第4話
歌いながら楽しそうに目的地へと向かう双子とキツネ達。違う音程同士が重なり合い、綺麗なハーモニーが森に響き渡りました。
「コマドリさん本当に歌上手~!」
「ステラは下手だもんね。さっきだって何回か音程外して、コマドリさんにフォローして貰わなかったらあんなに綺麗なハーモニーにはならなかっただろうし」
「そんなことないもん!ステラだってちゃんと上手に歌えてるもん!」
すると突然、ステラが言葉を言い終わった瞬間、ステラの足に何か木の根っこの様なものが絡まり付き、ステラを逆さ吊りのように持ち上げました。
「えっ……きゃぁぁぁぁぁ!!」
ステラは驚きと恐怖で悲鳴を上げました。
突然吊り上げられ、目の前からステラが消えたシエルは、一瞬何が起きたのか分かりませんでした。
「ステラっ!」
「助けてシエル!」
必死に助けを呼ぶステラをシエルはどうにかして助けようとしますが、どんなに飛んでも届きません。
「抵抗するだけ無駄だよ。こいつ全く離す気ねぇんだからよ」
突然別の場所から声が聞こえてきました。声のする方向にみんな向いてみると、そこにはステラと同じように宙吊りにされたアライグマがいました。
「アライグマくん!そこで何してるの?」
と、キツネが尋ねました。
「見りゃ分かんだろ。根っこに捕まったんだよ」
と、アライグマ。
「根っこ……あぁ、ここは『根っこ広場』だったのか」
と、コマドリ。
「根っこ広場って何?」
と、シエル。
「根っこがたくさん飛び出しているからそう呼ばれているんだよ!」
と、キツネ。
「こ、ここで嘘をつくと根っこに捕まるんだよ……」
と、クマが言いました。
「ステラ嘘なんかついてないのにっ!」
「上手に歌えるとか嘘ついてたじゃん」
「嘘じゃないもん!」
「じゃあこの木がよっぽど下手だと思ったんじゃない?」
「えぇ……!?なんでよ~!」
双子がわーきゃー話している間、キツネ達はアライグマに何故捕まったのか聞いていました。
「アライグマくん、また何かしたの?」
「そ、それか何か言ったの……?」
「けっ、別に。ただちょっと根っこが邪魔だから切ってやりたいって言っただけで、別に嘘なんかついてねぇのにこのザマだよ」
「それは単にこの木を怒らせただけだろう」
どうやらこの木には意志があり、嘘をついた者だけでなく、悪口を言ったりする者も根っこで捕まえるようです。
「どうやったら開放されるんだっけ?」
「えっと……確か嘘を訂正すれば開放されるはず……」
それを聞いたシエルはすぐにステラに伝えました。
「ステラ聞こえた?嘘を訂正すればいいんだって!」
「だから嘘なんかついてないってば~!」
「取り敢えず歌が下手なのに上手って嘘ついたって言えばいいじゃん!」
「だから下手じゃないもん!」
「言うだけなんだし別にいいじゃん」
「やだよ!それって下手って認めることになるじゃない!」
「実際下手じゃん」
「下手じゃないもん!」
シエルとステラは同じようなやり取りを繰り返し、なかなか訂正の言葉を言いそうにはありませんでした。
そしてアライグマの方も上手く進んではいませんでした。
「嘘をついたら捕まって、本当のことを言えば開放される。ならアライグマくんはどうやったら開放されるんだろ?」
「単に怒らせただけなのだから、普通に謝ればいいだけだろう」
「けっ、なんで俺が謝んなきゃいけねぇんだよ!こんな根っこ俺の爪で引き裂いて……うわぁぁぁぁぁっ!!」
アライグマが言葉を言い終える前に、アライグマを縛っていた根っこが暴れだし、アライグマを上下左右に振り回し始めました。
「や、やめろぉぉぉぉぉ~!わ、わかった!わかったから!謝るからっ!!」
それでも根っこは振り回すのを止めません。
「ちゃんと謝らない限り止める気なさそうだね」
「ご、ごめんなさい!!もう邪魔だとか切るとか言いませんからぁぁぁ~!!」
その途端、根っこは振り回すのを止め、アライグマを解き放ちました。
「し、死ぬかと思った……」
「良かったね、解けて」
その様子を見ていたステラとシエルは、ステラもそうなるのではないかと焦りました。
「ステラ!意地張ってる場合じゃないよ!」
「意地張ってるわけじゃ……!」
「ステラもああなっちゃうかもよ!?」
「そ、それはやだっ!」
「なら早く!」
「うぅ……。上手くないのに上手に歌えてると嘘つきました!ごめんなさいっ!」
その瞬間、ステラを縛っていた根っこは解け、ステラは地面に着地しました。
「もうここではあまり話さない方がいいね」
「うぅ……もうやだぁ……。早く行こう」
ようやく根っこから開放されたステラ達は、再び目的地の『ドングリ池』へと向かい始めました。
そして同じく根っこに捕まっていたアライグマは、どうせ暇だからと同行することになり、仲間が一人増えました。
第4話目です!
急ぎ足で書いたので文章とか滅茶苦茶な部分とかあると思います……。
もっと計画性のある人間に生まれ変わりたい……。