はじめてのジャンパー養成講座
ヴォルフは基本的に、機嫌がよい。
というか、機嫌が悪いやつらの意味がわからない。
機嫌が悪くなるってなにそれ、美味しいの? 俺は美味しくないからすぐやめる。いつまでもネチネチと不愉快を噛みしめるの、ほんと凄いなって思う。きっと、味がなくなったガムを噛めるタイプだ。
ヴォルフは味がないガムはすぐ捨てる。
今が最高! じゃなきゃね。そうだろ?
C:ヴ「こんばんはー!」
C:ナ「こんばんは」
C:ツ「こんばんは」
C:レ「こんばんは」
C:ヴ「今日は全員オンラインなんだねー」
C:ナ「そうですね。珍しく、全員揃いましたね。オンライン表示で」
C:レ「表示はそうだねぇ」
C:ツ「いつもいるのに、表示上は「いない」ことになってるんだもんなー」
C:ナ「逆より不便は少ないですけどね。表示上はいるのに、実はいない……だと、連絡したつもりが伝わっていなかった、みたいな事故が発生しそうです」
C:ツ「逆かぁ……たとえば、強制離席表示になる前の寝落ち、とか?」
C:レ「経験者は語る?」
C:ナ「目撃者は語る」
C:ヴ「俺も目撃したー!」
C:ツ「うるさいな! そう毎晩は寝落ちしないもん!」
ヴォルフは、弱小冒険団である〈沈黙騎士団〉に所属している。
団長のナイトハルトが今いったように、これで全員。つまり、アクティヴ・メンバーは四人しかいない。
最近、レイマンにファンというか、ストーカー? みたいな人が湧いてしまい、そのせいで、まずレイマンが、次いで「レイマンといつも一緒にいる」ナイトハルトが、オフライン表示でオンラインにいる、という面倒なことになっていたのだ。
しまいには、いつログインしてもツェルトしかいないのがデフォルトになり、なんのためのクランなのかとツェルトがキレたりしていた。
まぁ見た目にいないだけなんだから、いいんじゃない?
実際は、いるんだし。クラン・チャットは、いつも賑やかだ。
この〈沈黙騎士団〉は、今時「ヴォイス・チャット厳禁」を団則に掲げている。はじめに聞いたときはマジかよと思ったが、すっかり慣れた。そしてキーボードの打鍵が速くなった。見ないで打てるし、なんなら片手でコントローラーを操作しながらチャット、なんていう芸当もできる。
慣れって怖い。俺、天才。
とはいえ、面倒か面倒じゃないかでいえば、もちろん面倒ではある。
キーボードでのチャットがではなく、団員にストーカーがいる状態が、という話だ。
謎の愛ちゃんのロックオンをはずすのは、容易ではなかった。
相手をしなくて済むように離席中表示にしたり、みつからないようにオフラインにしたりと、レイマンもいろいろ手を尽くしてはいたと思う。
――『ジャンフロ』のアクバーだったら、即、ブラリ入りだよな〜。
アクバーとは、ヴォルフが好きなヒーローだ。もちろん『ジャンフロ』の。
その『ジャンフロ』とはなにかというと、VRMMOを題材にした、ウェブ小説である。無料で読めるので、学生のヴォルフの財布にやさしい。ただし、時間には厳しい。『ジャンフロ』は更新頻度が高く、ジャンパーの時間を吸い取る魔のコンテンツなのだ。
なお、ジャンパーとは『ジャンフロ』のファンをさす言葉である。ヴォルフは自分がジャンパーであるという自覚と誇りをもって、『ジャンフロ』に時間を捧げている。
実のところ、財布の中身も多少は捧げている。書籍化されたから、一冊ずつ買った。本来は、店舗特典のために三冊購入したかったのだが、財布事情がそれを許さなかった。
……まぁ、話を戻すと。現実と小説は違う。それは認める。
ヴォルフだって、もし、謎の愛ちゃん――これは、レイマンに粘着している人物の通称だ。プレイヤー名をころころ変更するので、団内ではそう呼ぶようになった――みたいなストーカーが来たら、まずは遠慮がちに逃げたり、多忙を装ったり、そもそもオンラインにいないふりをしたりするだろう。
現実にはやりづらいことをするからこそ、ヒーローはヒーローなのだ。
できないことを、代わりにやってくれるから。だから、心が踊る。胸が熱くなる。アクバーは最高だ。『ジャンフロ』よ永遠なれ!
