヴァンパイアに血と砂糖水のブレンドを飲ませてやった。
よしよし、復活したな。
お次は。
俺はエイブリーをヴァンパイアにする事にした。
そして、倉庫に新しい木箱を置いて中で眠らせる。
こいつの剣の腕が必要な場面も出てくるだろう。
ふと、野菜をヴァンパイア漬にしたら美味いのかなと考えた。
家に帰って実験する事にした。
用意するのはお馴染みの大根と塩と唐辛子。
「大根と唐辛子よ塩の鎧を纏い漬物ヴァンパイアになれ【メイクアンデッド】」
食べる前に血と砂糖水のブレンドを吸わせて。
それから眠らせる。
さて、実食タイムといきますか。
美味い漬物ゾンビより更に美味い。
齧った時に漬物ヴァンパイアが眠りから醒めたのが分かった。
これは食べ始めたら一気に食べきってしまわないといけないたぐいの食品になりそうだ。
ビニールみたいな物があれば、開封後は早めに食わないといけないと説得力がでるんだが。
ビニールをスライムで再現出来ないだろうか。
いや駄目だ。
スライムはほとんど液体だからな。
なら、ゼリーだ。
骨や皮から作れる。
乾燥すればそれなりに固くなるしな。
ゼリースケルトンだ。
これでビニールを作ろう。
皮はもったいないので骨の髄からゼリースケルトンを作る。
おお、上手くいったな。
普通のゼリーは水に溶けるがゼリースケルトンは水に耐性がある事が分かった。
良いぞ、ビニールに最適だ。
このヴァンパイア漬は高級路線だな。
俺しか作れないし、作る時の魔力がゾンビとは段違いだ。
一日五食が良いところだろう。
ゼリースケルトンは弟子のフランダルとシュガイにも作れる。
他にも使えそうなんだが、今のところ良いアイデアはない。
漬物ヴァンパイアの名前を決めないと。
聖域漬けなんてのはどうかな。
汁を漏らさないのを聖域に例えて見た。
聖域漬けのサンプルを持ってボルチックさんに挨拶に行くと意外なことを聞かされた。
教会がスラム解体の企てをしているらしい。
これは大変だ。
俺にも少しは責任があることだし、一肌脱ぎますか。




