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第20話 復讐鬼

 デルバジルがチンピラを殺して回っているので、ヴァンパイアのチンピラ達を森に退避させたいと思う。

 チンピラ達はデルバジルに殺された事にしようと考えた。

 寂れた酒場を滅茶苦茶(めちゃくちゃ)にしてと。

 後はオークの血を()けばいいな。

 デルバジルはまだ上手くやっているようだ。

 なぜ分かるかといえばアンデッドが生き物を殺すと、その経験値が入ってくる。

 問題はデルバジルがヴァンパイアとばれる事だけだ。

 チンピラの血は吸わないように命令したから、ヴァンパイアの仕業とは分からないはず。


 チンピラ達には森の奥に拠点を作ってもらおうと、大工道具を渡して木を切りに行かした。

 今頃はせっせと森の奥に開拓地を作っていると思う。

 俺はせっせと漬物を作る毎日だ。

 と金(ときん)がいないのでオーク肉の出荷は止めている。

 デルバジルに供給する血液は毎日チンピラが届けてくれた。


 チンピラの数が3人に減った。

 魔獣に食べられたらしい。

 補充しないと。

 日課の納品をするために街に行く。


 街はどことなくぴりぴりした感じがした。

 雑貨屋の前を通ったので話を聞いてみる。


「こんにちは、街の雰囲気が少し変なんですけど」

「ああ、それかい。辻斬(つじぎり)が居なくなって今度はチンピラばかり狙う復讐鬼だ。辻斬(つじぎり)に殺された人が、アンデッドに作りかえられ復讐してるとか」

「そうなんですか。禁忌持ちもたまには良い事するんですね」

「ちげぇねぇ。チンピラなぞ全員居なくなれば良い」

「そうですね」


 俺は店に急いだ。

 店の倉庫に行くとデルバジルが既に待っていた。


「ほら血だ。ゆっくり飲め。魔力も注入しておこう。アンデッドに魔力を注入したまえ【ダークマナ・インジェクション】」


 ダークマナ・インジェクションはレベル50で覚えた魔法で闇属性の魔力をアンデッドに注入する。

 作り直すのと大差はないが、アンデッドが劣化しないから便利だ。


「言いつけ通りに今回は生け捕りにしました」

「おー、マンドラゴラヴァンパイアの実験もしたかったんだよな」


 夜まで待ってから、フード付きの服に着替えた。

 シャデリーを連れてデルバジルの案内でチンピラが捕らえてある場所に行く。

 チンピラ達を捕らえてある場所はあの寂れた酒場だった。


「凄い臭いね」

「オークの血を()いたからな」


 チンピラ達は猿轡(さるぐつわ)をしているので、むぐむぐと言葉にならない声を発した。


「こいつらが殺人の罪を犯したか調べてくれるか」

「いいわよ。闇よ罪の記憶を映し出したまえ【クライムビジョン】」


 罪の記憶が空中に浮かび上がった。


「こいつら殺人から強姦まであらゆる事をしているな」

「むなくそ悪いわね」

「闇魔法はこんなに有用なのに禁忌なのか」

「神官も犯罪を犯すから煙たいんじゃないの」

「真偽鑑定士はもてはやされているのにな」

「闇魔法は洗脳する魔法もあるから」

「それは物騒だな」

「殺してアンデッドにするのとどっちが物騒かしら」

「そうだな悪かったよ」


 俺達の言葉を聞いてチンピラが震え上がった。

 教会ではアンデッドにすると永遠に魂が救われないとしている。

 チンピラの癖に信心深いのだな。


「今からお前の猿轡(さるぐつわ)を取る。叫んだら分かるな」


 指差した男がカクカクと首を縦に振る。

 猿轡(さるぐつわ)を外された男は何が始まるのか戦々恐々(せんせんきょうきょう)としていた。


「手のロープだけ外す。騒ぐなよ」

「はい」


 後ろ手に縛られたロープを外しナイフを握らせる。


「シャデリーやってくれ。闇よ安らかな眠りを【スリープ】」


 俺が手に持ったマンドラゴラヴァンパイアの目が閉じる。


「おい、マンドラゴラを上半身と下半身に分けろ」


 いよいよだ。

 俺とシャデリーは耳を塞いだ。

 切り離されるマンドラゴラヴァンパイアの下半身。

 響き渡る叫び声。

 失敗だ。

 森に生えているマンドラゴラもスリープを掛ければ引き抜けるなんて事はないからな。

 眠っても引き抜かれたら起きるって事だろう。


「デルバジル、後のチンピラを楽にしてやれ」


 ナイフで次々に首を切られるチンピラ。


「うわ、ついてくるんじゃなかった」

「あいつらの罪を見ただろう」

「それも、そうだけど」

「そもそも、教会が仕掛けて来た戦争なんだよこれは。禁忌持ちってだけで罪がないのに、捕まえて拷問したあげく処刑だ」

「そうね。そこは私にも分かる」

「納得いかない。罪を犯してから処刑なら分かる。でもそうじゃない。いずれ分かるさ。俺は処刑される無実の人間を何人か見た」

「それは私も見たわ。よく考えてみる」


「マンドラゴラの下半身を食べてみろよ。気分も晴れるさ」

「下半身だけ見ると人参ね」

「甘いぞ。それに身体に良い」


 シャデリーは躊躇(ちゅうちょ)無くマンドラゴラを口に運んだ。


「凄いこれ何。美味しい上にパワーアップした感じ」

「そうだろ。嫌な気分も吹き飛ぶってもんだ。怪しい成分は入ってないよな」

「マンドラゴラ漬けを食べて死んだって人には会った事がないよ。だから、大丈夫じゃないの」

「田舎の出なのか」

「ええ、マンドラゴラ漬けは嫌になるほど食べたわ。不味いのばっかりだったけど」

「それじゃ、うちの祈りの声を初めて食べた時は驚いただろ」

「ええ」

「さてと、こいつらをヴァンパイアにして、さっさとずらかるか」


 チンピラをヴァンパイアにして森の開拓に出した。

 レベル50になってから少しもレベルアップする気配がない。

 これは大物をアンデッドにしないといけないのか。


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