C:ナ「そういえば、ヴォルフはアンケートは出しました?」
C:ヴ「アンケート? なに?」
C:ツ「えっ、気づいてないの」
C:ヴ「だからなにって」
C:ナ「コラボしてほしいタイトルのアンケートですよ」
C:ヴ「コラボ?」
そういえば、『クリライ』はたまにコラボ・イベントを開催する。
今時のネットゲームはなんでもそうだが、人気のある漫画とか、アニメとか……場合によっては、他社のゲームとまでコラボする。
なんでもありだ。
C:レ「ランチャーからリンクしてたっしょ?」
C:ヴ「あ〜……たしかに、なんかアンケートって……書いてあったかも……」
C:ツ「読んでないwwwww」
C:ナ「見てはいるようですね。そのアンケートに、コラボ希望タイトルを書く欄があるんですよ」
C:ヴ「へぇ〜」
C:レ「反応うっす!」
C:ツ「うっす!」
C:ナ「うっす!」
C:ヴ「うっす! うっす!」
C:ツ「挨拶か」
ちゃんとつっこんでくれるから、ツェルトは親切だ。
C:ナ「ヴォルフさんなら喜ぶと思ったんですけどね」
C:ヴ「え、なにを?」
C:レ「ほら、あれ書けるから」
C:ヴ「?」
C:ツ「『ジャンピング・フロンティア』って書いてきなよ。考えなくていいから」
C:ヴ「あああああああああああああああああああああ!!!!!!」
C:ナ「なぜでしょう……文字なのにうるさく感じるのは」
C:ツ「わかる」
C:レ「ワロス」
あーそうか、そりゃそうか、そうだな! と、ヴォルフは思った。
それしかない!
――つーか、『ジャンフロ』と『クリライ』のコラボって、俺得でしかなくね?
誰がなんといおうが、全力で俺得である。
C:ヴ「その発想はなかった!」
C:ツ「なんでないんだ」
C:ナ「ヴォルフは意外性のかたまりですね」
C:ヴ「つねに予想の斜め上を行く、それが俺!」
C:ツ「いいから書いてきなって。忘れないうちに」
C:ヴ「行ってくるわー」
C:ナ「行ってらっしゃい」
C:レ「行ってらっしゃい」
C:ツ「行ってらっしゃい」
ヴォルフはランチャーに戻った。
ランチャーには、公式のお知らせ等が表示されている。ゲームを始める前の、ワン・クッション。
正直、いらないクッションだとヴォルフは思うが、あるものはしかたがない。
いつも字面を眺めるだけで、なんの感慨もなかったのだが、そうか……。
――コラボのアンケートか〜。
そりゃもう『ジャンフロ』が選ばれたら嬉しい。俺得だ。
しかし、そんなに票を集められるかというと、どうだろう……。
ヴォルフも、そこはわきまえている。つまり自分の「好き」が他人にとっても「好き」かどうかはわからない、ということは知っている。
リアルの友人に、ジャンパーは多くない。頑張って布教したが、読むのとかだりぃし、で終わった相手もいる。
まぁわかる。読むのとかだりぃ。
ランチャー画面の文字列を、適当にすっ飛ばしているのは、読むのとかだりぃからだ。
――ま、考えるだけ無駄無駄! できることをやる!
ヴォルフはアンケート画面に移動した。
お客様の年齢とか性別とか、毎回訊いてくんのなんとかなんねーのかな、と思う。このゲームのアカウントを取得するときに入力したのに、なぜまた入力させられるのか。
だりぃ。
ジャンパーとしては、『ジャンフロ』を推せる機会に推さないのはあり得ない。
だりぃけど。
面倒きわまりない入力事項をすべて記入し、送信ボタンを押したときには、ヴォルフは疲れ果てていた。
――アクバー……俺、やったぜ。やりきったぜ。
もうゲームやる気力ないかもと思いつつ、手が勝手にゲーム開始していた。習慣は怖い。ランチャーのトップ画面を見ると、身体が自動的に動いてしまう。
C:ツ「おかえりー」
C:ナ「おかえりなさい」
C:ヴ「ただいまー」
C:レ「うっす! うっす!」
C:ヴ「うっす! うっす!」
C:ツ「頭悪そう」
C:レ「失礼だな〜、頭がいいから前のネタを覚えてるんじゃないか」
C:ヴ「そうっす! そうっす!」
C:ナ「投票は無事にできましたか?」
C:ヴ「記入事項が多くてうんざりしたけど、まぁなんとか」
C:ナ「必須に限ればそこまで多くなかったと思いますが……」
必須? なにそれ?
C:ツ「なにそれ?」
ツェルトが代わりに質問してくれた。ツェルトはマジで親切だ。だいたい自覚はない。
C:ナ「赤い文字で小さく『※必須』と書いてある欄以外は、空欄のままでも送信できる、というアレです」
アレですといわれても、ドレだよ、としか思えない。
C:レ「必須ちょっとだったよね?」
C:ナ「そうですね」
C:ヴ「……気がつかなかった」
C:ツ「そんなのあった?」
C:ナ「ありましたよ」
C:レ「俺も内藤とつきあい長いから、最初にそこチェックするようになっちゃってさ……」
C:ヴ「内藤力にあらたな展開が」
C:ナ「終焉を齎す破壊神の力は万能なのです」
C:ヴ「もたらす。覚えた!」
C:ナ「さすがですね。飲み込みが早い」
C:ツ「気がつかなかったー!」
ツェルトはまだ引きずっているらしい。たぶん、味のないガムを噛めるタイプだ。
ヴォルフはもう考えるのをやめた。終わったことだ。
C:ヴ「ところで、皆も『ジャンフロ』書いてくれたよね?」
C:レ「ヴォルフはそういうと思ったから、書いておいた」
C:ヴ「兄貴……! 一生ついてく!」
C:レ「ははは、今日からヴォルフは弟分だ!」
C:ヴ「兄貴、うっす!」
C:レ「うっす!」
C:ツ「今日はずっとそれ引きずるの……?」
C:レ「頭いいから」
C:ツ「馬鹿の一つ覚えって言葉、知ってる?」
C:レ「……はい」
C:ヴ「ツェルトは書いてくれた?」
C:ツ「わたしジャンパーじゃないし」
C:ヴ「でも書いてくれたんだろ?」
C:ツ「……書いたよ。書きました!」
やっぱりツェルトいいやつだ。だが、あんまり褒めると機嫌が悪くなる。難しい。
C:ヴ「ありがとう! 今度、赤の染め粉バザーに出してくれたら高く買うよ! 金策したくなったらいって!」
C:ツ「赤ならすっごいダブついてるけど、なんで赤?」
C:ヴ「アクバーの鎧が、赤なんだよ」
C:ツ「……はいはい、訊くまでもなかった」
C:ヴ「内藤さんは?」
C:ナ「はい?」
C:ヴ「『ジャンフロ』推してくれた?」
C:ナ「わたしはアンケートに回答していませんよ」
なんだって。
C:ヴ「え、じゃあすぐ書いてよ」
C:ツ「ヴォルフはまだわかってないんだ」
C:ヴ「え、なに?」
C:ツ「内藤さんはねぇ。なんか、そういうのやらないの。そういうの」
C:ヴ「どういうのだよ」
C:ナ「ちょっとうけます」
C:レ「ウケルー」
C:ツ「うけてないで説明してあげてよ! なんだっけ、えーと……こないだヴォルフも聞いてたよね、Google と…… Google となんだっけ…… Amazon?」
C:ヴ「なんだっけ?」
C:ナ「GAFAM でしたら、今回の件には直接関係していなさそうに見えますが、実は関係してるでしょうね」
C:ツ「なんか怖い」
C:ヴ「俺、Amazon 使ってないけど? ……ってなんか最近、いった気がするな」
C:ナ「Amazon はただの通販屋ではなく、ネット上のインフラを怖いほど担っているという話をしましたね。まぁつまり、個人情報を不用意に与えたくない派なので、アンケートにも回答しない、ということです」
C:ヴ「ええー、団員のお願いだよー、投票してよー」
C:ナ「ええー、どうしようかなぁー」
C:ツ「なんでだろう、すっごい棒読みで脳内再生される」
C:レ「ワカル」
実はヴォルフもわかる。
こういうときのナイトハルトは、のらりくらりと躱しつづけて、けっして言質をとらせない。つまり説得するだけ無駄なのだが、それでも!
ジャンパーとしては!
C:ヴ「譲れない戦いなんだ」
C:ツ「なんでだろう、こっちは熱血少年漫画アニメっぽい口調で脳内再生される」
C:レ「わかりみしかない」
C:ナ「どうです、これがテキスト・チャットの底力というやつですよ」
底力とかはどうでもいいが、どうすればナイトハルトから一票をもぎとることができるのだろうか……。
C:ツ「熱血少年漫画アニメだったら、魔王とか破壊神とかって討伐されちゃうんじゃないの」
C:ナ「そうですね」
C:レ「内藤を討伐するの大変そう……」
C:ナ「やってみます?」
C:ツ「PvPのシステムあったとしても、やってみたくない」
たしかに、ナイトハルトを倒すのは大変そうだ。なにしろ団長のメイン・ジョブである邪黒騎士……最高レベルに育ったタンクの防御力をちびちび削るなど、考えるだけでうんざりする。
といって、堕ちた聖騎士――「堕ちた」の部分はナイトハルトの自称だ――も敵には回したくない。防御力こそ邪黒騎士に劣るものの、豊富な聖魔法の能力向上バフと回復が追加されるので、やってもやっても終わらない未来しか見えない。
C:レ「PvPはさ〜、やりたければ、最初からそういうシステムがあるゲームを遊んでると思うんだよね〜」
C:ツ「対戦って、専用ゲームのジャンルがある世界なわけじゃん。絶対、調整めんどくさいっしょー」
C:レ「後付けでうまく機能させるのは辛いだろうね」
C:ナ「後付けPvPで成功してるゲームって、あるんですかね?」
C:レ「聞いたことないね」
PvPの話がつづいてしまうと、ナイトハルトを『ジャンフロ』への投票に誘導できない。
ヴォルフは、話題を戻そうとした。
C:ヴ「ていうか、最近は魔王キャラが主役とかけっこうあるよ?」
C:ナ「皆が闇の魅力に本格的に気づきはじめたのですね」
C:ツ「うっざ」
C:レ「認めざるを得ない」
C:ナ「うざさを齎す厨二病患者として、このトレンドは見逃せません。そういえば、『ジャンフロ』でも、最近活躍してるじゃないですか」
C:ヴ「あー、トランヴォルフかー」
たしかに、『ジャンフロ』にも魔王的なキャラクターが登場し、主人公の敵から仲間へ昇格しそうな流れになっている。
名前が「ヴォルフ」でかぶっているのは、嬉しいような嬉しくないようなで複雑だ。
C:ツ「なに、魔王が仲間になったの?」
C:ヴ「ツェルト『ジャンフロ』読んでなかったっけ?」
C:ツ「最近追っかけてない。あれ読んでるとゲームやる時間減るんだもん」
ツェルトはゲーマーだ。
もちろん、ゲーマーでない者などこのクランにはいないが、おそらく――そういう風に考えると若干のくやしさはあるが――ゲーマーとしてのレベルは、ヴォルフがいちばん低いだろう。
――皆、よくそこまでゲーム一本に絞れるよなぁ。
ヴォルフはもう少し、あれこれやりたい。
前にちらっとその話をしたら、レイマンに、若さだよ若さ、といわれた。年をとると、新しいことをやるのがめんどくさくなるんだよ、だからヴォルフのそれはいいと思うよ、『クリライ』は面白いけど『クリライ』だけで人生終わらせるのは不健康だよね、と。
年齢ってよりは、性格なんじゃ? と思わなくもないが、まぁ、結論には同意せざるを得ない。
『クリライ』だけで人生終わらせなんて、つまらない。
C:ヴ「ログイン前に、まず『ジャンフロ』読めば大丈夫って!」
C:ツ「……いや、まずログインでしょ」
C:レ「ヴォルフヴォルフ、ツェルトにあんまりつっかかると、次にアンケートあったときに『ジャンフロ』って書いてもらえなくなるぞ?」
C:ヴ「そっか」
C:ツ「そうだぞ!」
限りなく打算に満ちて、ヴォルフはターゲットをナイトハルトに戻した。
なんとしても、一票入れてもらわねばならない。
C:ヴ「内藤さんは読んでるよね?」
C:ナ「最近は、魔王が仲間になってますしね」
C:レ「そこなんだ」
C:ナ「重要なポイントです」
C:ヴ「トランかっこいいよね!」
C:ナ「魔王的なキャラは、かっこよさが命ですね」
C:ツ「へー」
C:レ「まぎれもない棒読み」
C:ナ「間違いないですね」
とにかく、ナイトハルトの『ジャンフロ』への好感が上がっていることは、間違いないだろう。押せば……押せばいける!
と思ったとき、ツェルトが余計なことをぬかした。
C:ツ「魔王的なキャラのキモってさぁ、結局、主人公の強さを引き立てる程度の強さ、なんじゃないの?」
C:レ「ツェルト、頭いいなぁ」
いやいやいやいや、全然よくない!
もっとこう、魔王的なキャラを褒め称えて、ついでにナイトハルトをその気にさせる流れに!
C:ヴ「程度の強さっていってもさ、アクバーはむちゃくちゃ強いから……」
C:ツ「出た、アクバー」
C:ヴ「そのアクバーの脳裏にはじめて敗北の文字が過ぎったのが、魔王トランヴォルフ戦なんだよ! 魔王はそれくらい強くてかっこよかったんだよ!」
C:ツ「過去形w」
C:ヴ「強くてかっこいいんだよ!」
C:ツ「なんなの、とってつけたみたいな魔王アゲアゲ」
――ツェルト、今はツッコミ要らない!
このまま自然な感じでこう、ナイトハルトを……誘導したいのに……!
C:ナ「レイマンは読んでないですよね」
C:レ「えっ、なに?」
C:ヴ「えっ?」
C:ナ「読んでないですよね、『ジャンピング・フロンティア』」
そういえば、レイマンが『ジャンフロ』の内容にコメントしたのを聞いた覚えがない。
――俺ともあろうものが、布教しそびれている……だと!?
C:ヴ「マジで?」
C:レ「ああ、うん。俺あんまりウェブ小説とか読まないし」
C:ヴ「それは偏見ですよ、レイマンさん!」
C:レ「……ですよ?」
C:ツ「犬っころが正座してるのが見えた気がする」
C:ナ「超視力ですね」
C:ヴ「ウェブ小説というカテゴリで『ジャンフロ』をとらえるのは間違いです」
C:レ「あっ……はい、なんかすみません」
C:ツ「完全にスイッチ入ったコレ」
C:ナ「強いですね」
C:ヴ「『ジャンフロ』は、真に自由な小説なんですよ。なんでもありのVRゲームというジャンルにもかかわらず、世界観がどっしりしていて」
C:レ「……あの、これ長い?」
C:ヴ「レイマンさんが納得するまでつづきます」
C:レ「納得した!」
C:ヴ「すみません。俺が納得するまでつづきます」
C:ツ「……*気を感じる」
ツェルトのつぶやきには物騒な言葉が混入していたらしく、システムに伏せられてしまった。
狂気だろうが殺気だろうが、なんとでも好きにいえばいいのだ。
C:ヴ「まず、ジャンピングという言葉の意味から説明しましょう」
C:レ「……あっそれね。実はずっと不思議だったんだよね。なにをジャンプするの?」
C:ヴ「『ジャンピング・フロンティア』は、小説のタイトルであると同時に、小説内のVRゲームのタイトルでもあるんですよ。その世界は、世界樹と呼ばれる大樹の周りに発展していて、各階層間は隔絶されてるんですね」
C:レ「ふむふむ。交通機関とかないんだ?」
C:ヴ「ないんです。その階層間を移動するには、ジャンピングと呼ばれる技術が必要になります」
C:レ「へぇー。じゃあ、特殊技術持ちじゃないと階層移動できないんだ?」
C:ヴ「そうなんですよ」
C:レ「階層ごとに、全然違う世界っていうか、文化圏って感じなの?」
レイマンの応答が、意外に『ジャンフロ』の魅力に迫って来るので、ヴォルフも話していて楽しい。
C:ツ「内藤さん、今週の週替わりのクラン専用のやつ終わってる?」
C:ナ「まだですね」
C:ツ「高難度のやつ、一緒に行かない? ソロだと時間かかるし」
C:ナ「いいですね。是非ご一緒させてください。ジョブとかは……ああ、パーティー組んじゃいましょうか」
C:ツ「おっけおっけ。呼んでー」
C:ナ「はい」
C:ヴ「そうなんですよ。で、ジャンピングの技術があっても、必ず成功するわけじゃないし、いろいろ条件を満たさないと上方向には移動できないので」
C:レ「下がる方はいいんだ?」
C:ヴ「デスペナが、最下層からのリスタートになります」
C:レ「へぇー。そしたら上がるのはまた大変なの?」
C:ヴ「一回行ったことがある階層への移動は、ぐっと難易度が下がりますけどね。それで、その階層間移動しながら、次々とクエストを達成していって、世界の秘密に迫るというストーリーなんですけど、上へ行くほど強い敵が出てくるんで」
C:レ「ああ、それで魔王的なキャラが仲間になったんだ?」
C:ヴ「そうなんですよ! トランヴォルフはアクバーに倒されることで、おのれの力の限界と、自分の世界の狭さに気がついて、アクバーを追って来るんですよ。半分は復讐みたいな意識だったんですけど、アクバーとともにさらなる強敵に立ち向かう内に、なんかこう、「いつかおまえを倒すのは俺だ」みたいな」
C:レ「いいねー! 熱いな!」
C:ヴ「熱いんですよ!」
ヴォルフはレイマンに全力で布教をつづけた。
結果、ナイトハルトに逃げられたことには、まだ気がついていない。
後刻、ナイトハルトに逃げられたことに気づいたヴォルフの感想。
「ま、いっか!」